次の文で示す病証の状態として最も適切なのはどれか。「52歳の男性。日頃から辛い物やアルコールを摂り過ぎたため、口渇が強く、みぞおちに灼熱感があった。その後、空腹感はあるが食が進まなくなってきた。舌質は紅、無苔、脈は細数を認める。」
正答:2
正答:2
辛い物と酒で胃に熱がこもり口渇と灼熱感が出た。その熱が津液を焼いた結果、空腹感はあるが食が進まず、舌は紅で無苔、脈は細数になった。正答は2。
病態の推移を読み、現在の状態を「熱が津液を損なった段階」と言えるか。時系列の記述が手がかり。
辛い物とアルコールは熱を生む。胃に熱がこもると口渇が強くなり、みぞおちに灼熱感が出る。これが最初の段階で胃熱(胃火)。熱が続くと胃の津液(陰液)が焼かれて減り、胃は潤いを失う。受納の力は残るので空腹感はあるが、腐熟が十分にできないため食が進まなくなる。舌が紅く苔が無いのは津液の枯渇、脈が細いのは陰の不足、数は熱で、細数は虚熱を示す。つまり現在は胃熱が胃の津液を損傷した段階、すなわち胃陰虚へ移行している。血を滞らせているなら舌は紫暗になり刺痛が出るはずで所見がない。疏泄機能を障害しているのは肝の話で、脇肋の脹痛や脈弦が要る。膀胱を熱化させているなら排尿の異常が出る。
「空腹感はあるが食が進まない」という食べ方は胃陰虚に特徴的で、第31回問145でも同じ論点が問われている。舌の無苔(少苔)は津液の枯渇を示し、厚苔や膩苔とは正反対。脈の細数は虚熱で、実熱なら数有力になる。段階が進んだことを示す所見をそろえて読む。
胃熱(胃火)=多食して飢えやすい、口渇で冷たいものを欲しがる、口臭、歯肉の腫れ痛み、便秘、舌紅苔黄、脈滑数。ここから津液が損なわれると胃陰虚=空腹感はあるが食べられない、口や咽の乾き、しゃっくり、大便乾燥、舌紅少津・少苔、脈細数へ移る。実熱から虚熱への移行なので、治法も清胃火から滋養胃陰へ変わる。飲酒と辛い物は胃熱を生む代表的な誘因。
病態の推移を時系列で書き、現在の段階を問う。解法は、(1) 最初の症状で初期の病機を決める、(2) その後の変化を読む、(3) 現在の舌脈で段階を確定、(4) 記述が段階に合う肢を選ぶ。
辛い物と酒で胃に熱がこもり、口渇と灼熱感が出た。その熱が胃の津液を焼いた結果、空腹感はあるが食が進まず、舌は紅で無苔、脈は細数という胃陰虚の所見になっている。したがって現在は胃熱が胃の津液を損傷した段階。血の滞りなら舌紫暗、肝なら脈弦、膀胱なら排尿の異常が要る。