「50歳の男性。主訴は食欲不振。急な腹痛や嘔気があり、病院で胃の出血性びらんを指摘され、飲酒を控えるように言われた。口が苦く、舌質は紅、舌苔は厚膩、脈は滑数を認める。」腹痛が最も認められる部位はどれか。
正答:1
正答:1
胃の出血性びらんによる腹痛なので、痛むのは胃のある心窩部。正答は1。
病変のある臓器から、腹痛が出る体表の部位を決められるか。内臓痛の部位は臓器の発生学的な由来で決まる。
腹部の内臓痛は、はじめは病変のある臓器そのものの位置ではなく、その臓器の発生学的な由来に応じた正中の部位に感じられる。前腸に由来する胃・十二指腸・肝胆膵は心窩部、中腸に由来する小腸・虫垂・上行結腸は臍部、後腸に由来する下行結腸・S状結腸・直腸は下腹部。本例は胃の出血性びらんなので、痛むのは心窩部。側腹部の痛みは腎や尿管の病変で出やすい。急な腹痛と嘔気という記述も、胃の急性の炎症に合う。
内臓痛の部位は臓器の位置と一致しないことがある。虫垂は右下腹部にあるが、初期の内臓痛は臍部に感じられ、炎症が腹膜へ及んでから右下腹部の体性痛に移る。この移動が虫垂炎の診断の手がかりになる。胃は心窩部で位置と一致する。
腹痛の分類:内臓痛(管腔臓器の伸展や攣縮による、鈍く部位がはっきりしない、正中に感じる)、体性痛(壁側腹膜の刺激による、鋭く部位がはっきりする、動くと悪化)、関連痛(横隔膜刺激で肩へ、胆嚢で右肩甲部へ、尿管結石で鼠径部へ)。発生由来と部位の対応は、前腸=心窩部、中腸=臍部、後腸=下腹部。急性腹症では、突然発症・腹膜刺激症状・ショック徴候があれば緊急に医療機関へつなぐ。
腹部の部位を4つ並べ、臓器の位置と内臓痛の部位のずれを試す。解法は、(1) 病変のある臓器を確認、(2) その臓器の発生由来を出す、(3) 対応する部位を選ぶ。
腹部の内臓痛は臓器の発生由来に応じた正中の部位に感じられる。胃は前腸由来なので心窩部。臍部は中腸(小腸・虫垂・上行結腸)、下腹部は後腸(下行結腸・S状結腸・直腸)、側腹部は腎や尿管の病変で痛む。虫垂炎のように内臓痛から体性痛へ部位が移る疾患もある。