次の文で示す症例の経脈病証はどれか。「65歳の男性。2週間前から腰痛で、前かがみや仰向けができない。最近は下腹部が痛み、季肋部が腫れ、喉が渇き、下痢をする。」
正答:2
正答:2
腰痛で前かがみも仰向けもできない(俯仰不能)、下腹部(少腹)の痛み、季肋部の腫れ、喉の渇き(嗌乾)、下痢(飧泄)は、足の厥陰肝経の経脈病証にそのまま並ぶ。正答は2。
肝経の経脈病証の特徴的な組合せ、特に「腰痛で俯仰できない」という肝経固有の所見を知っているか。
足の厥陰肝経は足の母趾から下腿・大腿の内側を上り、陰器をめぐって少腹に至り、胃を挟んで肝に属し胆を絡い、横隔膜を貫いて脇肋に分布し、喉の後ろを上って目系につながり頭頂に至る。『霊枢』経脈篇の肝経の病証は、腰痛で俯仰(うつむき・仰向け)ができない、男子は疝気・女子は少腹の腫れ、甚だしければ嗌乾(喉の渇き)・面塵脱色、胸満・嘔逆・飧泄(下痢)・遺尿・閉癃。設問の5所見はこれに一対一で対応する。特に「腰痛で前かがみや仰向けができない」は肝経に固有で、講義でも試験に出ると強調される。足の太陰脾経は舌本の強ばり・胃脘痛・腹脹・下肢内側の腫れ、足の陽明胃経は顔面麻痺・前頸部の腫れ・下肢前面の痛み、足の少陽胆経は口苦・ため息・側頭部と体側の痛みが病証で、いずれも俯仰不能は挙げない。
腰痛というと腎経や膀胱経を思い浮かべやすいが、「前かがみも仰向けもできない」という動作の制限は肝経の病証に固有の記述。肝経が季肋部(脇肋)と少腹をめぐることを流注で押さえると、季肋部の腫れと下腹部痛が同時に出る理由がわかる。喉の渇き(嗌乾)も肝経が喉の後ろを上ることに対応する。
足の三陰経の病証の要点:脾経=舌本強・食則嘔・胃脘痛・腹脹・善噫・身体皆重。腎経=面如漆柴(顔が黒くすすける)・咳唾則有血・喝喝而喘・飢不欲食・心如懸・腰痛・足心熱。肝経=腰痛不可以俯仰・丈夫㿉疝/婦人少腹腫・甚則嗌乾・面塵脱色・胸満・嘔逆・飧泄・狐疝・遺尿・閉癃。いずれも下肢内側を上って腹部に至るため腹部症状を持つが、固有の所見で見分ける。
腰痛で腎経・膀胱経へ誘導し(本問は選択肢に無い)、季肋部で胆経へ誘導する。解法は、(1) 俯仰不能=肝経の固有所見、(2) 少腹・季肋・嗌乾・飧泄をすべて肝経の流注で説明、(3) 他の3経の固有所見が無いことを確認。
足の厥陰肝経は下肢内側から陰器・少腹を経て肝に属し、脇肋・喉・目系をめぐる。経脈病証は、腰痛で前かがみも仰向けもできない、少腹の腫れ痛み、季肋部の症状、喉の渇き、下痢、疝気など。設問の5所見はすべてこれに一致する。腰痛から腎経を、季肋部から胆経を連想しやすいが、俯仰不能が肝経固有の決め手。