悪性貧血〈pernicious anemia〉で正 しいのはどれか。2つ選べ。
公式正答:1・4 または 1・5 または 4・5
「または」で区切った組のいずれかと一致すれば正解です。解説
悪性貧血について正しいものを2つ問う。厚生労働省の正答値表では、「4と5」「1と4」「1と5」の3つの組のいずれを選んでも正解とする措置がとられている。すなわち、黄疸が生じる、胃癌の発症率が高い、自己免疫機序で発症する、の3つがいずれも正しい。
この問題で問われていること
この疾患の機序と、それに伴う所見を説明できるか。
しくみから理解する
悪性貧血は、胃の壁細胞に対する自己抗体、または内因子に対する自己抗体により、内因子が不足し、ビタミンB12の吸収が障害されて生じる巨赤芽球性貧血になる。①自己免疫の機序により発症する、②骨髄で無効造血が起こり、赤血球が骨髄内で壊されるため、間接ビリルビンが上昇して黄疸を生じる、③背景にある萎縮性胃炎により、胃がんの発症率が高い、という3点が、いずれも正しい記述になる。
選択肢ごとの確認
異食症が出現するのは、鉄欠乏性貧血になる。氷、土、そして生米などを無性に食べたくなるもので、鉄の欠乏との関連が知られている。悪性貧血の特徴ではない。
小球性の貧血ではない。ビタミンB12の欠乏により、細胞の分裂に必要なデオキシリボ核酸の合成が障害される一方、細胞質の成熟は進むため、赤血球は大きくなる。すなわち大球性の貧血になる。小球性低色素性を示すのは、鉄欠乏性貧血、鉄芽球性貧血、サラセミア、そして慢性疾患に伴う貧血の一部になる。
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混同しやすいポイント
この設問は、正答が「2つ選べ」でありながら、正しい記述が3つあるため、厚生労働省が3通りの組を正解とする措置をとった。したがって、①黄疸、②胃がんの発症率が高い、③自己免疫機序、のいずれの組み合わせでも正解になる。悪性貧血の要点は、①原因=自己免疫による内因子の欠乏、②貧血の型=大球性(巨赤芽球性)、③神経症状を伴う(ビタミンB12は神経の髄鞘の維持に必要)、④黄疸(無効造血による)、⑤萎縮性胃炎を背景とし、胃がんの危険が高い、⑥治療=ビタミンB12の注射が標準になる(内因子を介した吸収が働かないため)。ただし大量投与時には内因子を介さない受動拡散で投与量のおよそ1%が吸収されるため、経口での補充が成立する場合もある。
理解を深める
巨赤芽球性貧血を整理する。原因=①ビタミンB12の欠乏(悪性貧血、胃全摘後、回腸の切除と病変=クローン病、萎縮性胃炎、菜食の長期、そして一部の薬剤)、②葉酸の欠乏(摂取の不足、アルコール依存、妊娠、溶血、そして薬剤=メトトレキサート、抗てんかん薬)。ビタミンB12の吸収=食物中のビタミンB12は、胃の壁細胞から分泌される内因子と結合し、回腸末端で吸収される。したがって、①胃の障害(悪性貧血、胃切除)、②回腸の障害(切除、クローン病)で欠乏する。なお、体内に数年分の貯蔵があるため、胃全摘の後も、欠乏が現れるまでに数年かかる。症状=①貧血の症状(易疲労、息切れ、動悸、蒼白)、②黄疸(無効造血)、③舌の症状(ハンター舌炎=舌乳頭が萎縮し、赤くつるつるになり、痛みを伴う)、④消化器症状(食欲不振、下痢)、⑤神経症状(ビタミンB12欠乏に特徴的。深部感覚の障害=しびれ、位置覚と振動覚の低下、歩行の障害、そして認知機能の低下。葉酸欠乏では神経症状は出にくい)。この神経症状は、貧血が軽くても現れることがあり、また治療が遅れると回復しないことがある点が重要になる。検査=大球性(平均赤血球容積が高値)、汎血球減少(重症例)、間接ビリルビンと乳酸脱水素酵素の上昇、網赤血球の減少、血清ビタミンB12の低下、抗内因子抗体と抗胃壁細胞抗体。治療=ビタミンB12の筋肉内注射(悪性貧血では生涯にわたり継続する)。葉酸欠乏では葉酸を補充するが、ビタミンB12欠乏に葉酸だけを与えると、貧血は改善しても神経症状が進行するため、鑑別が重要になる。看護=①治療の継続(生涯の注射が必要であることの説明と支援)、②神経症状の観察と、転倒の予防、③口腔のケア(舌炎による疼痛)、④食事、⑤胃がんの検査の継続。
間違えやすい考え方
複数正答の設問で、正しい記述が3つあり3通りの組が正解となった。機序から所見を導いて切る。
5分で振り返る
①悪性貧血は、胃の壁細胞または内因子に対する自己抗体により内因子が不足し、ビタミンB12の吸収が障害されて生じる。②無効造血により赤血球が骨髄内で壊され、間接ビリルビンが上昇して黄疸を生じる。③背景にある萎縮性胃炎により、胃がんの発症率が高い。④大球性(巨赤芽球性)貧血であり、小球性ではない。⑤異食症は鉄欠乏性貧血の症状。⑥ビタミンB12は、胃の内因子と結合して回腸末端で吸収される。胃切除と回腸の病変でも欠乏する。体内に数年分の貯蔵がある。⑦神経症状(深部感覚の障害、歩行の障害、認知機能の低下)はビタミンB12欠乏に特徴的で、葉酸欠乏では出にくい。治療が遅れると回復しないことがある。⑧治療はビタミンB12の筋肉内注射。悪性貧血では生涯続ける。
1分チェック
- 悪性貧血は。→ 自己免疫による内因子の欠乏。大球性で、黄疸と神経症状を伴い、胃がんの危険が高い。
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