「52歳の女性。右側の表情筋麻痺で来院。同側の額のしわ寄せは不能で、涙液減少、聴覚過敏、味覚障害、唾液分泌障害を伴う。」後遺障害として出現の可能性が最も高いのはどれか。
正答:1
正答:1
涙液減少・聴覚過敏・味覚障害・唾液分泌障害がそろうので障害部位は膝神経節より近位。再生の過程で線維が迷入し、食事のときに涙が出るワニの涙が出やすい。正答は1。
随伴症状から障害の高さを決め、その高さで起こりうる後遺症を選べるか。誤肢は顔面神経以外の障害による所見。
顔面神経は側頭骨内で、大錐体神経(涙腺)、アブミ骨筋神経(聴覚過敏に関わる)、鼓索神経(舌前2/3の味覚と顎下腺・舌下腺の唾液分泌)を順に分枝する。本例は涙液減少・聴覚過敏・味覚障害・唾液分泌障害がすべてそろっており、これらの枝より近位すなわち膝神経節のあたりで障害されていることを示す。額のしわ寄せができないのも末梢性の証拠。この高さの障害では軸索が広範に断たれるため、再生の際に行き先を識別できずに迷入する過誤再生が起こりやすい。唾液腺へ向かうはずの線維が涙腺の経路へ入り込むと、食事のときに涙が流れるワニの涙になる。眼球陥凹・眼瞼下垂・共同偏視はいずれも顔面神経の支配ではなく、眼瞼下垂は動眼神経麻痺やホルネル症候群、眼球陥凹はホルネル症候群、共同偏視は脳の病変でみられる。
眼瞼下垂と兎眼を取り違えないこと。顔面神経麻痺では眼を閉じる筋(眼輪筋)が麻痺するので閉じられなくなる兎眼が出る。上眼瞼を挙げる眼瞼挙筋は動眼神経支配なので、顔面神経麻痺では下垂しない。障害の高さは、涙・聴覚・味覚・唾液の4つがそろうかで判定する。
顔面神経の枝と障害部位の推定:大錐体神経より近位=涙液減少+聴覚過敏+味覚障害+唾液分泌障害。アブミ骨筋神経より近位=聴覚過敏+味覚障害+唾液分泌障害。鼓索神経より近位=味覚障害+唾液分泌障害。茎乳突孔より遠位=表情筋の麻痺のみ。後遺症は病的共同運動(口を動かすと目が閉じる)、ワニの涙、拘縮、顔面けいれん。いずれも過誤再生によるもので、再生期の強い通電が助長するとされる。
眼のまわりの所見を3つ並べ、支配神経の違いで消させる。解法は、(1) 随伴症状から障害の高さを決める、(2) その高さで軸索が広範に断たれることを確認、(3) 過誤再生で説明できる後遺症を選ぶ、(4) 他の肢の支配神経を確認。
涙液減少・聴覚過敏・味覚障害・唾液分泌障害がそろうので、障害は膝神経節より近位。この高さでは軸索が広範に断たれ、再生時に行き先を間違える過誤再生が起こりやすい。唾液腺へ向かう線維が涙腺へ迷入すると、食事のときに涙が出るワニの涙になる。眼瞼下垂・眼球陥凹・共同偏視はいずれも顔面神経の支配ではない。