次の症例の経脈病証はどれか。「53歳の男性。空腹感があるが食欲がない。呼吸が苦しくせき込む。寝ることを好んで起きたがらない。」
正答:2
正答:2
空腹感はあるが食欲がない(飢不欲食)、呼吸が苦しくせき込む、寝てばかりで起きたがらない(嗜臥)。いずれも足の少陰腎経の経脈病証。正答は2。
『霊枢』経脈篇の腎経の病証を覚えているか。3つの所見がそろって腎経を指す。
足の少陰腎経は足底から起こり内果の後ろを回って下肢内側を上り、腎に属し膀胱を絡う。分枝は腎から上って肝と横隔膜を貫き肺に入り、喉をめぐって舌根に至る。もう一枝は肺から出て心を絡い胸中に注ぐ。この流注により、腎経の病証には呼吸器と心の症状が含まれる。『霊枢』経脈篇の腎経の是動病には、飢不欲食(空腹感はあるが食べたくない)、面如漆柴(顔が黒くすすける)、咳唾則有血(咳をすると血が混じる)、喝喝而喘(ぜいぜいと喘ぐ)、心如懸(心が宙づりのよう)、坐而欲起(座ると立ち上がりたくなる)、目䀮䀮(目がかすむ)などが挙がる。所生病には嗜臥(横になりたがる)、足下熱而痛などがある。設問の3所見はこれに対応する。足の太陰脾経なら舌本強・食則嘔・胃脘痛・腹脹、足の陽明胃経なら口喎・鼻出血・頸の腫れ、足の少陽胆経なら口苦・ため息・側頭部と体側の痛みが主。
空腹感があるのに食べられないという記述は、胃陰虚(第31回問145・第32回問150)でも出るので臓腑弁証へ流れやすい。設問は経脈病証を問うているので、『霊枢』の条文にある語かどうかで判断する。腎経が肺と心をめぐるため呼吸器と心の症状が入るのが、この経の病証の特徴。
足の少陰腎経の流注:足の小趾の下から起こり足底の湧泉へ斜めに向かい、舟状骨粗面の下を通って内果の後ろを回り、踵に入り下腿内側を上って膝窩内側へ出る。大腿内側の後縁を上り脊柱を貫いて腎に属し膀胱を絡う。直行する枝は腎から上って肝と横隔膜を貫き肺に入り、喉をめぐって舌根を挟む。分枝は肺から出て心を絡い胸中に注ぐ。この流注のため、腎経の病証には呼吸器(喘・咳血)と心(心如懸)の症状が含まれる。
経脈病証を問いながら、臓腑弁証でも説明できそうな症状を混ぜる。解法は、(1) 設問が経脈病証を問うていることを確認、(2) 各所見が『霊枢』の条文にある語かを見る、(3) その経の流注で説明できるかを確認。
空腹感はあるが食欲がない(飢不欲食)、呼吸が苦しくせき込む(喝喝而喘)、寝てばかりで起きたがらない(嗜臥)はいずれも足の少陰腎経の経脈病証。腎経が肝と横隔膜を貫いて肺に入り、分枝が心を絡うため、呼吸器と心の症状が含まれる。脾経は胃脘部と舌本、胃経は顔面、胆経は側頭と体側が主。