次の文で示す病証に対する治療方針として最も適切なのはどれか。「49歳の男性。主訴は食欲不振。空腹感はあるが多くは食べられない。胃脘部に我慢できる程度のはっきりしない痛みがある。舌質は紅を認める。」
正答:1
正答:1
空腹感はあるのに食べられない、胃脘部の隠痛、舌質紅。胃の陰液が不足した胃陰虚なので、陰液を補う。正答は1。
食欲不振を虚実・寒熱に振り分けられるか。空腹感の有無と痛みの性質、舌質が手がかり。
胃は受納と腐熟を担い、潤いを保って働く。胃の陰液が不足すると、受納の力は残っているので空腹感はあるが、腐熟が十分にできないため多くは食べられない。この食べ方、つまり腹は減るのに量が入らないという形が胃陰虚に特徴的。胃脘部の痛みは我慢できる程度ではっきりしないので隠痛にあたり、虚証を示す。舌質が紅いのは熱を示すが、陰虚による虚熱と考える。以上から胃陰虚で、治療方針は不足している陰液を補うこと。陽気を補うのは冷えを伴う陽虚、気滞を除くのは張るような痛みと脈弦がある気滞、湿熱を除くのは口が粘り身体が重く舌苔が黄膩のときで、いずれも本例の所見と合わない。
舌質が紅いので実熱(胃熱)と読みたくなるが、胃熱なら食欲は亢進して多食になり、口臭や歯肉の腫れ、便秘が出る。本例は「多くは食べられない」ので虚。空腹感の有無と食べられるかどうかを分けて読むのが要点。
胃の病証:胃気虚=食欲不振、食後の膨満、疲れやすい、舌淡、脈弱。胃陰虚=空腹感はあるが食べられない、口や咽の乾き、しゃっくり、大便乾燥、舌紅少津・少苔、脈細数。胃熱(胃火)=多食して飢えやすい、口臭、歯肉の腫れ痛み、便秘、舌紅苔黄、脈滑数。食滞胃脘=暴飲暴食のあと、噯気に腐臭、拒按、舌苔厚膩、脈滑実。寒邪犯胃=急な胃脘部の冷痛、温めると軽減。
舌質の紅だけで熱証へ誘導し、実熱の治法を混ぜる。解法は、(1) 食べ方(空腹感と摂取量)を読む、(2) 痛みの性質で虚実、(3) 舌質と舌苔を分けて読む、(4) 虚熱なら滋陰。
腹は減るのに量が入らないという食べ方が胃陰虚に特徴的。胃脘部の痛みが我慢できる程度ではっきりしないのは隠痛にあたり虚証を示す。舌質の紅は虚熱を示す。治療方針は陰液を補うこと。陽気を補うのは陽虚、気滞を除くのは脹痛と脈弦、湿熱を除くのは黄膩苔があるときで、いずれも合わない。