「60歳の男性。主訴は足のむくみ。近医で乏尿ではないが、尿量が少ないと指摘された。残尿感はない。下痢しやすい。舌は胖嫩、歯痕、白厚膩苔、脈は滑を認める。」治療すべき臓腑はどれか。
正答:1
正答:1
足のむくみに下痢しやすさが伴い、舌は胖嫩で歯痕、白厚膩苔、脈は滑。脾の運化が落ちて水湿が停滞した状態なので、治療すべきは脾。正答は1。
むくみを腎ではなく脾で説明できるか。舌の所見(胖嫩・歯痕・厚膩苔)と便通が脾を名指ししている。
脾は運化を主り、飲食物から水穀の精微を取り出すとともに水液を全身にさばく。脾は乾いた状態を好み湿を嫌うので、運化が落ちると真っ先に湿が停滞する。停滞した水湿が下肢に集まればむくみになり、腸へ向かえば下痢になる。舌が胖嫩(腫れぼったく柔らかい)で歯痕がつくのは、水湿で舌がむくんで歯に当たるためで陽虚・痰湿を示す。白厚膩苔も湿の停滞、滑脈も痰飲を示す。乏尿ではないが尿量が少ないという記述は、腎そのものの排泄障害ではなく水が体内に留まっていることを示し、残尿感がないことは膀胱の病態を除いている。したがって治療すべきは脾。
むくみと聞くと腎を思い浮かべるが、選択肢に腎はなく、代わりに膀胱が置かれている。残尿感がないという一文が膀胱を消す。乏尿ではないという記述も、腎の排泄機能そのものは保たれていることを示す。舌の胖嫩・歯痕と厚膩苔、滑脈という湿の所見が脾を指す。
浮腫の弁証:脾虚湿盛=下肢優位、押すと戻りにくい、食欲不振・軟便を伴う、舌胖大歯痕・苔白膩、脈濡または滑。腎陽虚=腰以下に強い、冷え、夜間尿、舌淡胖、脈沈遅。風水(風邪の侵襲)=顔から始まり急速、悪風発熱、脈浮。心陽虚=動悸・息切れ・唇の紫暗を伴う。舌の胖嫩は舌体が柔らかく肥満して輪郭がぼやけたもので虚証、胖大は腫れぼったく大きいもので陽虚・痰湿にみられ歯痕を伴いやすい。
むくみから腎を連想させておいて、選択肢に腎を置かず膀胱を混ぜる。解法は、(1) 否定文(残尿感はない・乏尿ではない)で除外、(2) 併存症状(下痢)で臓を絞る、(3) 舌脈で湿を確認。
脾は運化によって水液をさばくので、弱れば水湿が停滞して浮腫と下痢が同時に出る。舌が胖嫩で歯痕がつき、白厚膩苔と滑脈がそろうのは水湿の停滞そのもの。残尿感がないので膀胱は除かれ、心と肝の症状の記載もない。治療すべき臓腑は脾。