次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(26歳、男性)は1か月前から動悸と20m程度の歩行でも息切れが出現するようになった。ぶつけた記憶もないのに下肢に出血斑ができるようになり、医療機関を受診した。Aさんは急性白血病〈acuteleukemia〉を疑われ、緊急入院し、後腸骨稜から骨髄穿刺を受けた。身体所見:意識清明、体温37.2℃、呼吸数17/分、脈拍124/分、血圧96/52mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉97%(roomair)、両下肢に散在する出血斑あり。検査所見:Hb5.1g/dL、白血球44,960/μL、血小板1.5万/μL、総ビリルビン1.1mg/dL、尿素窒素19.4mg/dL、クレアチニン0.76mg/dL、CRP2.2mg/dL。胸部エックス線:縦郭・心陰影・肺野に異常なし。
A さんの骨髄穿刺の30 分後に観察すべき項目で優先度が高いのはどれか。
公式正答:2
解説
血小板1.5万/μLで、両下肢に出血斑がある26歳男性が後腸骨稜から骨髄穿刺を受けた30分後に、優先して観察すべき項目を問う。穿刺部の止血状態である。
この問題で問われていること
検査後の危険を、検査データから判断できるか。
しくみから理解する
この患者は血小板が1.5万/μLと著しく低く(正常はおよそ15万〜35万/μL)、既に両下肢に出血斑が生じている。この状態で骨に針を刺せば、穿刺部からの出血が止まりにくく、皮下血腫と、まれに後腹膜への出血をきたす危険がある。したがって、検査後30分という時点で優先して観察すべきは、穿刺部の止血の状態(出血、腫脹、疼痛の増強、皮下の膨隆)になる。加えて、圧迫止血を十分な時間行い、安静を保つ。
選択肢ごとの確認
経皮的動脈血酸素飽和度は、97%と保たれており、この検査に伴って直ちに問題となるものではない。ただし、貧血が高度(ヘモグロビン5.1g/dL)であるため、酸素運搬能そのものは低く、労作時の症状には注意する。
下肢の運動障害は、後腸骨稜からの穿刺で通常は生じない。穿刺の部位は、坐骨神経を含む神経の走行から離れており、麻酔も局所にとどまる。
眼瞼結膜は、貧血の程度をみる所見として重要だが、検査後30分に優先して観察するものではない。貧血の評価は、検査データと症状で継続して行う。
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混同しやすいポイント
検査後の観察は、①その検査に伴う合併症、②その患者に固有の危険、の2つを掛け合わせて考える。この事例では、①骨髄穿刺の合併症=出血、感染、疼痛、迷走神経反射、②患者の危険=血小板が著しく低く出血しやすい、が重なるため、出血が最優先になる。誤肢は、いずれも患者の状態を評価する項目ではあるが、この時点の優先度としては下がる。
理解を深める
急性白血病を整理する。病態=造血幹細胞に異常が生じ、分化しない未熟な細胞(芽球)が骨髄で増殖する。その結果、正常な血球が作られなくなり、①赤血球の減少(貧血=動悸、息切れ、易疲労、蒼白)、②白血球(好中球)の機能低下と減少(感染=発熱)、③血小板の減少(出血=紫斑、鼻出血、歯肉出血、性器出血、そして頭蓋内出血)という3つの症状が現れる。加えて、④臓器への浸潤(肝脾腫、リンパ節腫脹、歯肉の腫脹、中枢神経への浸潤、皮膚)、⑤骨痛。この事例では、貧血(ヘモグロビン5.1)、白血球の増加(44,960。芽球の増加による)、血小板の減少(1.5万)と、動悸、息切れ、出血斑という所見が、すべて合致する。診断=血液検査、骨髄検査(塗抹標本、染色、表面マーカー、染色体と遺伝子の検査)。分類=急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病。治療=①寛解導入療法、②寛解後療法(地固め、維持)、③造血幹細胞移植、④分子標的薬、⑤支持療法(輸血、感染の予防と治療、腫瘍崩壊症候群の予防)。腫瘍崩壊症候群=治療により大量の腫瘍細胞が壊れ、高尿酸血症、高カリウム血症、高リン血症、低カルシウム血症、そして急性腎障害をきたす。予防として、十分な輸液と、尿酸を下げる薬を用いる。看護=①感染の予防(好中球減少期。手洗い、口腔ケア、生ものを避ける、面会の制限、環境の管理、発熱時の速やかな対応)、②出血の予防(血小板減少期。転倒と打撲、鼻を強くかまない、硬い歯ブラシを避ける、便秘を避ける、剃刀を避ける、出血の観察)、③貧血への対応(安静、活動の調整、輸血)、④口腔粘膜炎、⑤悪心と嘔吐、⑥脱毛、⑦栄養、⑧心理的な支援(若年での発症、突然の診断、長期の入院、将来への不安、妊よう性)、⑨家族への支援。
間違えやすい考え方
観察の優先度を問う型で、誤肢が状態の評価項目である。検査の合併症と患者固有の危険の掛け合わせで切る。
5分で振り返る
①血小板1.5万/μLは著しく低く(正常15万〜35万)、既に出血斑がある。穿刺部からの出血が止まりにくい。②検査後30分では、穿刺部の止血の状態(出血、腫脹、疼痛の増強、皮下の膨隆)を最優先で観察する。圧迫止血を十分に行い安静を保つ。③後腸骨稜からの穿刺で下肢の運動障害は通常生じない。④眼瞼結膜は貧血の評価に重要だが、この時点の優先ではない。⑤急性白血病では、芽球の増殖により正常な血球が作られず、貧血・感染・出血の3つが現れる。⑥この事例の所見(ヘモグロビン5.1、白血球44,960、血小板1.5万、動悸、息切れ、出血斑)はすべて合致する。⑦腫瘍崩壊症候群=治療により腫瘍細胞が壊れ、高尿酸血症、高カリウム血症、急性腎障害をきたす。十分な輸液と尿酸を下げる薬で予防する。⑧出血の予防=転倒と打撲を避ける、鼻を強くかまない、硬い歯ブラシを避ける、便秘を避ける。
1分チェック
- 血小板1.5万で骨髄穿刺を受けたら。→ 穿刺部の止血状態を最優先で観察する。
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