次の文で示す臓腑病証に対し、その郄穴に迎随の補瀉に基づき斜刺する場合、鍼尖の方向にある経穴として適切なのはどれか。「30歳の男性。3日前に愛車に落書きをされて怒りが収まらず、顔面の痛みとのぼせも出てきた。夜も眠れず目が赤い。舌質は紅、脈は弦数を認める。」
正答:1
正答:1
怒り・のぼせ・目の赤み・舌紅・脈弦数は肝火上炎で実熱。肝経の郄穴である中都に瀉法を行うので、鍼尖は流注に逆らって末梢側へ向ける。その先にあるのは蠡溝。正答は1。
病証から瀉法か補法かを決め、迎随の補瀉で鍼尖をどちらへ向けるかを判断し、その方向にある同経の穴を選べるか。3段階の設問。
まず病証。3日前の出来事に対する怒りが収まらず、顔面の痛みとのぼせ、不眠、目の赤みがあり、舌質は紅、脈は弦数。情志の失調で肝の気が鬱し、それが熱に変わって肝火が上へ昇った実熱証。実には瀉法を用いる。次に取穴。急性であり臓腑病証なので郄穴を使い、肝の郄穴は中都で、大腿部内側の薄筋と縫工筋の間、膝蓋骨底の上方4寸にある。最後に鍼の向き。迎随の補瀉では、経の流れに従って(随って)刺すのが補、流れに逆らって(迎えて)刺すのが瀉。足の厥陰肝経は足の母趾から下腿・大腿の内側を上って体幹へ向かうので、瀉法なら鍼尖を流注と逆、すなわち足の方(末梢側)へ向ける。中都より末梢側にある肝経の穴が蠡溝で、脛骨内側面の中央、内果尖の上方5寸にある。膝関は中都より体幹寄りの肝経の穴、承山は膀胱経、条口は胃経。
3つの判断が連鎖する。虚実を取り違えれば向きが逆になり、流注の向きを取り違えても逆になる。足の陰経は足から体幹へ上るので、末梢側=足の方が流注の手前。瀉法=迎える=流注の来る方へ鍼尖を向ける、と覚える。膝関と蠡溝はどちらも肝経なので、中都との位置関係を知らないと選べない。
迎随の補瀉は『難経』七十二難などに基づく手技で、鍼尖を経の流れに沿わせれば補、逆らわせれば瀉。ほかの補瀉には、呼吸(呼気時に刺入が補、吸気時が瀉)、徐疾(ゆっくり刺してすばやく抜くのが補、逆が瀉)、開闔(抜鍼後に鍼孔を閉じるのが補、開くのが瀉)、捻転、提挿がある。肝経の流注は足の母趾外側から始まり、内果の前を通って下腿・大腿の内側を上り、陰器をめぐって少腹に至り、肝に属し胆を絡う。肝経の下腿部の穴は下から大敦・行間・太衝・中封・蠡溝・中都・膝関・曲泉の順。
同じ経の穴を2つ置き、位置関係と流注の向きで選ばせる。加えて別経の穴を2つ混ぜる。解法は、(1) 病証から虚実を決める、(2) 補瀉を決める、(3) 経の流注の向きを出す、(4) 同経でその方向にある穴を選ぶ。
怒り・のぼせ・目赤・舌紅・脈弦数は肝火上炎で実熱なので瀉法を行う。急性の臓腑病証なので郄穴を使い、肝の郄穴は中都。迎随の補瀉では瀉法は流注に逆らうので、足から体幹へ上る肝経では鍼尖を足の方へ向ける。中都より末梢側の肝経の穴は蠡溝。膝関は体幹側なので補法の向き、承山は膀胱経、条口は胃経。