「28歳の男性。職場でハラスメントを受けている。腹痛と下痢がひどく、出勤途中に数回トイレに行く。血便はなく、休日は症状が出ない。舌質は淡紅、舌苔は少、脈は弦を認める。」治療方針として最も適切なのはどれか。
正答:2
正答:2
ストレスで腹痛と下痢が起こり脈は弦。肝の疏泄失調が脾の運化を乱した肝脾不和なので、肝と脾の調和を図る。正答は2。
前問の疾患を東洋医学の証へ置き換え、2つの臓の関係で治法を立てられるか。脈弦が肝を名指ししている。
肝は疏泄を主り情志の影響を受ける。ストレスが続くと疏泄が乱れ、脾の運化を助けられなくなる。脾の運化が乱れると腹痛と下痢が起こり、下痢の後に腹痛が軽くなるのが特徴。これが肝脾不和(肝気乗脾)で、木が土を過剰に剋する木乗土の関係。脈が弦なのは肝胆の病を示し、舌質が淡紅で苔が少ないのは著しい熱や湿がないことを示す。治法は肝の疏泄を通し脾の運化を助ける、すなわち肝と脾の調和を図ること。肝と心の火を降ろすのは肝火上炎や心火亢盛で舌紅・脈弦数のとき、肺と腎の陰液を補うのは肺腎陰虚で空咳や腰膝酸軟があるとき、心と腎の交わりを図るのは心腎不交で不眠・心煩・腰膝酸軟があるときで、いずれも本例の所見と合わない。
肝胃不和と肝脾不和の区別が要点で、症状が上腹部(胃)か腹部全体と便通(脾)かで分かれる。本例は腹痛と下痢なので脾。第30回問151では下痢がないと明記されて肝胃不和が正答になっており、対になる出題。脈弦は両方に共通するので、部位と便通で分ける。
肝脾不和(肝気乗脾):腹痛して下痢し、下痢の後に痛みが軽くなる、腹満、腸鳴、便通が不安定、ストレスで悪化、胸脇の張り、ため息、脈弦。治法は疏肝健脾(抑肝扶脾)で、太衝・期門・章門・脾兪・肝兪・足三里・天枢などが用いられる。五行では木が土を剋す関係が過剰になった木乗土。肝胃不和は上腹部の脹痛・噯気・悪心嘔吐で、和胃降逆を加える。
2臓の組合せを4つ並べ、いずれも実在の証に対応させる。解法は、(1) 誘因(ストレス)と脈弦で肝を確定、(2) 症状の部位と便通で相手の臓を決める、(3) その2臓の関係を整える治法を選ぶ。
ストレスで肝の疏泄が乱れ、脾の運化を助けられなくなって腹痛と下痢が起こるのが肝脾不和。脈弦が肝を示す。治法は肝と脾の調和を図ること。肝と心の火を降ろすのは実熱、肺と腎の陰液を補うのは肺腎陰虚、心と腎の交わりを図るのは心腎不交で、いずれも本例の所見と合わない。