肝性脳症〈hepatic encephalopathy〉の直接 的原因はどれか。
公式正答:2
解説
肝性脳症の直接的原因を問う。アンモニアである。
この問題で問われていること
肝の解毒の働きが失われると何が起こるかを説明できるか。
しくみから理解する
タンパク質が分解されてできるアミノ酸は、代謝の過程でアンモニアを生じる。アンモニアは中枢神経に対して毒性を持つため、通常は肝臓の尿素回路により、毒性の低い尿素へ変えられ、腎から排泄される。肝機能が高度に低下すると、この処理が追いつかず、アンモニアが血中に増えて脳へ達し、意識障害をきたす。これが肝性脳症になる。加えて、門脈と体循環の短絡(側副血行路)があると、腸で生じたアンモニアが肝を通らずに全身へ回るため、同じことが起こる。
選択肢ごとの確認
尿酸は、核酸に含まれるプリン体の代謝の最終産物になる。増えると痛風と尿路結石を起こすが、脳症の原因ではない。
グルコースは、血糖として重要だが、脳症の直接的原因ではない。ただし、肝機能が低下すると糖新生とグリコーゲンの貯蔵が損なわれ、低血糖を起こすことがあり、これも意識障害の原因になる。
ビリルビンは、ヘモグロビンの分解産物になる。増えると黄疸を生じる。新生児では、血液脳関門が未熟なため、間接ビリルビンが脳へ移行して核黄疸を起こすことがあるが、成人の肝性脳症の直接的原因はアンモニアになる。
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混同しやすいポイント
「タンパク質→アンモニア→(肝で)尿素→尿へ」という一本の流れを覚える。この流れのどこが止まるかで、何が起こるかが決まる。誤肢のうち、ビリルビンは「肝と関わる物質」であるため紛らわしいが、生じるのは黄疸であり、脳症ではない(新生児の核黄疸は別)。加えて、血中アンモニア値は肝性脳症の指標として用いられるが、値と症状の重さは必ずしも一致しない点も知っておく。
理解を深める
肝性脳症を整理する。誘因=①便秘(腸内でアンモニアの産生が増え、吸収の時間も延びる)、②消化管出血(血液がタンパク質としてアンモニアの原料になる)、③タンパク質の過剰摂取、④感染、⑤脱水と電解質の異常(利尿薬による低カリウム血症は、アンモニアの産生を増やす)、⑥便秘を伴う薬剤、⑦アルコール、⑧門脈体循環短絡術の後。症状の程度(昏睡度)=Ⅰ度(睡眠と覚醒のリズムの逆転、多幸的またはうつ状態。周囲は気づきにくい)、Ⅱ度(見当識の障害、異常行動、羽ばたき振戦、傾眠)、Ⅲ度(強い興奮または傾眠、外的刺激で開眼するが指示に従えない)、Ⅳ度(昏睡。痛み刺激に反応する)、Ⅴ度(深昏睡。痛み刺激にも反応しない)。羽ばたき振戦=手関節を背屈させると、手が羽ばたくように震える。Ⅱ度で特徴的に現れる。治療=①誘因の除去(便通の管理、消化管出血への対応、感染の治療、電解質の補正)、②合成二糖類(腸内を酸性にしてアンモニアの産生と吸収を抑え、排便を促す)、③難吸収性の抗菌薬(アンモニアを産生する腸内細菌を減らす)、④分岐鎖アミノ酸製剤、⑤亜鉛の補充。看護=①意識レベルと羽ばたき振戦の観察(日内の変動があるため、繰り返し確認する)、②便通の管理(1日1〜2回を目安に。便秘は最も多い誘因になる)、③食事(タンパク質は制限しすぎず、分岐鎖アミノ酸を含む栄養剤を用いる。かつての厳しい制限は、栄養状態を悪化させるため見直された)、④安全(転倒、転落、離院。危険な行動)、⑤家族への説明(性格が変わったように見えるが、疾患による症状であることを伝える)、⑥腹水、浮腫、出血傾向、黄疸といった他の症状への対応。
間違えやすい考え方
原因物質を問う型で、誤肢に肝に関わる別の物質(ビリルビン)が置かれる。処理の流れで切る。
5分で振り返る
①タンパク質の代謝で生じるアンモニアは、肝臓の尿素回路で尿素に変えられ、腎から排泄される。②肝機能が高度に低下すると、この処理が追いつかず、アンモニアが脳へ達して意識障害をきたす。③門脈と体循環の短絡があると、腸で生じたアンモニアが肝を通らずに全身へ回る。④尿酸はプリン体の代謝産物(痛風)、ビリルビンはヘモグロビンの分解産物(黄疸)。⑤誘因=便秘、消化管出血、タンパク質の過剰摂取、感染、脱水と電解質異常(低カリウム血症)、アルコール。⑥羽ばたき振戦は昏睡度Ⅱ度で特徴的に現れる。⑦治療=誘因の除去、合成二糖類、難吸収性の抗菌薬、分岐鎖アミノ酸製剤。⑧便通の管理(1日1〜2回)が看護の中心。タンパク質は制限しすぎない。
1分チェック
- 肝性脳症の直接的原因は。→ アンモニア(肝の尿素回路が働かない)。
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