A さん(38 歳、女性)は、大腸癌〈colon cancer〉の 終末期である。癌性腹膜炎〈cancerous peritonitis〉による症状緩和の 目的で入院し、鎮痛薬の静脈内注射と高カロリー輸液が開始された。A さんは自 宅で過ごしたいと希望したため、医師と看護師で検討し、症状緩和をしながら自宅 退院の方向で退院支援カンファレンスを開催することになった。 退院支援カンファレンスの参加者で適切なのはどれか。2つ選べ。
公式正答:1・5
解説
大腸がんの終末期にあり、鎮痛薬の静脈内注射と高カロリー輸液を受けながら自宅退院を目指す38歳女性について、退院支援カンファレンスの参加者を2つ問う。薬剤師とソーシャルワーカーである。
この問題で問われていること
この患者の在宅療養に必要な専門職を特定できるか。
しくみから理解する
この患者は、①鎮痛薬の静脈内注射(麻薬を含む可能性が高い)と、②高カロリー輸液を、自宅で継続することになる。したがって、薬剤の管理(麻薬の取り扱い、輸液の調製と供給、副作用への対応、在宅での保管、そして調剤薬局との連携)について、薬剤師の関与が不可欠になる。加えて、38歳という年齢から、①医療費と生活費、②仕事、③家族の状況、④利用できる制度(高額療養費、傷病手当金、そして40歳未満のため介護保険は利用できない)といった、社会的・経済的な課題が生じる。これらを扱うのがソーシャルワーカー(医療ソーシャルワーカー)になる。
選択肢ごとの確認
言語聴覚士は、嚥下と言語、そして聴覚の障害に関わる。この事例では、嚥下障害と構音障害は示されておらず、必要性が高いとはいえない。
臨床検査技師は、検体検査と生理機能検査を担う。在宅療養の調整に直接関わる場面は限られる。
介護支援専門員は、介護保険のサービスを調整する。ただし、この患者は38歳であり、介護保険の第2号被保険者(40歳以上65歳未満)にも該当しないため、介護保険を利用できない。したがって、この事例では参加者として適切ではない。年齢が40歳以上であれば、末期の悪性腫瘍は特定疾病に含まれるため、介護保険を利用でき、介護支援専門員が中心的な役割を担うことになる。
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混同しやすいポイント
この設問の鍵は、①投与されている治療(薬剤師)と、②38歳という年齢(介護保険を使えない)の2点になる。とくに②は、年齢を確認しないと介護支援専門員を選んでしまう。介護保険は、①65歳以上(第1号)、②40歳以上65歳未満で、加齢に伴う特定疾病(末期の悪性腫瘍を含む16疾病)が原因の場合(第2号)に利用できる。40歳未満は対象外になる。40歳未満で在宅療養を支える制度は、①医療保険による訪問看護、②障害福祉サービス、③身体障害者手帳、④高額療養費と傷病手当金、⑤自治体による独自の支援になる。
理解を深める
終末期の在宅療養への移行を整理する。退院支援カンファレンスの参加者=本人と家族、医師、病棟看護師、退院支援に関わる看護師、薬剤師、管理栄養士、リハビリテーション職、医療ソーシャルワーカー、そして在宅側からは、在宅療養支援診療所の医師、訪問看護師、訪問薬剤師、(介護保険が使える場合は)介護支援専門員、そして訪問介護の事業者になる。検討する事項=①症状の緩和の方法と、悪化したときの対応、②医療機器と薬剤の準備(輸液ポンプ、携帯型注入ポンプ、輸液の供給、麻薬の受け渡し)、③医療処置の手技(家族が行う場合の指導と、訪問看護の頻度)、④緊急時の連絡先と、対応の手順(誰に、いつ連絡するか)、⑤病状が進んだときの見通しと、どこで過ごすか、⑥看取りの場所の希望と、そのときの対応(かかりつけ医への連絡。救急車を呼ぶことの意味も含めて説明しておく)、⑦家族の介護力と負担、⑧経済的な課題、⑨住環境(ベッド、清潔、排泄)、⑩本人と家族の心の準備。若年のがん患者への配慮=①介護保険が使えない(40歳未満)、②仕事と収入、③配偶者と子どもへの説明と支援、④生殖に関わる問題、⑤同年代に同じ経験をした人が少なく孤立しやすい、⑥「若いのに」という周囲の反応。訪問看護の役割=症状の管理、医療処置、家族への指導と支援、24時間の対応、そして看取りの支援になる。医療保険による訪問看護では、末期の悪性腫瘍の場合、週4日以上、1日複数回、そして複数の事業所からの訪問も可能になる。
間違えやすい考え方
参加者を問う型で、誤肢に年齢の条件で外れる職種が置かれる。治療の内容と年齢の2点で切る。
5分で振り返る
①鎮痛薬の静脈内注射と高カロリー輸液を自宅で継続するため、薬剤の管理(麻薬の取り扱い、輸液の供給、副作用、保管、薬局との連携)に薬剤師が不可欠。②38歳という年齢から、医療費、仕事、制度の課題が生じる。これを扱うのが医療ソーシャルワーカー。③介護保険は、65歳以上(第1号)と、40歳以上65歳未満で特定疾病が原因の場合(第2号)に利用できる。38歳は対象外。④40歳以上なら末期の悪性腫瘍は特定疾病に含まれ、介護支援専門員が中心的な役割を担う。⑤40歳未満の在宅療養=医療保険による訪問看護、障害福祉サービス、高額療養費、傷病手当金。⑥医療保険の訪問看護では、末期の悪性腫瘍の場合、週4日以上、1日複数回、複数の事業所からの訪問が可能。⑦緊急時の連絡先と、看取りの場所の希望をあらかじめ決めておく。
1分チェック
- 38歳の終末期患者の退院支援には。→ 薬剤師とソーシャルワーカー(介護保険は使えない)。
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