次の症例で最も適切な疾患はどれか。「50歳の男性。数日前から右の耳に痛みがあり、しばらくして難聴、同側の表情筋の麻痺と外耳孔の水疱が出現。」
正答:4
正答:4
耳痛のあとに難聴、同じ側の表情筋麻痺、外耳孔の水疱が出た。水痘帯状疱疹ウイルスが再び活性化し膝神経節を侵した状態。正答は4。
末梢性顔面神経麻痺のうち、水疱と内耳症状を伴う型を選べるか。第29回問157と同型で、記述の順序が違う。
顔面神経は側頭骨内で膝神経節を作り、内耳神経と近接して走る。水痘帯状疱疹ウイルスが膝神経節に潜伏していて再び活性化すると、神経炎を起こして耳介や外耳道に水疱が出て強い耳痛を伴う。神経が腫れて虚血に陥ると末梢性顔面神経麻痺となり、隣接する内耳神経も巻き込まれて難聴・耳鳴・めまいが加わる。本例は耳痛→難聴→同側の表情筋麻痺→外耳孔の水疱という順序で、この3要素がすべてそろっている。ベル麻痺は原因が明らかでない末梢性顔面神経麻痺で、水疱も内耳症状も伴わない。脳幹梗塞は中枢性の病変で他の脳神経症状や交叉性の麻痺を伴い、水疱は説明できない。聴神経腫瘍は難聴・耳鳴・平衡障害が緩徐に進むもので、数日で水疱と麻痺が出る経過とは合わない。
ベル麻痺との鑑別は水疱の有無が中心だが、水疱を伴わないハント症候群もあるため、難聴・耳鳴・めまいといった内耳症状も併せて見る。中枢性か末梢性かは額のしわ寄せができるかで分ける。末梢性では前額部も麻痺するのでしわ寄せができない。
顔面神経は側頭骨の顔面神経管を抜け、茎乳突孔で頭蓋の外へ出て表情筋へ広がる。管内では膝神経節を作り、大錐体神経(涙腺)、アブミ骨筋神経(聴覚過敏)、鼓索神経(舌前2/3の味覚と唾液腺)を分枝する。障害部位が高いほど、味覚障害・聴覚過敏・涙分泌低下が加わる。ハント症候群はベル麻痺より予後が悪く、早期の抗ウイルス薬とステロイド投与が行われる。
顔面神経麻痺を起こしうる疾患を4つ並べ、水疱と内耳症状の2つを鍵にする。解法は、(1) 中枢性か末梢性かを判定、(2) 皮疹の有無、(3) 内耳症状の有無、(4) 経過の速さ。
耳痛のあとに難聴、同側の表情筋麻痺、外耳孔の水疱が出るのはラムゼイ・ハント症候群。水痘帯状疱疹ウイルスが膝神経節で再び活性化し、顔面神経と内耳神経を巻き込む。ベル麻痺は水疱も内耳症状も伴わず、脳幹梗塞は中枢性で他の脳神経症状を伴い、聴神経腫瘍は緩徐進行なので、いずれも合わない。