次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(26歳、男性)は1か月前から動悸と20m程度の歩行でも息切れが出現するようになった。ぶつけた記憶もないのに下肢に出血斑ができるようになり、医療機関を受診した。Aさんは急性白血病〈acuteleukemia〉を疑われ、緊急入院し、後腸骨稜から骨髄穿刺を受けた。身体所見:意識清明、体温37.2℃、呼吸数17/分、脈拍124/分、血圧96/52mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉97%(roomair)、両下肢に散在する出血斑あり。検査所見:Hb5.1g/dL、白血球44,960/μL、血小板1.5万/μL、総ビリルビン1.1mg/dL、尿素窒素19.4mg/dL、クレアチニン0.76mg/dL、CRP2.2mg/dL。胸部エックス線:縦郭・心陰影・肺野に異常なし。
A さんは急性骨髄性白血病 acute myeloid leukemia と診断された。化学療法によって寛解し、造血幹細 胞移植を行う方針となった。 A さんの造血幹細胞移植で正しいのはどれか。
公式正答:3
解説
急性骨髄性白血病で寛解し、造血幹細胞移植を行う方針となった26歳男性について、正しいものを問う。移植前処置が必要である、である。
この問題で問われていること
移植の前に何を行い、なぜ必要かを説明できるか。
しくみから理解する
造血幹細胞移植では、移植の前に前処置を行う。目的は、①患者に残っている腫瘍細胞を減らす、②患者の免疫を抑え、移植した細胞が拒絶されないようにする、③移植した細胞が生着するための場所(骨髄の空間)を作る、の3つになる。方法は、大量の化学療法と、必要に応じた全身への放射線照射になる。この前処置により、患者の造血と免疫は一時的にほぼ失われるため、移植した細胞が生着するまでの間、重篤な感染と出血の危険にさらされる。
選択肢ごとの確認
患者と骨髄提供者の性別が一致している必要はない。適合の判定に用いるのは、ヒト白血球抗原の型になる。性別の一致は要件ではない。ただし、女性から男性への移植では、移植片対宿主病がやや起こりやすいという報告があり、選択の際に考慮されることはある。
移植後2週間で退院できるわけではない。生着(好中球が回復する)までにおよそ2〜4週間かかり、その後も、感染、移植片対宿主病、そして臓器障害の管理のため、通常は1〜2か月以上の入院を要する。退院後も、外来での長期の経過観察と、免疫抑制薬の継続が必要になる。
手術室で行うものではない。造血幹細胞の移植そのものは、輸血と同様に、末梢の静脈から点滴により行う。病室で実施できる。ただし、骨髄液の採取は、提供者に対して手術室で全身麻酔下に行われる(末梢血幹細胞の場合は、成分採血装置を用いる)。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①適合の条件、②入院期間、③実施の場所という3点を誤っている。移植の全体像を、①前処置、②幹細胞の輸注(点滴。病室で可能)、③生着までの期間(無菌的な管理、感染と出血の予防、輸血、栄養)、④生着(好中球が500を超える日が続く)、⑤移植片対宿主病の管理、⑥長期の経過観察、という流れで押さえる。
理解を深める
造血幹細胞移植を整理する。種類=①自家移植(自分の幹細胞をあらかじめ採取・凍結し、大量化学療法の後に戻す。移植片対宿主病は起こらないが、腫瘍細胞の混入と再発の危険がある)、②同種移植(血縁者または非血縁者から。移植片対宿主病が起こりうるが、移植片対腫瘍効果も期待できる)。幹細胞の供給源=①骨髄(全身麻酔下に腸骨から採取)、②末梢血(顆粒球コロニー刺激因子で幹細胞を末梢血へ動員し、成分採血で採取)、③臍帯血(出産時に採取し凍結保存。ヒト白血球抗原の適合の条件が緩やかで、すぐに使えるが、細胞数が限られる)。適合=ヒト白血球抗原の型。血縁者では兄弟姉妹で4分の1の確率で一致する。非血縁者は骨髄バンクを通じて探す。移植片対宿主病=移植したドナーのリンパ球が、患者の組織を異物とみなして攻撃する。①急性(移植後100日以内を目安。皮膚=紅斑と皮疹、消化管=下痢と腹痛、肝=黄疸。重症度で分類する)、②慢性(100日以降。皮膚の硬化、口腔と眼の乾燥、肝障害、肺の障害、そして関節の拘縮。自己免疫疾患に似た像を示す)。治療は免疫抑制薬と副腎皮質ステロイド。合併症=①感染(細菌、真菌、ウイルス=サイトメガロウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス)、②出血、③粘膜炎、④肝中心静脈閉塞症、⑤生着不全、⑥晩期の合併症(二次がん、内分泌の障害、不妊、白内障、成長障害)。看護=①無菌的な環境の管理、②感染と出血の予防、③口腔ケア、④栄養、⑤疼痛と悪心の管理、⑥心理的な支援(長期の隔離、生命に関わる治療、ドナーへの思い、そして家族の負担)、⑦妊よう性への配慮(治療前に情報を提供する)、⑧長期の経過観察と、生活の指導。
間違えやすい考え方
治療の正誤を問う型で、誤肢が条件・期間・場所を誤る。前処置の目的から切る。
5分で振り返る
①移植の前処置は、大量化学療法と必要に応じた全身放射線照射により行う。目的=残存する腫瘍細胞を減らす、免疫を抑えて拒絶を防ぐ、生着のための場所を作る。②前処置により造血と免疫がほぼ失われ、生着まで重篤な感染と出血の危険にさらされる。③適合の判定はヒト白血球抗原の型による。性別の一致は要件ではない。④生着までに2〜4週間、入院は通常1〜2か月以上。退院後も長期の経過観察と免疫抑制薬の継続が必要。⑤幹細胞の輸注は、輸血と同様に静脈から点滴で行う。病室で可能。骨髄液の採取は提供者に対して手術室で全身麻酔下に行う。⑥移植片対宿主病=ドナーのリンパ球が患者の組織を攻撃する。急性(100日以内。皮膚、消化管、肝)と慢性(100日以降)。⑦同種移植では移植片対腫瘍効果も期待できる。
1分チェック
- 造血幹細胞移植では。→ 前処置が必要(腫瘍の減少、拒絶の防止、場所の確保)。
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