次の文で示す症例で将来起こりうる徴候はどれか。「生後6か月の乳児。仰臥位で寝かせたときに右の大腿皮膚溝が左と比べて数が多く、深く、長い。右股関節の開排制限もある。」
正答:1
正答:1
大腿皮膚溝の左右差と開排制限は発育性股関節形成不全のサイン。将来みられるのは、膝の高さに左右差が出るアリス徴候。正答は1。
乳児の股関節所見から疾患を決め、その疾患で出る徴候を選べるか。誤肢は3つとも神経疾患の徴候。
発育性股関節形成不全は、大腿骨頭が臼蓋から外れやすい・外れている状態で、乳児期に見つかる。所見として、大腿の皮膚溝が左右で数・深さ・長さが違う、股関節の開排(外転)が制限される、下肢長に差が出る、といったものがある。脱臼側では大腿骨頭が後上方へずれるため大腿が相対的に短くなる。この状態で仰臥位にして股関節と膝を屈曲させると、患側の膝の高さが低くなる。これがアリス徴候。ガワーズ徴候は床から立ち上がるとき自分の体をよじ登るようにする動作で、デュシェンヌ型筋ジストロフィーなど近位筋の筋力低下を示す。レルミット徴候は頸を前屈すると背中から下肢へ電撃痛が走るもので多発性硬化症や頸髄病変。ロンベルグ徴候は閉眼で立位が不安定になるもので深部感覚障害を示す。
人名の徴候は名前から内容を推測できないので、対象疾患とセットで覚える必要がある。本問は乳児という設定が手がかりで、ガワーズは幼児期以降の筋疾患、レルミットとロンベルグは成人の神経疾患。乳児の股関節で出る徴候はアリスに絞られる。
発育性股関節形成不全の所見:開排制限、大腿皮膚溝の非対称、アリス徴候(膝の高さの左右差)、クリックサイン(オルトラーニ・バルローの手技で触れる)、歩行開始後はトレンデレンブルグ徴候と跛行。乳児健診でのスクリーニングと超音波検査が診断の中心で、リーメンビューゲル装具による治療が行われる。かつて先天性股関節脱臼と呼ばれたが、出生後に発生する例もあるため現在の呼称になった。
人名の徴候を4つ並べ、対象疾患を全部変える。解法は、(1) 症例の年齢と部位から疾患を決める、(2) 各徴候の対象疾患を出す、(3) 一致するものを選ぶ。
乳児で大腿皮膚溝の左右差と股関節の開排制限があれば発育性股関節形成不全。脱臼側の大腿が短くなるため、仰臥位で股関節と膝を屈曲すると患側の膝が低くなるアリス徴候が出る。ガワーズは筋疾患、レルミットは頸髄病変、ロンベルグは深部感覚障害の徴候で、いずれも乳児の股関節とは無関係。