「46歳の女性。夫の死をきっかけにうつ病を発症。悲観的思考となり、気力が極度に減退。食欲もなく、動悸・不眠・健忘を伴う。舌質は淡、脈は細弱を認める。」病証として最も適切なのはどれか。
正答:3
正答:3
気力の減退・食欲不振に、動悸・不眠・健忘が重なり、舌淡・脈細弱。心と脾が同時に虚した心脾両虚。正答は3。
2つの臓の症状が混ざった証を組み立てられるか。心の症状と脾の症状を分けて拾うのが要点。
脾は運化を主り気血を作るので、弱ると食欲が落ち気力が減退する。心は血脈と神志を主るので、心血が不足すると動悸・不眠・健忘が出る。脾が気血を十分に作れなければ心を養えなくなるため、脾気虚と心血虚は連鎖して同時に現れやすい。これが心脾両虚。舌が淡いのは気血の不足、脈が細弱なのも同じ。夫の死という強い情志の刺激が誘因になっている。肝腎陰虚なら五心煩熱・盗汗・腰膝酸軟・舌紅少苔・脈細数と熱の所見が出る。肝気鬱結なら胸脇の脹痛・ため息・脈弦が主で、舌淡・脈細弱とは違う。脾気下陥は脾気虚が進んで持ち上げる力が落ちた状態で、内臓下垂・脱肛・慢性の下痢が特徴。
うつ病という診断名から肝気鬱結を選びたくなるが、舌脈が虚を示している。肝気鬱結なら脈は弦で実の側。2つの臓の症状が混ざるときは、どちらの臓の症状かを1つずつ振り分けてから証名を組む。
心脾両虚の症状:動悸、不眠、多夢、健忘、めまい、顔色が萎黄、食欲不振、腹満、軟便、倦怠感、月経量の減少や崩漏、舌淡、脈細弱。治法は健脾養心(補益心脾)で、心兪・脾兪・神門・三陰交・足三里・百会などが用いられる。脾は思を主り、思い悩みすぎると脾を損なうので、情志の刺激が誘因になりやすい。うつ病の東洋医学的な捉え方には、肝気鬱結(初期・実証)、心脾両虚(慢性・虚証)、肝腎陰虚、痰気鬱結などがある。
西洋医学の診断名(うつ病)から特定の証へ誘導し、舌脈で虚を示す。解法は、(1) 症状を臓ごとに振り分ける、(2) 舌脈で虚実を決める、(3) 2臓が同時に虚していれば両虚の証名を作る。
食欲不振と気力の減退は脾、動悸・不眠・健忘は心の症状。脾が気血を作れず心を養えなくなった心脾両虚で、舌淡・脈細弱もこれを支持する。うつ病という診断名から肝気鬱結を選びたくなるが、脈が弦ではなく細弱なので虚証。2臓の症状を分けて拾うのが要点。