次の文で示す病証でみられる痛みの性質はどれか。「53歳の男性。主訴は肩関節痛。過労により食欲減退が続き、倦怠感とともに肩が痛みだした。痛みは慢性に経過し、息切れ、自汗を伴う。舌質は淡、舌苔は薄白、脈は細弱を認める。」
正答:1
正答:1
過労で食欲が落ち、倦怠感・息切れ・自汗があり、舌淡・薄白苔・脈細弱。脾気虚による痛みなので、はっきりしない鈍い隠痛。正答は1。
病証を気虚と決めたうえで、その病機に対応する痛みの性質を選べるか。前提となる弁証が舌脈で示されている。
過労は気を消耗する代表的な原因。食欲減退は脾の運化の低下、倦怠感と息切れは気の不足、自汗は衛気が表を固められないことによる。舌質が淡く苔が薄白で脈が細弱なのも気虚の所見。したがって脾気虚。気血が不足して肩の筋や経脈を養えなくなると、栄養されないことによる痛み(不栄則痛)が生じる。この痛みは激しくなく、はっきりしない鈍い痛みが続く隠痛になる。押すと楽になる喜按を伴うことが多い。刺痛は瘀血、脹痛は気滞、重痛は湿で、いずれも実の病機による痛み。
肩関節痛という主訴から実証(痺証や瘀血)を想定しがちだが、慢性の経過と気虚の所見がそろっている。痛みの問題では、実の痛み(不通則痛)と虚の痛み(不栄則痛)を分けるのが最初の一手。虚なら隠痛・空痛で喜按、実なら脹痛・刺痛・重痛で拒按。
痛みの性質と病機:脹痛=気滞、刺痛=瘀血、重痛=湿、隠痛=虚、冷痛=寒、灼痛=熱、絞痛=寒凝や結石、空痛=気血や精髄の不足、酸痛=湿や虚労、掣痛=肝の失調。押すと楽になる喜按は虚、押されるのを嫌がる拒按は実。慢性の肩関節痛では、気血両虚や肝腎不足による不栄則痛と、瘀血や痰湿による不通則痛を分けて治法を変える。
部位(肩関節)から実証を想定させ、舌脈で虚証を示す。解法は、(1) 誘因(過労)と全身症状(倦怠・息切れ・自汗)で虚実を決める、(2) 舌脈で確認、(3) 虚なら隠痛・空痛の側から選ぶ。
過労で食欲が落ち、倦怠感・息切れ・自汗があり、舌淡・薄白苔・脈細弱なら脾気虚。気血が足りず肩が養われないことで起こる痛みは、我慢できる程度の鈍い痛みが続く隠痛。刺痛は瘀血、脹痛は気滞、重痛は湿で、いずれも実の病機による痛み。