「17歳の男子。バイク走行中に転倒し救急搬送。ヘルメットの右外側に傷があり、右肩に外傷がある。右上肢は自動運動不能で知覚異常を認めた。意識は清明、独歩可能、脳神経に異常はない。」診断に有用性が最も低いのはどれか。
正答:4
正答:4
首から肩にかけての神経の束が引き伸ばされて上肢が動かなくなった状態。深いところを走る神経を見るのに、体表から当てる超音波は最も向かない。正答は4。
どこが傷んだかを見当づけたうえで、その場所を見るのに適さない検査を選べるか。
肩を強く打って頭が反対側へ振られると、首から出て上肢へ向かう神経の束が引き伸ばされる。上肢がまったく動かず感覚も鈍いのに、意識も歩行も脳神経も正常なので、傷んだのは脳ではなくこの束だと分かる。束は首の深いところで骨と筋にはさまれて走り、鎖骨の下をくぐって腋へ抜ける。この深さと位置を見るには、断面を撮る検査が要る。骨折や脱臼の有無、骨の位置関係を見るには断層写真、神経そのものや根が引き抜かれていないかを見るには磁気を使う画像、神経の働きが残っているかを調べるには筋の電気活動の検査が使える。体表から音波を当てる検査は、浅いところの腱や筋、血管を見るには手軽で有用だが、骨と筋の奥を走る束の全体を追うことはできない。したがって最も向かない。
検査の優劣ではなく、見たい場所に届くかどうかで選ぶ。音波は空気と骨に遮られるので、浅いところ向き。深いところや骨に囲まれた場所は断層写真か磁気を使う画像になる。神経の「形」を見るのが画像、「働き」を見るのが電気の検査、という役割の違いも押さえておく。
この束の損傷は、上のほうが傷めば肩と肘が動かなくなり、下のほうが傷めば手指が動かなくなる。根が脊髄から引き抜かれている場合は自然回復が望めず、手術で神経をつなぎ直す方法が検討される。回復の見通しを立てるため、受傷から時間をおいて電気の検査を繰り返すことがある。鍼灸では回復期の筋の萎縮予防と痛みの緩和が対象になるが、まず診断が確定していることが前提になる。
検査を4つ並べ、どれも実際に使われるものにして、見たい場所に届かないものを1つ置く。解法は、(1) 症例文から傷んだ場所を決める、(2) その場所の深さと周囲を確認、(3) そこに届かない検査を選ぶ。
肩を打って上肢が動かず、意識も脳神経も正常なら腕神経叢の損傷。束は首の深いところを走るので、体表から音波を当てる検査では追えない。CTは骨、MRIは神経そのもの、筋電図は働きを見る。