次の文で示す症例の腹診所見はどれか。「44歳の女性。主訴は頭痛。半年前に転職し、上司との人間関係がうまくいかず気が滅入る。頭部に刺すような痛みがあり、顔のシミが目立つようになってきた。」
正答:4
正答:4
刺すような頭痛(刺痛)と顔のシミ(色素沈着)は瘀血の所見。瘀血に対応する腹証は左下腹部に抵抗・圧痛を認める少腹急結。正答は4。
症例から瘀血を同定し、腹診の各所見(腹裏拘急・心下痞鞕・小腹不仁・少腹急結)が対応する病態を区別できるか。
転職後の人間関係のストレスで気が滅入るのは情志の失調による肝鬱気滞。気が滞れば血も滞り気滞血瘀となる。頭部に刺すような痛みは、針や錐で刺されるような鋭い痛み=刺痛で瘀血の痛みの特徴。顔のシミは皮膚の色素沈着で、これも瘀血の現れとして教科書に挙げられる。瘀血に対応する腹証が少腹急結で、下腹部特に左腸骨窩に抵抗・硬結・圧痛を認めるもの。腹裏拘急は腹直筋の引きつれ(緊張)で虚証の所見、心下痞鞕は心下部のつかえと他覚的な緊張・圧痛で心・心包の病変、小腹不仁は臍下の腹壁が軟弱で力がない所見で腎虚に多い。
小腹不仁と少腹急結はどちらも下腹部の所見だが、不仁は「力がない・軟弱」で腎虚、急結は「抵抗・硬結がある」で瘀血と、虚実が逆。小腹(下腹部中央)と少腹(小腹の両側)の部位の違いも押さえる。頭痛という主訴に引かれず、痛みの性質(刺痛)と皮膚所見(シミ)から瘀血を読む。
漢方腹証の主なもの:胸脇苦満(季肋下の抵抗・圧痛、肝胆)、心下痞鞕(心下のつかえ、心・心包)、腹裏(腹皮)拘急(腹直筋の緊張、虚証)、小腹不仁(臍下の軟弱、腎虚)、少腹急結(左下腹部の抵抗圧痛、瘀血)、正中芯(腹壁正中の索状物)。瘀血の治療は活血化瘀で血海・膈兪・三陰交・合谷・太衝など。
主訴(頭痛)は病証を決めず、痛みの性質と皮膚所見が決め手。下腹部の所見を2つ置いて虚実で迷わせる。解法は、(1) 刺痛+シミ=瘀血、(2) 瘀血の腹証=少腹急結、(3) 不仁は虚で逆と確認。
ストレスによる肝鬱気滞から気滞血瘀に進み、刺すような頭痛(刺痛)と顔のシミ(色素沈着)という瘀血の所見が現れた症例。瘀血に対応する腹証は左下腹部に抵抗・硬結・圧痛を認める少腹急結。腹裏拘急は腹直筋の緊張で虚証、心下痞鞕は心下のつかえで心・心包、小腹不仁は臍下の軟弱で腎虚。下腹部の2つは虚実が逆なので区別する。