「25歳の男性。3か月前から膨満感を伴う上腹部痛、嘔気が続く。症状はストレスで増悪、噯気で軽快する。下痢はない。舌は薄黄苔、脈は弦を認める。」病証として最も適切なのはどれか。
正答:1
正答:1
ストレスで悪化し噯気で楽になる上腹部痛と膨満感、脈は弦。肝の疏泄失調が胃気の降濁を妨げた肝胃不和。正答は1。
消化器症状の背景に肝を置けるか。増悪因子(ストレス)と軽快因子(噯気)、脈弦が肝を、症状の部位が胃を指す。
肝は疏泄を主り、疏泄が正常なら全身の気機が通り、脾気の昇清と胃気の降濁が協調して消化吸収が進む。ストレスで疏泄が乱れると胃気が下りずに上へ逆流し、噯気・悪心・嘔吐が出る。噯気で気が抜けると一時的に楽になるのはこのため。上腹部は胃脘部なので病位は胃。舌苔が薄黄なのは軽度の熱、脈弦は肝胆の病を示す。合わせて肝胃不和(肝気犯胃)。肝脾不和なら腹痛・腹満・軟便や下痢が主になるが、本例は下痢がないと明記されている。脾腎陽虚なら冷え・五更泄瀉・舌淡・脈沈遅、脾胃湿熱なら口が粘る・身体が重い・舌苔黄膩・脈滑数で、いずれも合わない。
肝胃不和と肝脾不和の区別が要点で、分けるのは症状が上腹部(胃)か腹部全体と便通(脾)か。本例は下痢がないと書かれており、これが脾を消すための一文。噯気で軽快するのも胃気上逆の特徴。
肝が消化器を乱す2つの型。肝胃不和(肝気犯胃)=胃脘部の脹痛、噯気、悪心嘔吐、呑酸、舌苔薄白または薄黄、脈弦。肝脾不和(肝気乗脾)=腹痛して下痢し、下痢の後に痛みが軽くなる、腹満、腸鳴、便通が不安定、脈弦。どちらもストレスが誘因で脈弦を示すが、上腹部か下腹部・便通かで分かれる。治法は疏肝理気に、胃なら和胃降逆、脾なら健脾を加える。
肝が絡む2つの証を並べ、部位と便通で分けさせる。解法は、(1) 誘因(ストレス)と脈弦で肝を確定、(2) 症状の部位と便通の記述で胃か脾かを決める、(3) 舌苔で寒熱を確認。
肝は疏泄を主り、乱れると胃気が下りずに上逆する。ストレスで悪化し噯気で楽になる上腹部痛と膨満感、脈弦は肝胃不和。下痢がないという記述が肝脾不和を消している。脾腎陽虚は冷えと五更泄瀉、脾胃湿熱は黄膩苔と滑数脈で、いずれも本例の所見と合わない。