更年期女性のホルモン補充療法によってリスクが低くなるのはどれか。
公式正答:2
解説
更年期女性のホルモン補充療法によってリスクが低くなるものを問う。骨粗鬆症である。
この問題で問われていること
エストロゲンの働きから、補充の効果と危険を導けるか。
しくみから理解する
エストロゲンは、骨において、①破骨細胞の働きを抑え、②骨吸収を抑制する働きを持つ。閉経によりエストロゲンが急減すると、骨吸収が骨形成を上回り、骨量が急速に減少する。ホルモン補充療法により、この骨量の減少を抑えられるため、骨粗鬆症と、それに伴う骨折の危険が低くなる。加えて、更年期症状(ほてり、発汗、不眠、いらだち)と、腟の萎縮による症状の改善にも有効になる。
選択肢ごとの確認
乳癌は、リスクが低くなるのではなく、わずかに高くなる。とくに、エストロゲンとプロゲスチンの併用療法を5年以上続けた場合に、危険がわずかに上昇することが示されている。したがって、定期的な乳がん検診が必要になる。
子宮体癌も、エストロゲン単独では危険が高くなる。エストロゲンが子宮内膜を増殖させるためになる。したがって、子宮のある女性では、プロゲスチンを併用して内膜の増殖を抑える。子宮を摘出している女性では、エストロゲン単独で行える。
静脈血栓症も、危険が高くなる。エストロゲンが凝固に関わる因子に影響するためになる。経口の製剤で危険が高く、貼付剤と塗布剤(経皮)では、肝臓を通らないため危険が低いとされる。血栓症の既往がある場合は禁忌になる。
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混同しやすいポイント
「エストロゲンを補うと何が起こるか」で整理する。①良い方向=更年期症状の改善、骨量の維持、腟と尿路の萎縮の改善、②危険が高まる方向=乳がん(併用療法の長期)、子宮体がん(単独療法)、静脈血栓症、そして脳卒中と胆石。誤肢は、いずれも危険が高まるものになる。加えて、禁忌を押さえる=①乳がんと子宮体がんの既往、②原因不明の性器出血、③血栓症の既往と急性期、④重症の肝機能障害、⑤妊娠の可能性、⑥冠動脈疾患と脳卒中の既往。
理解を深める
更年期を整理する。定義=閉経の前後5年間、合わせておよそ10年間。日本人の閉経の平均年齢はおよそ50歳になる。閉経=月経が12か月以上停止した状態を、後から確認して判断する。変化=卵巣の機能が低下し、エストロゲンが急減する。一方、性腺刺激ホルモン(卵胞刺激ホルモン)は上昇する。症状=①血管運動神経症状(ほてり、のぼせ、発汗、動悸。最も特徴的)、②精神症状(いらだち、抑うつ、不安、不眠、意欲の低下)、③身体症状(頭痛、めまい、肩こり、腰痛、関節痛、疲労感)、④泌尿生殖器の症状(腟の乾燥、性交痛、頻尿、尿失禁、繰り返す膀胱炎)。評価には、簡略更年期指数などが用いられる。閉経後に増えるもの=骨粗鬆症、脂質異常症、動脈硬化と心血管疾患、そして認知機能への影響。エストロゲンが、骨、脂質、血管に保護的に働いていたためになる。治療=①ホルモン補充療法(エストロゲン単独、または子宮のある女性ではプロゲスチンを併用。経口、貼付、塗布の剤形がある)、②漢方薬、③向精神薬(抑うつと不安が強い場合)、④生活の調整(運動、睡眠、栄養、カルシウムとビタミンD、禁煙)、⑤心理的な支援。看護=①症状を「気のせい」「年のせい」と片づけない、②本人が自分の身体の変化を理解できるよう説明する、③生活と役割の変化(子どもの独立、親の介護、仕事の責任、夫婦関係)が重なる時期であることを踏まえる、④更年期の後の長い人生を見据えた健康づくり(骨と血管を守る)、⑤定期的な検診(乳がん、子宮頸がん、骨密度、脂質、血圧)。
間違えやすい考え方
効果と危険を問う型で、誤肢がすべて危険が高まるものである。エストロゲンの働きから導いて切る。
5分で振り返る
①エストロゲンは破骨細胞の働きを抑え、骨吸収を抑制する。閉経により急減すると骨量が急速に減る。②ホルモン補充療法により骨量の減少を抑えられ、骨粗鬆症と骨折の危険が低くなる。③乳がんは、エストロゲンとプロゲスチンの併用を5年以上続けた場合に危険がわずかに高まる。定期的な検診が必要。④子宮体がんは、エストロゲン単独で危険が高まる。子宮のある女性ではプロゲスチンを併用する。⑤静脈血栓症の危険が高まる。経口で高く、経皮では低いとされる。血栓症の既往は禁忌。⑥更年期は閉経の前後5年間。日本人の閉経の平均年齢はおよそ50歳。⑦閉経後に増えるもの=骨粗鬆症、脂質異常症、動脈硬化と心血管疾患。⑧症状を「年のせい」と片づけない。
1分チェック
- ホルモン補充療法で危険が低くなるのは。→ 骨粗鬆症。血栓症の危険は高くなる。乳癌と子宮体癌はレジメンによって異なり、子宮を有する女性ではエストロゲンに黄体ホルモンを併用するのが標準で、この併用は子宮体癌を防ぐために行う。子宮摘出例へのエストロゲン単独では乳癌の増加は示されていない。
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