次の文を読み、問いに答えよ。A君(7歳、男児)は、サッカークラブに所属している。本日、練習中に転倒して右腕を地面についた後、肘周囲に腫れと強い痛みが生じたため、父親と救急外来を受診した。エックス線撮影の結果、右側の上腕骨顆上骨折〈supracondylarfractureofhumerus〉と診断され、非観血的整復とギプス固定が行われることになった。A君は不安な表情で父親と処置室の前で待っている。
ギプス固定にあたり、A 君への看護師の説明で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
上腕骨顆上骨折でギプス固定を受ける7歳男児への説明を問う。ギプスに使うものを見せながら説明することである。
この問題で問われていること
学童期の子どもに、どう伝えるかを判断できるか。
しくみから理解する
7歳(学童期)の子どもは、具体的な物を通してであれば、これから起こることを理解できる。実際に使う物(ギプスの材料、包帯、水)を見せ、触れさせながら説明することで、①何が起こるかを具体的に思い描ける、②未知への恐怖が減る、③自分で心の準備ができる、④質問できる、⑤主体的に取り組める、という効果が得られる。これがプレパレーションの考え方になる。
選択肢ごとの確認
痛くないことを説明することは適切でない。実際には、整復の際に痛みを伴う。事実と異なる説明をすれば、①その場では安心しても、実際に痛かったときに裏切られたと感じる、②以後、医療者の言うことを信じられなくなる、③次の処置への恐怖が強まる。痛みについては、正直に、しかしその子が受け止められる形で伝える(「少し痛いけど、すぐ終わるよ」「痛いときは手を握っていていいよ」)。
すぐ終わることを説明することも、事実に反する可能性がある。整復とギプス固定には一定の時間がかかる。時間についても、正直に、その子が分かる形で伝える(「テレビの番組が1つ終わるくらい」など)。
ギプスが乾くときに冷たくなると説明することも誤りになる。ギプスは、硬化する際に化学反応により熱を生じ、温かくなる。「あたたかくなるよ」と伝えることで、驚きと不安を減らせる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①事実と異なる安心、②事実と異なる説明、③現象の誤りになる。子どもへの説明の原則は、①正直に伝える(嘘をつかない)、②その子の年齢と発達に合わせる、③具体的に(物、絵、写真、人形)、④短く、分かる言葉で、⑤感じることを伝える(音、におい、触った感じ、痛み)、⑥どうすればよいかを伝える(「じっとしていてね」「痛かったら言ってね」)、⑦できることを示す(手を握る、数を数える、深呼吸)、⑧質問を受ける、⑨終わったら認める、になる。
理解を深める
プレパレーションを整理する。目的=①これから起こることを理解する、②心の準備をする、③恐怖と不安を減らす、④主体的に取り組めるようにする、⑤対処する力を育てる、⑥医療者との信頼関係を築く。年齢に応じた方法=①乳児=親と離れないこと、なじみの物、抱っこと声かけ、②幼児前期=短い言葉、直前に伝える(早く伝えすぎると不安が長く続く)、人形と絵本、③幼児後期=ごっこ遊び、絵、写真、実物、「なぜ」に答える、④学童=実物を見せ、手順を順に説明する、体の中で何が起こるかも伝えられる、質問を受ける、選べる部分を作る(どちらの腕から、どの絆創膏にするか)、⑤思春期=大人に近い説明、プライバシー、自分で決める部分を尊重する、親の同席の可否も本人に確認する。ディストラクション=処置中に注意を他へ向ける方法。年齢に応じて、シャボン玉、おもちゃ、歌、数を数える、動画、そして呼吸法を用いる。処置後=①終わったことを伝える、②頑張ったことを具体的に認める(「動かないでいられたね」)、③遊びの中で気持ちを表現できるようにする、④責めない(泣いても、動いてしまってもよい)。抑制=安全のためにやむを得ず身体を保持する場合も、①必要最小限、②理由を説明する、③保持する人と、関わる人を分ける、④終わったら速やかに解く、⑤親に押さえる役割を担わせない(親は安心の存在であってほしいため)。上腕骨顆上骨折=小児の肘周囲の骨折で最も多い。転倒して手をついた際に生じる。合併症として、①神経の損傷(正中神経、橈骨神経、尺骨神経)、②血管の損傷、③フォルクマン拘縮(前腕のコンパートメント症候群による不可逆の拘縮。強い痛み、蒼白、脈拍の消失、しびれ、麻痺が徴候。緊急の対応を要する)、④変形治癒(内反肘)がある。
間違えやすい考え方
説明を問う型で、誤肢が事実と異なる安心と現象の誤りである。正直に、具体的にという原則で切る。
5分で振り返る
①学童期の子どもは、具体的な物を通してこれから起こることを理解できる。実際に使う物を見せ、触れさせながら説明する。②効果=具体的に思い描ける、恐怖が減る、心の準備ができる、質問できる、主体的に取り組める。③「痛くない」という事実と異なる説明は、裏切られたと感じさせ、以後医療者を信じられなくなる。正直に、受け止められる形で伝える。④ギプスは硬化の際に化学反応で熱を生じ、温かくなる。冷たくならない。⑤説明の原則=正直に、発達に合わせて、具体的に、短く、感じることを伝え、どうすればよいかを伝え、できることを示す。⑥処置後は、終わったことを伝え、頑張ったことを具体的に認め、責めない。⑦親に押さえる役割を担わせない。⑧上腕骨顆上骨折では、フォルクマン拘縮に注意する。
1分チェック
- 処置前の説明は。→ 実際に使う物を見せながら(嘘をつかない)。
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