A さん(52 歳、男性)は、49 歳から高血圧症〈hypertension〉 で内服治療と食事や運動に関する生活指導を受けている。2か月間の予定で開発途上国に出張することになり、予防接 種を受ける目的で渡航外来を受診した。A さんから「渡航にあたって何か注意する ことはありますか」と質問があった。 A さんへの看護師の説明で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
高血圧症で治療中の52歳男性が、2か月間の予定で開発途上国に出張するにあたり、注意することを尋ねた際の説明を問う。「持参する高血圧症の薬について、かかりつけ医に相談しましょう」である。
この問題で問われていること
渡航先で治療を継続するための備えを説明できるか。
しくみから理解する
海外、とくに開発途上国では、①同じ薬が手に入るとは限らない、②医療機関へのかかりやすさが異なる、③薬の名称と規格が異なる、④持ち込みに制限がある国がある(麻薬と向精神薬、そして一部の薬)、⑤予備を含めた量が必要になる、といった問題がある。したがって、渡航の前に、かかりつけ医に相談し、①滞在期間を超える量の処方、②英文の診断書と処方内容の証明書、③一般名(成分名)の確認、④現地で受診する場合に備えた情報、を準備しておくことが必要になる。
選択肢ごとの確認
「出張中は、減塩の必要はありません」は誤りになる。高血圧の治療は、薬物療法と生活習慣の改善の両方で成り立つ。環境が変わっても、減塩は継続する必要がある。むしろ、外食が増え、慣れない食事になることで、塩分の摂取が増えやすい。
「出張先では有酸素運動は控えましょう」も誤りになる。有酸素運動は、高血圧の管理に有用であり、継続することが望ましい。ただし、①暑熱と高地といった環境、②治安、③大気の状態、④感染症の危険を考えて、方法と場所を選ぶ必要がある。屋内での運動という選択肢もある。
「現地に到着してから健康診断を受診しましょう」も適切でない。健康状態の確認は、渡航の前に行う。渡航前に、①現在の状態の評価、②必要な検査、③薬の調整、④予防接種、⑤現地の医療事情の確認を済ませておく。現地での受診は、言語、費用、そして医療の水準の面で、必ずしも容易ではない。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①生活習慣の中断、②活動の制限、③時期の誤りになる。渡航者への助言の原則は、「継続すべきことは継続し、変わる条件に応じて方法を工夫する」になる。加えて、この患者は「何か注意することはありますか」と尋ねており、渡航に伴って新たに生じる問題(薬の確保、医療へのかかりやすさ)に応えることが求められている。
理解を深める
渡航者の健康管理を整理する。渡航前=①健康状態の評価と、持病の管理(薬の確保、英文の証明書、お薬手帳、医療情報のカード)、②予防接種(渡航先と滞在期間、活動の内容による。黄熱=一部の国で入国に証明書が必要、A型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病、腸チフス、日本脳炎、髄膜炎菌、麻疹と風疹。接種には期間を要するため、4〜6週間前には相談する)、③マラリアの予防(流行地では、予防内服と、蚊に刺されない対策=長袖、忌避剤、蚊帳、エアコン)、④海外旅行保険(医療費は高額になりうる。搬送の費用も含めて確認する)、⑤現地の医療事情と、日本語が通じる医療機関の情報、⑥治安と衛生の情報。滞在中=①食品と水(生水、氷、生野菜、生肉、生魚、屋台の食品に注意。「火を通したもの、皮をむいたもの、加熱した飲み物」)、②手洗い、③蚊とダニ、動物への接触を避ける(狂犬病は、犬だけでなくコウモリなどからも感染する。咬まれたら直ちに洗浄し受診する)、④性感染症の予防、⑤体調の変化に注意し、無理をしない、⑥高地と暑熱への順応、⑦時差への対応、⑧薬の管理(温度、盗難、そして持ち歩く量)。帰国後=①発熱、下痢、発疹があれば、渡航歴を伝えて受診する(マラリアは、帰国後数週間から数か月後に発症することがあり、診断が遅れると重篤になる)、②検疫(症状があれば検疫所へ申し出る)。看護師の役割=渡航外来での相談、情報の提供、そして帰国後の対応になる。
間違えやすい考え方
説明を問う型で、誤肢が中断・制限・時期の誤りである。継続すべきことは継続するという原則で切る。
5分で振り返る
①開発途上国では、同じ薬が手に入るとは限らず、名称と規格も異なる。持ち込みに制限がある国もある。②渡航前にかかりつけ医へ相談し、滞在期間を超える量の処方、英文の証明書、一般名の確認、現地で受診する場合の情報を準備する。③減塩は環境が変わっても継続する。外食が増え、塩分の摂取が増えやすい。④有酸素運動は高血圧の管理に有用で継続する。暑熱、高地、治安、大気の状態を考えて方法を選ぶ。⑤健康診断は渡航前に受ける。現地での受診は、言語、費用、医療水準の面で容易ではない。⑥予防接種は期間を要するため、4〜6週間前には相談する。⑦マラリアの流行地では、予防内服と蚊に刺されない対策を行う。⑧帰国後の発熱は、渡航歴を伝えて受診する。マラリアは数週間から数か月後に発症しうる。
1分チェック
- 渡航前に確認するのは。→ 薬をかかりつけ医に相談して確保する(減塩と運動は継続)。
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