感染徴候のない創部の治癒を促進する要因はどれか。
公式正答:3
解説
感染徴候のない創部の治癒を促進する要因を問う。湿潤である。
この問題で問われていること
湿潤環境が治癒に果たす役割を説明できるか。
しくみから理解する
創面を適度に湿った状態に保つと、①上皮の細胞が創面を滑るように移動でき、上皮化が速く進む、②滲出液に含まれる細胞成長因子と、白血球、マクロファージが働ける、③痂皮を作らずに済む、④神経終末が乾燥にさらされず、疼痛が軽い、⑤ドレッシング材の交換時に、新生した組織を傷つけにくい、という利点が得られる。これを湿潤環境下の治癒といい、現在の創傷管理の基本になっている。
選択肢ごとの確認
圧迫は、治癒を促進しない。局所の血流を妨げ、組織への酸素と栄養の供給を減らすため、治癒を遅らせる。褥瘡は、まさに圧迫によって生じる。ただし、止血の目的で一時的に圧迫することは別になる。
痂皮(かさぶた)は、治癒を促進しない。乾燥により形成され、上皮の細胞が移動する妨げになる。加えて、痂皮の下に滲出液がたまると感染の温床になる。かつては「乾かして、かさぶたを作る」ことが良いとされたが、現在は誤りとされている。
消毒は、感染徴候のない創には行わない。消毒薬は、細菌だけでなく、治癒に関わる細胞(線維芽細胞、上皮の細胞)も傷害するため、かえって治癒を遅らせる。感染徴候のない創は、生理食塩液または水道水で十分に洗浄する。
浮腫も、治癒を促進しない。組織の間に水がたまることで、毛細血管から細胞までの距離が延び、酸素と栄養が届きにくくなる。加えて、皮膚が脆弱になり、損傷しやすくなる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも「治癒を妨げる要因」になる。創傷治癒の条件を、①適度な湿潤、②適切な温度(体温に近い)、③感染がない、④壊死組織がない、⑤十分な血流と酸素、⑥栄養(タンパク質、亜鉛、ビタミンC、鉄)、⑦圧迫とずれがない、⑧異物がない、と整理する。誤肢は、この条件の逆に当たる。
理解を深める
創傷管理を整理する。治癒の過程=①止血期(血小板と凝固)、②炎症期(0〜3日。好中球とマクロファージが細菌と壊死組織を除去する。発赤、熱感、腫脹、疼痛)、③増殖期(3日〜2週間。線維芽細胞がコラーゲンを作り、毛細血管が新生し、肉芽組織ができる。上皮化が進む)、④成熟期(2週間〜数か月から年単位。コラーゲンが再構築され、瘢痕が成熟する)。治癒の形式=①一次治癒(創縁を縫合して閉じる。瘢痕が小さい)、②二次治癒(開放したまま、肉芽と上皮化により治す。時間がかかり瘢痕が大きい)、③三次治癒(遅延一次治癒。感染の危険が去ってから閉じる)。創の管理=①洗浄(十分な量の生理食塩液または水道水で、圧をかけて洗い流す。細菌と異物、そして壊死組織の残りを減らす)、②壊死組織の除去(外科的、化学的、自己融解、生物学的)、③湿潤環境の保持(ドレッシング材の選択=滲出液の量に応じて。少なければ保湿するもの、多ければ吸収するもの)、④感染の管理(感染がある場合は、開放して排膿し、必要なら抗菌薬。この場合は湿潤より排膿を優先する)、⑤圧迫とずれの除去、⑥全身の管理(栄養、血糖、循環、禁煙)。感染の徴候=発赤の拡大、熱感、腫脹、疼痛の増強、膿性の滲出液、悪臭、発熱、そして治癒の停滞。治癒を妨げる要因=①局所=感染、壊死組織、異物、乾燥、圧迫とずれ、血流の不足、繰り返す損傷、②全身=低栄養、糖尿病、貧血、低酸素、免疫の低下、副腎皮質ステロイド薬と抗がん薬、加齢、喫煙、そして精神的なストレス。
間違えやすい考え方
要因を問う型で、誤肢がすべて治癒を妨げるものである。湿潤環境という現在の基本で切る。
5分で振り返る
①創面を適度に湿った状態に保つと、上皮の細胞が移動しやすく、滲出液の成長因子と免疫細胞が働き、痂皮を作らず、疼痛も軽い。②痂皮は乾燥によりでき、上皮の移動を妨げる。「乾かしてかさぶたを作る」考え方は現在は誤りとされる。③消毒薬は、治癒に関わる細胞も傷害するため、感染徴候のない創には行わない。生理食塩液または水道水で十分に洗浄する。④圧迫は血流を妨げ、浮腫は酸素と栄養が届く距離を延ばすため、いずれも治癒を遅らせる。⑤治癒の過程=止血期、炎症期(0〜3日)、増殖期(3日〜2週間)、成熟期。⑥感染がある場合は、湿潤より排膿を優先する。⑦感染の徴候=発赤の拡大、熱感、腫脹、疼痛の増強、膿性の滲出液、悪臭、発熱、治癒の停滞。⑧全身の要因=低栄養、糖尿病、貧血、低酸素、ステロイド、加齢、喫煙。
1分チェック
- 創傷治癒を促進するのは。→ 湿潤(乾燥・痂皮・消毒は妨げる)。
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