「17歳の男子。バイク走行中に転倒し救急搬送。ヘルメットの右外側に傷があり、右肩に外傷がある。右上肢は自動運動不能で知覚異常を認めた。意識は清明、独歩可能、脳神経に異常はない。」身体所見では肘の屈曲・手関節の背屈が不能で、手指の屈曲もできない。上肢の骨折や関節の脱臼はない。損傷部位はどれか。
正答:1
正答:1
肘を曲げる、手首を反らす、指を曲げるという別々の神経が担う動きがすべてできない。3本の神経がまだ分かれる前の場所が傷んでいる。正答は1。
できない動きの広がりから、神経がどこまで束になっている段階で傷んだかを決められるか。
肘を曲げる筋は筋皮神経、手首を反らす筋は橈骨神経、指を曲げる筋は正中神経と尺骨神経が動かす。この3〜4本はもともと首から出た根が集まり、幹をつくり、束に分かれてから、最後にそれぞれの神経になる。したがって、これらの動きが全部できないということは、まだ分かれる前の段階、つまり根や幹がある高さで傷んでいることになる。その高さがあるのは首の外側で、前と中の斜角筋にはさまれた場所から鎖骨の上あたりまでの範囲である。したがって損傷部位は側頸部。もし腋の高さで傷めば、そこはすでに束から神経へ分かれる場所なので、傷み方によって残る動きが出る。上腕や肘の高さならさらに個々の神経の問題になり、1本ずつの症状として現れる。
症状の範囲が広いほど、傷んだ場所は中枢に近い。この関係を使えば、個々の神経の走行を全部覚えていなくても高さが絞れる。逆に、1本の神経の症状だけなら末梢寄りを探す。今回は肘・手首・指のすべてが動かないので、最も中枢に近い選択肢を選ぶ。
この束の損傷は、上のほうの根が傷めば肩と肘が動かず手指は動く形、下のほうの根が傷めば手指が動かず肩と肘は動く形になる。全部が動かない場合は根から幹にかけて広く傷んでいる。首を反対側へ強く曲げられる力が加わったときに起こりやすく、バイクの転倒が典型的な原因である。回復の見込みは損傷の高さと引き抜かれているかどうかで変わる。
損傷の高さを4つ並べ、できない動きの一覧から選ばせる。解法は、(1) 各動きを担う神経を挙げる、(2) それらが何本あるかを数える、(3) 本数が多いほど中枢に近い高さを選ぶ。
肘の屈曲、手関節の背屈、手指の屈曲がすべてできないのは、別々の神経が担う動きがまとめて失われたということ。まだ束になっている根と幹の高さ、つまり側頸部が傷んでいる。腋・上腕・肘では1本ずつの症状になる。