次の文で示す症例の罹患筋として最も適切なのはどれか。「45歳の女性。半年前から右手の母指・示指掌側にしびれがあり、母指球の萎縮と祈祷師の手を認める。」
正答:3
正答:3
母指と示指の掌側のしびれ、母指球の萎縮、祈祷師の手。前腕近位で正中神経が円回内筋に絞扼された状態。正答は3。
祈祷師の手という所見が正中神経の高位麻痺を示すことを知り、絞扼している筋を選べるか。
母指と示指の掌側のしびれは正中神経の感覚領域、母指球の萎縮は短母指外転筋・母指対立筋・短母指屈筋浅頭の麻痺を示す。祈祷師の手は、手を握ろうとしたとき母指・示指・中指が十分に曲がらず、薬指と小指だけが曲がる形。母指と示指の屈筋(長母指屈筋・深指屈筋の橈側半)が働かないためで、これらは前骨間神経が支配する。つまり前骨間神経が分かれる高さより近位で正中神経が障害されている。前腕近位で正中神経を絞扼しうるのは円回内筋で、上腕頭と尺骨頭の間を神経が通る。斜角筋と小胸筋は胸郭出口の構造で腕神経叢のレベル、尺側手根屈筋は尺骨神経の絞扼(肘部管)に関わる筋。
手根管症候群との区別が要点。手根管症候群では母指球の萎縮は出るが、前骨間神経の支配する筋は保たれるので祈祷師の手にはならない。祈祷師の手が出るのは前骨間神経が分かれる高さより近位、すなわち円回内筋のレベル。
正中神経麻痺の高さ別所見:手根管(遠位)=母指〜環指橈側のしびれ、母指球の萎縮、猿手、手のひらの感覚は保たれる。円回内筋(近位)=これに加えて長母指屈筋・深指屈筋橈側半・浅指屈筋も麻痺し、祈祷師の手になる。前骨間神経(運動枝のみ)=しびれを伴わず、母指と示指でOKサインが作れない涙滴徴候。猿手は母指球の萎縮で母指の対立ができなくなった形、鷲手は尺骨神経麻痺で骨間筋と虫様筋が萎縮した形。
上肢の絞扼に関わる筋を4つ並べ、腕神経叢のレベルと末梢神経のレベルを混ぜる。解法は、(1) 症状の分布から神経を決める、(2) 運動障害の範囲から高さを決める、(3) その高さで絞扼する筋を選ぶ。
母指と示指の掌側のしびれと母指球の萎縮は正中神経障害、祈祷師の手は前骨間神経の支配する筋まで麻痺していることを示すので、障害の高さは前腕近位。ここで正中神経を絞扼するのは円回内筋。斜角筋と小胸筋は胸郭出口で腕神経叢のレベル、尺側手根屈筋は尺骨神経の絞扼に関わる筋。