A さん(63 歳、男性)は、右肺癌〈lung cancer〉で 化学療法を受けていたが、右腕を動かしたときに上腕から肩にかけて痛みが生じるようになった。検査を行ったところ骨転移が 認められ、疼痛の原因と判断された。WHO3段階除痛ラダーに基づいてがん疼痛 のコントロールを開始することになった。 この時点でA さんに使用する鎮痛薬で適切なのはどれか。
公式正答:1
解説
骨転移による痛みが生じ、除痛ラダーに基づいてがん疼痛の管理を開始する時点で使用する鎮痛薬を問う。非オピオイド鎮痛薬である。
この問題で問われていること
段階的な鎮痛の考え方を、開始の時点から説明できるか。
しくみから理解する
世界保健機関が示した3段階除痛ラダーでは、痛みの強さに応じて段階的に薬剤を選ぶ。第1段階は非オピオイド鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬、アセトアミノフェン)、第2段階は弱オピオイド(コデイン、トラマドール)に非オピオイドを併用、第3段階は強オピオイド(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、ヒドロモルフォン)に非オピオイドを併用、になる。本問は旧3段階ラダーを前提とするため非オピオイド鎮痛薬が公式正答になる。一方、現行実践では治療開始時点そのものではなく、臨床評価、痛みの強さ・病態・患者条件に応じて初回薬を選び、中等度以上の痛みに軽度用薬だけを開始しない。加えて、骨転移による痛みには、非ステロイド性抗炎症薬が特に有効とされる。
選択肢ごとの確認
弱オピオイド鎮痛薬は第2段階になる。第1段階で十分な鎮痛が得られない場合に進む。なお、近年は、痛みが強い場合には第2段階を省いて第3段階から始めることもあり、ラダーは絶対的な順序ではなく、目安として用いられる。
強オピオイド鎮痛薬は第3段階になる。開始の時点で用いるものではない(強い痛みがある場合は例外的に最初から用いる)。
鎮痛補助薬は、主たる薬理作用は鎮痛ではないが、特定の痛みに対して鎮痛の効果を示す薬になる。抗うつ薬、抗てんかん薬、抗不整脈薬、副腎皮質ステロイド薬、ビスホスホネートなど。神経障害性疼痛と骨転移痛に、鎮痛薬と併用して用いる。単独で開始するものではない。
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混同しやすいポイント
「開始の時点」という条件が鍵になる。ラダーは下から上へ進むため、開始は第1段階になる。加えて、ラダーの原則を押さえる。①経口的に(可能な限り内服で)、②時刻を決めて規則正しく(痛くなってから、ではなく、痛みが出る前に)、③除痛ラダーに沿って効力の順に、④患者ごとの個別の量で(適切な量は人により大きく異なる)、⑤そのうえで細かい配慮を(副作用対策、説明、評価の継続)。
理解を深める
がん疼痛の管理を整理する。痛みの評価=①部位、②性質(鋭い、鈍い、灼けるよう、電気が走るよう)、③強さ(数値評価尺度、視覚的評価尺度、表情のスケール)、④経過と日内の変動、⑤増悪と軽快の因子、⑥突出痛の有無(安定していた痛みに、一時的に起こる強い痛み)、⑦日常生活への影響、⑧鎮痛薬の効果と副作用、⑨痛みの意味づけ(痛みが増すことを「病気が進んだ」と受け取る不安)。痛みの分類=①侵害受容性疼痛(体性痛=骨転移、皮膚、筋。部位が明確で、体動により増悪する。非ステロイド性抗炎症薬とオピオイドが有効。内臓痛=深部の鈍い痛み。オピオイドが有効)、②神経障害性疼痛(神経の障害による。しびれ、電撃痛、灼熱感。鎮痛補助薬を要する)。オピオイドの副作用と対策=①便秘(ほぼ必発。耐性ができないため、開始と同時に緩下薬を用いる)、②悪心と嘔吐(開始から1〜2週間で軽快することが多い。制吐薬を用いる)、③眠気(開始時と増量時。数日で軽快することが多い)、④呼吸抑制(適切に用いれば頻度は低い。過量では瞳孔の縮小、意識の低下、呼吸数の減少が現れる)、⑤せん妄、⑥掻痒、⑦排尿障害。誤解への対応=①「麻薬を使うと中毒になる」「命が縮む」「最後の手段」といった誤解が、患者と家族に根強い。痛みの治療として適切に用いる限り、依存は生じにくく、生命を縮めることもないことを、丁寧に伝える。②突出痛には、速効性の製剤(レスキュー)を用いること、我慢しなくてよいことを伝える。③痛みは主観的なものであり、本人が訴える強さがすべてになる。看護=評価、投与と観察、副作用への対応、非薬物的な方法(体位、温罨法と冷罨法、マッサージ、気分転換、リラクセーション)、そして不安への対応になる。
間違えやすい考え方
段階を問う型で、誤肢が上の段階と補助薬である。「開始の時点」という条件で切る。
5分で振り返る
①3段階除痛ラダー=第1段階は非オピオイド(非ステロイド性抗炎症薬、アセトアミノフェン)、第2段階は弱オピオイド(コデイン、トラマドール)+非オピオイド、第3段階は強オピオイド(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル)+非オピオイド。②開始の時点なので第1段階。③骨転移による痛みには非ステロイド性抗炎症薬が特に有効。④ラダーの原則=経口的に、時刻を決めて規則正しく、効力の順に、個別の量で、細かい配慮を。⑤鎮痛補助薬(抗うつ薬、抗てんかん薬、副腎皮質ステロイド薬)は、神経障害性疼痛と骨転移痛に併用する。⑥オピオイドの副作用=便秘(必発。耐性ができないため開始と同時に緩下薬)、悪心(1〜2週間で軽快)、眠気(数日で軽快)。⑦適切に用いる限り依存は生じにくく、生命を縮めることもない。
1分チェック
- 除痛ラダーの第1段階は。→ 非オピオイド鎮痛薬(骨転移には非ステロイド性抗炎症薬が有効)。
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