A さん(50 歳、男性)は肝硬変〈cirrhosis〉 と診断され、腹水貯留と黄疸がみられる。A さんに指導する食事内容で適切なのはどれか。
公式正答:1
解説
肝硬変と診断され、腹水貯留と黄疸がみられる50歳男性に指導する食事内容を問う。塩分の少ない食事である。
この問題で問われていること
腹水がある病態から、制限すべきものを導けるか。
しくみから理解する
肝硬変では、①アルブミンの合成が減って血漿膠質浸透圧が下がる、②門脈圧が上がる、③腎でのナトリウムと水の再吸収が増える(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の活性化と、アルドステロンの分解の低下による)、という3つの機序により腹水がたまる。ナトリウムを摂ると水も保持されるため、塩分の制限が腹水の管理の基本になる。目安は1日5〜7g程度、腹水が高度であればさらに制限する。加えて、利尿薬と、必要に応じてアルブミンの投与が行われる。
選択肢ごとの確認
脂肪分の多い食事は適切でない。黄疸があり、胆汁の分泌と流れが障害されている状態では、脂肪の消化と吸収が妨げられ、脂肪便と腹部の不快を招く。加えて、脂質の過剰は脂肪肝を悪化させうる。
蛋白質の多い食事も、この事例では適切でない。肝性脳症がある、あるいはその危険がある場合、タンパク質の過剰はアンモニアの産生を増やす。ただし、一律に厳しく制限することは、栄養状態を悪化させ、かえって予後を悪くするため、現在は行わない。標準的な量を確保し、分岐鎖アミノ酸製剤を用いる。加えて、就寝前の軽食(夜間の飢餓状態を防ぐ)が推奨される。
食物繊維の少ない食事も適切でない。肝硬変では、便秘がアンモニアの産生と吸収を増やし、肝性脳症の誘因になる。したがって、食物繊維は適度に摂り、便通を保つことが重要になる。合わせて、合成二糖類が用いられる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①脂肪、②タンパク質、③食物繊維に関するもので、いずれも方向が逆になっている。肝硬変の食事の原則は、①塩分の制限(腹水と浮腫)、②適切なエネルギーとタンパク質(栄養状態の維持。制限しすぎない)、③便通を保つ(食物繊維、水分)、④禁酒、⑤就寝前の軽食、⑥鉄の制限(C型肝炎で鉄の過剰がある場合)、になる。
理解を深める
肝硬変を整理する。病態=慢性の肝の炎症により、線維化と再生結節が生じ、肝の構造が改築される。原因は、C型肝炎、B型肝炎、アルコール、非アルコール性脂肪肝炎、自己免疫性の疾患など。近年は、非アルコール性脂肪肝炎の割合が増えている。症状=①代償期(無症状のことが多い。倦怠感、食欲不振)、②非代償期(黄疸、腹水、浮腫、肝性脳症、食道・胃静脈瘤とその破裂、出血傾向、女性化乳房、手掌紅斑、くも状血管腫、腹壁静脈の怒張、羽ばたき振戦、こむら返り)。合併症=①食道・胃静脈瘤(破裂すると大量出血。予防と治療として、内視鏡的結紮術と硬化療法、そして薬物)、②肝性脳症、③腹水と特発性細菌性腹膜炎、④肝腎症候群、⑤肝細胞がん(定期的な画像検査と腫瘍マーカーによる監視が必要)。重症度=チャイルド・ピュー分類(脳症、腹水、血清ビリルビン、血清アルブミン、プロトロンビン時間の5項目)。看護=①腹水と浮腫(体重、腹囲、水分出納、塩分と水分の管理、皮膚のケア、体位)、②肝性脳症(意識、羽ばたき振戦、便通の管理)、③出血(静脈瘤の破裂の徴候、歯磨きと排便時のいきみへの注意、皮下出血の観察)、④栄養(就寝前の軽食、分岐鎖アミノ酸、少量頻回)、⑤皮膚(黄疸に伴う掻痒、保湿、爪を短く、掻破の防止)、⑥感染の予防(免疫が低下している)、⑦禁酒の支援、⑧定期的な検査の継続、⑨終末期を含めた意思決定の支援。
間違えやすい考え方
食事指導を問う型で、誤肢がすべて方向が逆である。腹水と塩分の関係で切る。
5分で振り返る
①肝硬変の腹水は、アルブミンの合成低下による膠質浸透圧の低下、門脈圧の上昇、ナトリウムと水の再吸収の増加により生じる。②ナトリウムを摂ると水も保持されるため、塩分の制限(1日5〜7g程度)が管理の基本。③黄疸があると脂肪の消化と吸収が妨げられ、脂肪分の多い食事は脂肪便と腹部の不快を招く。④タンパク質は、一律に厳しく制限しない(栄養状態を悪化させる)。標準的な量を確保し、分岐鎖アミノ酸製剤を用いる。⑤便秘はアンモニアの産生と吸収を増やし肝性脳症を招く。食物繊維は適度に摂る。⑥就寝前の軽食が推奨される(夜間の飢餓状態を防ぐ)。⑦合併症=食道・胃静脈瘤、肝性脳症、腹水、肝腎症候群、肝細胞がん。⑧重症度はチャイルド・ピュー分類(脳症、腹水、ビリルビン、アルブミン、プロトロンビン時間)。
1分チェック
- 腹水のある肝硬変では。→ 塩分を制限する。
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