次の文を読み、問いに答えよ。A君(7歳、男児)は、サッカークラブに所属している。本日、練習中に転倒して右腕を地面についた後、肘周囲に腫れと強い痛みが生じたため、父親と救急外来を受診した。エックス線撮影の結果、右側の上腕骨顆上骨折〈supracondylarfractureofhumerus〉と診断され、非観血的整復とギプス固定が行われることになった。A君は不安な表情で父親と処置室の前で待っている。
A 君は、整復術後の経過観察のため1泊入院することになった。 整復術後の合併症の観察方法で適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
上腕骨顆上骨折の整復とギプス固定を受けた7歳男児について、術後の合併症の観察方法を問う。感覚鈍麻の有無は患肢の手指を触れて観察する、である。
この問題で問われていること
ギプス固定後に何を、どこで観察するかを説明できるか。
しくみから理解する
ギプスで覆われた部分は直接見られないため、観察はギプスの外に出ている末梢(手指)で行う。感覚の鈍麻は、①神経の圧迫と損傷、②循環障害とコンパートメント症候群を示す重要な徴候になる。したがって、手指に触れて、左右差と、本人の訴えを確認する。加えて、動かせるか(運動)、色(蒼白、チアノーゼ)、温度(冷感)、腫脹、そして毛細血管再充満時間も、同じく手指で観察する。
選択肢ごとの確認
患側の肩の皮膚色を観察することは適切でない。循環障害は末梢に現れるため、観察すべきは手指になる。肩は、ギプスの範囲より中枢であり、変化を捉えられない。
患肢の観察を8時間ごとに行うことも適切でない。整復とギプス固定の直後は、腫脹が進行する時期であり、循環障害は急速に生じうる。とくに小児の上腕骨顆上骨折では、フォルクマン拘縮という不可逆の後遺症を残す危険があるため、当初は1〜2時間ごと、あるいはより頻回に観察する。8時間の間隔では、発見が致命的に遅れる。
冷感をギプスの中に手を入れて観察することも誤りになる。ギプスと皮膚の間に手を入れれば、①皮膚を傷つけ、②ギプスの適合を損ない、③圧迫を生じさせる。冷感は、ギプスの外に出ている手指で観察する。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①観察の部位、②観察の頻度、③観察の方法を、それぞれ誤っている。ギプス固定後の観察は、①末梢(手指または足趾)で、②頻回に、③触れて、④左右を比べて行う、が原則になる。観察の項目は5つのP(疼痛、蒼白、脈拍の消失、感覚異常、麻痺)に、腫脹と冷感、そして毛細血管再充満時間を加える。
理解を深める
上腕骨顆上骨折とコンパートメント症候群を整理する。上腕骨顆上骨折=小児の肘周囲の骨折で最も多い。転倒して手をついた際、肘が過伸展して生じる。転位が大きいと、①血管(上腕動脈)、②神経(正中神経、とくに前骨間神経、橈骨神経、尺骨神経)の損傷を伴う。治療は、徒手整復とギプス固定、または経皮的なピンによる固定になる。合併症=①神経麻痺(多くは一時的だが、回復に数か月かかることがある)、②血管の損傷、③コンパートメント症候群とフォルクマン拘縮、④変形治癒(内反肘)、⑤関節の可動域の制限。コンパートメント症候群=筋膜に囲まれた区画の内圧が上昇し、循環が障害されて、筋と神経が壊死する。①原因=骨折後の出血と腫脹、ギプスと包帯による外からの圧迫、熱傷、挫滅、②徴候=ア)安静時の強い疼痛(骨折の痛みとして説明できないほど強く、鎮痛薬が効きにくい)、イ)他動的に指を伸展させると疼痛が増強する(最も早期で鋭敏な所見)、ウ)感覚の異常(しびれ、鈍麻)、エ)腫脹と緊満、オ)蒼白と冷感、カ)脈拍の消失と麻痺(これらは末期の所見であり、これを待ってはならない)、③対応=直ちにギプスと包帯を割って解放し、患肢を心臓の高さに保ち(挙上しすぎると灌流がさらに減る)、医師へ報告する。緊急の筋膜切開を要することがある。④フォルクマン拘縮=発見が遅れた結果、前腕の屈筋が壊死して線維化し、手指が屈曲したまま固まる不可逆の障害になる。看護=①頻回の観察と記録、②本人の訴えを重視する(子どもは「痛い」としか言えないことがある。痛みの強さと変化、そして泣き方と表情を見る)、③家族への説明(何を見て、どうなったら知らせるか。退院後も、しびれ、色の変化、痛みの増強、動かせないことがあれば、直ちに受診するよう伝える)、④挙上、⑤指の運動、⑥ギプスの管理。子どもの骨折の特徴=①骨膜が厚く、若木骨折と骨膜下骨折が生じる、②成長軟骨板(骨端線)の損傷は成長障害を招きうる、③リモデリング(自家矯正)の力が強い、④癒合が速い、⑤関節の拘縮が生じにくい。
間違えやすい考え方
観察方法を問う型で、誤肢が部位・頻度・方法を誤る。末梢で、頻回に、触れて、左右を比べるで切る。
5分で振り返る
①ギプスで覆われた部分は直接見られないため、観察はギプスの外に出た末梢(手指)で行う。②感覚の鈍麻は、神経の圧迫と損傷、循環障害を示す重要な徴候。触れて左右差と訴えを確認する。③肩は範囲より中枢であり、循環障害の変化を捉えられない。④整復と固定の直後は腫脹が進行し、循環障害が急速に生じる。当初は1〜2時間ごと、あるいはより頻回に観察する。8時間では致命的に遅れる。⑤ギプスの中に手を入れると、皮膚を傷つけ、適合を損ない、圧迫を生じる。⑥観察の5つのP=疼痛、蒼白、脈拍の消失、感覚異常、麻痺。加えて腫脹、冷感、毛細血管再充満時間。⑦コンパートメント症候群では、他動的に指を伸展させると疼痛が増強する(最も早期で鋭敏)。脈拍の消失と麻痺は末期の所見で、待ってはならない。⑧発見が遅れるとフォルクマン拘縮という不可逆の障害を残す。
1分チェック
- ギプス固定後の観察は。→ 手指に触れて、頻回に、左右を比べて行う。
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