A さん(75 歳、男性)は妻(66 歳)と2人暮らし。3か月前に認知症〈dementia〉 の診断を受けた。妻から訪問看護師に「夫は通所介護のときは穏やかに過ごしていると聞いてい るが、家では興奮することが多く、どう対応すればよいかわからない」と相談が あった。 このときの妻に対する訪問看護師の最初の対応で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
通所介護では穏やかだが家では興奮することが多く、どう対応すればよいか分からないと相談した妻への、訪問看護師の最初の対応を問う。興奮する状況を妻と一緒に振り返ることである。
この問題で問われていること
行動の背景を明らかにする手順を選べるか。
しくみから理解する
認知症のある人の興奮には、必ず理由がある。①身体の要因(痛み、便秘、尿意、空腹、暑さ寒さ、薬剤、体調不良)、②環境の要因(音、光、人の出入り、物の配置、時間帯)、③関わりの要因(言い方、急かす、否定する、複数の指示、後ろから声をかける)、④本人の状態(疲労、不安、混乱、できないことへの苛立ち)。通所介護では穏やかで家では興奮する、という差の理由は一つに決まらない。家庭での関わりのほか、夕方以降の症状の増悪、疲労の蓄積、服薬の時間帯、家庭で求められる動作の違いでも同じ差は生じる。介護者に原因を帰さず、何が重なっているのかを探る。したがって、いつ、どこで、何をしているとき、誰がどう関わったときに興奮したのかを、一緒に振り返ることが、対応を考える出発点になる。
選択肢ごとの確認
主治医に相談するよう勧めることは、最初の対応ではない。身体疾患と薬剤の関与が疑われる場合、そして非薬物的な対応で改善しない場合には必要になるが、まず状況を明らかにすることが先になる。加えて、相談を受けた看護師がすぐに他へ回すことは、妻の困りごとに応えたことにならない。
散歩に出かけることを勧めることも、最初の対応ではない。活動は有用な手立ての一つだが、原因を確かめないまま特定の方法を勧めても、効果は期待できず、うまくいかなければ妻の負担と無力感を増す。
通所介護の頻度を増やすことを提案することも、最初ではない。介護者の休息としては有用だが、家庭での興奮という問題そのものは残る。加えて、本人の負担と、費用の問題もある。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも「特定の対策を先に出す」ものになる。相談を受けたとき、原因が分からないまま対策を並べても、うまくいかなければ介護者は「やってもだめだった」という無力感を深める。まず、①何が起きているのかを具体的にする、②そこから要因を推測する、③試せる方法を一緒に考える、④やってみて振り返る、という順序で進める。この過程を共に行うこと自体が、介護者を支えることにもなる。
理解を深める
認知症の行動と心理の症状への対応を整理する。原因の探索=①いつ(時間帯、曜日、食事や排泄との関係)、②どこで(部屋、場所)、③何をしているとき(更衣、入浴、食事、排泄、移動)、④誰が、どう関わったか(言葉、態度、距離、視線)、⑤どのくらい続いたか、⑥どうしたら収まったか。この記録(行動の記録)を、介護者と一緒に作ると、要因が見えてくることが多い。家庭で興奮しやすい理由=①介護者との関係が近く、遠慮がない、②できないことを指摘されやすい、③生活の場であり、失敗が目につく、④介護者が疲れており、余裕を持って関われない、⑤役割を失っていることへの苛立ち、⑥慣れた場所であるがゆえに、変化(物の位置、家族の対応)に敏感になる。対応の原則=①否定しない、②急がせない、③複数のことを同時に求めない、④正面から、目線を合わせ、短く、穏やかに伝える、⑤できることを任せる(役割を残す)、⑥失敗を指摘しない、⑦環境を整える(見当識の手がかり、刺激を減らす、なじみの物)、⑧身体の不調を見逃さない、⑨薬は最後。ただし自傷他害の切迫があるときや、強い苦痛を伴う幻覚・妄想があるときは、非薬物的な対応と並行して薬物療法を検討する。介護者への支援=①これまでの努力を認める、②「なぜ興奮するのか」を一緒に理解する(本人が困っていることの表れだと分かると、受け止め方が変わる)、③具体的な方法を一緒に考え、試し、振り返る、④うまくいかなくても責めない、⑤休息を確保する(通所介護、短期入所、訪問介護)、⑥相談先と、緊急時の連絡、⑦家族会と地域の資源。介護者が孤立し、追い詰められることが、虐待と介護の破綻につながるため、介護者を支えることは本人を支えることと同じ重みを持つ。
間違えやすい考え方
対応の順序を問う型で、誤肢が特定の対策を先に出すものである。原因を明らかにする手順で切る。
5分で振り返る
①認知症のある人の興奮には必ず理由がある。身体(痛み、便秘、尿意、空腹、薬剤)、環境(音、光、時間帯)、関わり(言い方、急かす、否定する)、本人の状態(疲労、不安、苛立ち)。②通所介護では穏やかで家では興奮する、という差の理由は一つに決まらない。家庭での関わりのほか、夕方以降の症状の増悪、疲労の蓄積、服薬の時間帯、家庭で求められる動作の違いでも同じ差は生じる。介護者に原因を帰さず、いつ何が重なっているかを一緒に探す。③まず、いつ、どこで、何をしているとき、誰がどう関わったときかを一緒に振り返る。④原因が分からないまま対策を並べても、うまくいかなければ介護者の無力感を深める。⑤対応の原則=否定しない、急がせない、複数のことを同時に求めない、短く穏やかに伝える、役割を残す、環境を整える、身体の不調を見逃さない、薬は最後。ただし自傷他害の切迫があるときや、強い苦痛を伴う幻覚・妄想があるときは、非薬物的な対応と並行して薬物療法を検討する。⑥介護者の孤立が虐待と介護の破綻につながる。介護者を支えることは本人を支えること。
1分チェック
- 家で興奮する認知症の人には。→ まず、いつ・どこで・何をしているとき興奮したかを一緒に振り返る。
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