「47歳の女性。頭痛が続き、いらだちがある。耳鳴りもあり受診した。口苦があり、睡眠が浅い。昨年に閉経。舌は紅、脈は弦数、腹は胸脇苦満を認める。」病証として最も適切なのはどれか。
正答:4
正答:4
頭痛・いらだち・耳鳴・口苦・浅い睡眠に、舌紅・脈弦数・胸脇苦満。肝鬱気滞が化火して肝火が亢進した状態。正答は4。
更年期の症例を東洋医学の証へ置き換え、虚証の3肢と実熱の1肢を分けられるか。舌脈と腹診が決め手。
肝は疏泄を主り情志の影響を受ける。気が鬱すると熱に変わり(化火)、火は上へ昇るので頭痛・のぼせ・目の充血・耳鳴が出る。胆は肝と表裏で、胆熱が上れば口が苦くなる。火が心神を乱せば眠りが浅くなり、いらだちが強くなる。舌が紅いのは熱、脈が弦なのは肝胆の病、数は熱で、弦数は肝火を端的に示す。腹診の胸脇苦満は季肋部の抵抗と圧痛で、肝胆の気の鬱滞を示す所見。以上がすべて実熱の側にそろうので肝火上炎(肝火亢進)。腎気虚なら腰膝のだるさ・夜間頻尿・舌淡・脈沈弱、心脾両虚なら動悸・健忘・食欲不振・顔色萎黄・舌淡・脈細弱、心腎不交なら不眠・心煩に腰膝酸軟と五心煩熱を伴い脈は細数で、いずれも本例の実熱の所見と合わない。
閉経という設定から腎虚を選びたくなるが、舌脈が実熱を示している。更年期では腎虚が土台にあることが多いものの、現に現れている証は肝火。虚熱(心腎不交・陰虚)と実熱(肝火)は脈で分かれ、細数なら虚熱、弦数・数有力なら実熱。
肝火上炎の症状:頭痛(脹るような痛み)、めまい、顔面紅潮、目の充血、耳鳴(突然の大きな音)、口苦、口渇、いらだち・怒りっぽさ、不眠、便秘、尿短赤、舌紅・苔黄、脈弦数。腹診では胸脇苦満。治法は清肝瀉火で、行間・太衝・侠渓・風池・太陽などが用いられる。肝陽上亢は肝腎陰虚を土台にした上実下虚で、腰膝酸軟を伴う点が肝火上炎と違う。
年齢・閉経という設定で腎虚へ誘導し、舌脈と腹診で実熱を示す。解法は、(1) 症状の向き(上へ昇る熱)を確認、(2) 舌脈で虚実と熱の質を決める、(3) 腹診所見で経を確認。
頭痛・いらだち・耳鳴・口苦・浅い睡眠はいずれも上へ昇る熱の症状で、舌紅・脈弦数・胸脇苦満が肝の実熱を裏づける。したがって肝火上炎(肝火亢進)。腎気虚と心脾両虚は虚証で舌淡・脈弱、心腎不交は虚熱で脈細数となり、いずれも本例の弦数の脈と合わない。閉経という設定に引きずられないこと。