次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(30歳、初妊婦)は、夫(32歳、会社員)と2人暮らし。身長は160cm、非妊時体重60kgである。妊娠8週の妊婦健康診査を受診し順調な経過と診断された。嘔吐はないが、時々嘔気があると訴え、対処法について質問があった。
A さんへの説明で適切なのはどれか。
公式正答:1
解説
妊娠8週で、嘔吐はないが時々嘔気があると訴える30歳初妊婦への説明を問う。「空腹を避けましょう」である。
この問題で問われていること
つわりの症状を軽くする工夫を説明できるか。
しくみから理解する
つわりの嘔気は、空腹時に強まることが多い。胃が空になると、胃酸の刺激と血糖の低下により、症状が誘発される。したがって、①少量を頻回に食べる、②枕元に食べられるものを置き、起床前に少し口にする、③一度に多く食べない、④食べられるときに、食べられるものを食べる、という工夫が有効になる。「規則正しく3食」にこだわらず、空腹の時間を作らないことが要点になる。
選択肢ごとの確認
「塩味を濃くしましょう」は適切でない。塩分の過剰摂取は、妊娠高血圧症候群と浮腫の面から望ましくない。ただし、つわりの時期には、さっぱりしたものと、やや塩気のあるものを好むことがあり、食べられるものを優先する時期でもある。指導としては「濃くしましょう」ではなく、食べられるものを無理なく、になる。
「規則正しく3食摂りましょう」も、この時期には適切でない。決まった時間に決まった量を食べようとすると、かえって負担になり、食べられないことへの罪責感も生む。少量頻回が原則になる。
「市販の調理済みの食品は控えましょう」も適切でない。つわりの時期は、においだけで嘔気が誘発されるため、調理そのものが困難になることが多い。市販の食品と、家族による調理を活用してよい。ただし、①加熱していない食品は避ける。生ハム、ナチュラルチーズ、スモークサーモンはリステリア、生肉はトキソプラズマや腸管出血性大腸菌、生卵はサルモネラが主な対象になる、②衛生と保存に注意する、という点は伝える。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
誤肢は、①塩分、②形式へのこだわり、③手段の制限になる。つわりの時期の指導の原則は、「食べられるものを、食べられるときに、食べられるだけ」になる。栄養のバランスは、つわりが治まってから整えればよい。加えて、水分が摂れているか、体重の減少がないか、尿量が保たれているかを確認し、妊娠悪阻へ移行していないかを見極めることが重要になる。
理解を深める
つわりを整理する。時期=妊娠5〜6週頃に始まり、8〜11週頃に最も強く、12〜16週頃までに軽快することが多い。妊婦のおよそ5〜8割が経験する。機序=ヒト絨毛性ゴナドトロピンの上昇、エストロゲンとプロゲステロンの変化、胃腸の運動の低下、嗅覚の過敏、そして心理的な要因が関与するとされるが、完全には解明されていない。工夫=①空腹を避ける(少量頻回、枕元に食べ物)、②冷たいもの、さっぱりしたもの(果物、ゼリー、麺類、酢の物)、③においを避ける(温かい料理のにおいで誘発されやすい。冷ますとにおいが減る。換気、マスク、調理を家族に頼む)、④水分(一度に多く飲まず、少しずつ。氷、炭酸水、スポーツ飲料)、⑤起床時(急に起き上がらない)、⑥食後すぐに横にならない、⑦休息と睡眠、⑧気分転換、⑨鉄剤が嘔気を誘発する場合は医師に相談する、⑩ビタミンB6が有効とされることがある。妊娠悪阻=つわりが重症化したもの。①体重が妊娠前より5%以上減少、②脱水(尿量の減少、口渇、皮膚の乾燥)、③尿ケトン体の陽性、④電解質の異常、⑤日常生活が営めない。治療は輸液になる。この際、必ずビタミンB1を補充する(糖を含む輸液のみを投与すると、ビタミンB1が消費され、ウェルニッケ脳症を発症しうる。眼球運動の障害、失調性歩行、意識障害。母児ともに重大な結果を招く)。看護=①症状の程度と、生活への影響を聴く、②体重、尿ケトン体、そして水分の摂取量を確認する、③工夫を具体的に伝える、④「みんな通る道」と軽く扱わない(つらさは個人差が大きく、また周囲に理解されにくい)、⑤仕事との両立(母性健康管理指導事項連絡カードにより、事業主へ措置を求められる)、⑥家族への説明と協力、⑦受診の目安を伝える(水分も摂れない、尿が出ない、体重が減る、立ち上がれない)。
間違えやすい考え方
指導を問う型で、誤肢が塩分・形式・手段の制限である。空腹を避けるという一点で切る。
5分で振り返る
①つわりの嘔気は空腹時に強まる。胃酸の刺激と血糖の低下による。②工夫=少量頻回、枕元に食べ物を置き起床前に少し口にする、一度に多く食べない。③「規則正しく3食」にこだわらず、空腹の時間を作らない。④塩分の過剰は妊娠高血圧症候群と浮腫の面から望ましくない。⑤つわりの時期はにおいで嘔気が誘発されるため、市販の食品と家族の調理を活用してよい。ただし加熱していない食品は避ける。生ハムとナチュラルチーズはリステリア、生肉はトキソプラズマや腸管出血性大腸菌、生卵はサルモネラが主な対象になる。⑥時期=5〜6週に始まり、8〜11週に最も強く、12〜16週までに軽快する。⑦妊娠悪阻=体重が5%以上減少、脱水、尿ケトン体陽性、電解質異常。輸液の際は必ずビタミンB1を補充する(ウェルニッケ脳症の予防)。⑧「みんな通る道」と軽く扱わない。
1分チェック
- つわりの時期は。→ 空腹を避ける(少量頻回、食べられるものを)。
この問題に対応する教材の確認中です。