次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(19歳、男性)は、幼い頃から忘れ物や遅刻が多く、落ち着いて授業を受けることが難しかった。学校からは精神科の受診を勧められていたが、受診することなく高校まで卒業した。卒業後は事務職として働きはじめたが、仕事上のトラブルで上司や同僚から叱責を受けたことをきっかけに、仕事を無断で休むことが多くなった。産業医から精神科外来を紹介され、両親とともに受診した。本人の診察と両親からの生育歴の聴取が行われ、注意欠如・多動性障害〈ADHD〉attention-deficit/hyperactivitydisorderと診断された。
職場でA さんにみられる可能性が高い行動はどれか。
公式正答:3
解説
注意欠如・多動性障害と診断された19歳男性について、職場でみられる可能性が高い行動を問う。集中して仕事をすることができないである。
この問題で問われていること
この障害の中核となる特徴を挙げられるか。
しくみから理解する
注意欠如・多動性障害の中核となる特徴は、①不注意(集中が続かない、細部を見落とす、指示を最後まで聞けない、忘れ物と紛失が多い、順序立てて行うことが難しい、気が散りやすい、約束と締め切りを守れない)、②多動性(じっとしていられない、そわそわする、しゃべりすぎる)、③衝動性(順番を待てない、思いついたまま行動する、話をさえぎる)になる。この患者は、幼い頃から忘れ物と遅刻が多く、落ち着いて授業を受けることが難しかったと記されており、これらに合致する。職場では、集中が続かず、仕事を最後まで進められない、といった困難として現れる。
選択肢ごとの確認
仕事中に突然意識を失って倒れることは、てんかんの発作、失神、そして不整脈などを示すもので、この障害の特徴ではない。
退勤時に戸締りの確認を繰り返すことは、強迫症の特徴になる。不合理と分かっていても、確認せずにいられない強い衝動(強迫行為)が生じる。
状況にふさわしくない単語の発声を繰り返すことは、チック症(とくにトゥレット症候群における音声チック)の特徴になる。なお、注意欠如・多動性障害とチック症は併存することがある。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも別の疾患の特徴になる。発達障害を、それぞれの中核となる特徴で整理する。①注意欠如・多動性障害=不注意、多動性、衝動性、②自閉スペクトラム症=社会的なコミュニケーションと対人的な相互反応の困難、そして限定された反復的な行動・興味(こだわり、感覚の過敏または鈍麻)、③限局性学習症=読み、書き、算数のうち特定の領域の困難、④知的発達症=知的機能と適応機能の全般的な制約。
理解を深める
注意欠如・多動性障害を整理する。特徴=上記の3つ。診断には、①12歳になる前から症状があること、②2つ以上の場面(家庭、学校、職場など)で現れること、③社会的、学業的、職業的な機能を損なっていること、が必要になる。成人での現れ方=多動性は目立たなくなることが多い一方、不注意と衝動性は残りやすい。①仕事の管理(優先順位、締め切り、書類の整理)、②時間の管理(遅刻、予定の重複)、③忘れ物と紛失、④話を最後まで聞けない、⑤衝動的な発言と行動、⑥感情の調整の困難、⑦落ち着かなさ(内的な焦燥感として感じられる)。二次的な問題=叱責と失敗の積み重ねにより、①自己評価の低下、②抑うつと不安、③対人関係の困難、④仕事の継続の困難、⑤依存(アルコール、薬物、賭博)が生じうる。この事例でも、叱責をきっかけに欠勤が増えている。したがって、診断がついたことは、本人が自分を理解し、対処を学ぶ出発点になる。支援=①本人への説明(本人の努力不足ではなく、脳の働きの特性であること)、②環境の調整(気が散るものを減らす、静かな場所、区切られた空間)、③仕事の工夫(一度に一つ、手順を書き出す、締め切りを分割する、視覚的な手がかり、アラームとリマインダー、定期的な確認の機会、そして得意な業務を活かす配置)、④薬物療法(中枢神経刺激薬など。効果と副作用の観察)、⑤心理社会的な治療(心理教育、認知行動療法、そしてソーシャルスキルの訓練)、⑥職場への説明(本人の同意を得て、必要な範囲で。合理的配慮の提供)、⑦制度(精神障害者保健福祉手帳、障害者雇用、就労移行支援、職場適応援助者)、⑧家族への支援。看護の視点=「できない人」ではなく、「特定の場面で困難が生じる人」として捉え、その人の強みを活かせる条件を一緒に探すことになる。
間違えやすい考え方
特徴を問う型で、誤肢が他の疾患の特徴である。不注意・多動性・衝動性の3つで切る。
5分で振り返る
①注意欠如・多動性障害の中核=不注意(集中が続かない、忘れ物、順序立てが難しい)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(順番を待てない、思いついたまま行動する)。②診断には、12歳になる前からの症状、2つ以上の場面での出現、そして機能の障害が必要。③成人では多動性が目立たなくなり、不注意と衝動性が残りやすい。④意識を失って倒れるのはてんかんと失神、確認を繰り返すのは強迫症、状況にふさわしくない発声はチック症(音声チック)の特徴。⑤二次的な問題=叱責と失敗の積み重ねによる自己評価の低下、抑うつと不安、対人関係の困難、依存。⑥支援=本人への説明(努力不足ではなく特性)、環境の調整、仕事の工夫(一度に一つ、手順を書き出す、アラーム)、薬物療法、心理社会的な治療、職場への説明と合理的配慮。⑦「できない人」ではなく「特定の場面で困難が生じる人」として捉える。
1分チェック
- 注意欠如・多動性障害の中核は。→ 不注意、多動性、衝動性。
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