「47歳の女性。主訴は左顔面の麻痺。2週間前に腹痛、下腿前面の痛みとともに発症。現在は下腿内側の重だるさ、軟便を伴う。」発症から4か月後、口輪筋を収縮させると左の眼輪筋も収縮する病的共同運動が出現した。両筋に対して30mmのステンレス鍼で鍼通電療法を行う場合、最も適切なのはどれか。
正答:1
正答:1
鍼通電では電解腐食による折鍼を防ぐため、ステンレス製で20号(線径0.20mm)以上の鍼を用いる。正答は1。
鍼通電療法の安全上の要件を知っているか。誤肢は刺入の深さ・周波数・通電の同期という運用の3点で、いずれも本例には不適切。
鍼通電療法では鍼に電流が流れるため、細い鍼では電解腐食が進んで鍼体が折れる危険がある。安全対策のガイドラインでは、滅菌済みのステンレス製の単回使用毫鍼を用い、鍼のサイズは20号(線径0.20mm)以上、鍼体長は30mm以上を推奨している。本例は30mmのステンレス鍼を使う設定なので、残る条件は太さで、20号以上が適切。鍼体をすべて刺入すると、折鍼が起きたときに抜去できなくなるため禁忌に近い扱いで、鍼柄側を数mm残すのが基本。周波数については、発症から4か月経って病的共同運動が出ている段階では、低頻度で筋を強く収縮させると過誤再生や共同運動を助長しうるため、この時期には高い周波数を用いる運用が報告されている。また、口輪筋と眼輪筋が同時に収縮するのが病的共同運動そのものなので、両筋が同期して収縮するように通電するのは症状を強める方向で不適切。
低周波鍼通電といえば1Hz前後という一般論があるので3を選びやすいが、本例は麻痺の急性期ではなく発症4か月で病的共同運動が出た段階。病期によって狙いが変わるという点が問われている。また4は「同期」という語が正しそうに見えるが、同期こそが病的共同運動の中身なので逆。
顔面神経麻痺の鍼灸では病期で方針が変わる。急性期は炎症と浮腫が主体で、強い刺激や通電は避け、翳風や表情筋への浅い置鍼が中心。回復期に入り麻痺が残るときは筋の萎縮予防を狙うが、神経再生の時期に強い通電を行うと過誤再生を助長し、病的共同運動やワニの涙、拘縮の危険がある。病的共同運動が出た後は、同期させない刺激や高い周波数が用いられる。鍼通電の安全要件は、ステンレス製・単回使用・20号以上・30mm以上・鍼体を全部入れない・通電中に鍼を動かさない。
一般論として正しそうな運用(1Hz、同期)を混ぜ、病期の条件で反転させる。解法は、(1) 器材の安全要件を先に確認、(2) 病期を読む、(3) その病期で狙う効果と各肢の向きを照合。
鍼通電では電解腐食による折鍼を防ぐため、ステンレス製で20号(線径0.20mm)以上、鍼体長30mm以上の鍼を用いる。鍼体を全部刺入すると折鍼時に抜けなくなるので鍼柄側を残す。発症4か月で病的共同運動が出ている段階では、低頻度で強く収縮させると症状を助長しうるので周波数の設定は慎重に行い、両筋を同期させる通電は病的共同運動そのものを強めるので不適切。