次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(19歳、男性)は、幼い頃から忘れ物や遅刻が多く、落ち着いて授業を受けることが難しかった。学校からは精神科の受診を勧められていたが、受診することなく高校まで卒業した。卒業後は事務職として働きはじめたが、仕事上のトラブルで上司や同僚から叱責を受けたことをきっかけに、仕事を無断で休むことが多くなった。産業医から精神科外来を紹介され、両親とともに受診した。本人の診察と両親からの生育歴の聴取が行われ、注意欠如・多動性障害〈ADHD〉attention-deficit/hyperactivitydisorderと診断された。
診察後、A さんの両親は「親としてどうしたら良かったのでしょうか、私たちの 育て方に問題があったのでしょうか」と外来看護師に話した。 このときのA さんの両親への対応として適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
「私たちの育て方に問題があったのでしょうか」と話す両親への対応を問う。「ご両親の育て方が原因ではないと思いますよ」である。
この問題で問われていること
親の罪責感に、事実にもとづいて応えられるか。
しくみから理解する
注意欠如・多動性障害は、脳の機能の偏りにもとづく発達の特性であり、育て方によって生じるものではない。遺伝的な要因の関与が大きいことが示されている。両親は、長年にわたり「育て方が悪かったのでは」という思いを抱えてきた可能性が高い。したがって、この問いに対して、事実にもとづいて「育て方が原因ではない」と明確に伝えることが、罪責感を和らげ、今後の支援へ向かう出発点になる。曖昧にしたり、話をそらしたりすれば、罪責感は残り続ける。
選択肢ごとの確認
「Aさんは育てにくいお子さんでしたね」は適切でない。労をねぎらう意図があったとしても、①子どもを否定的に評価する言葉であり、②両親の苦労を「子どものせい」に帰することになる。加えて、両親の問いに答えていない。
「職場の環境が悪かったことが原因です」も適切でない。①事実として断定できない、②幼い頃からの特性であり、職場が原因ではない、③原因を外へ求めることは、本人の理解と対処につながらない。
「もっと早くAさんの問題に気が付けばよかったですね」も適切でない。両親を責める言葉であり、罪責感をさらに強める。過去は変えられず、いま伝えるべきは、これから何ができるかになる。加えて、学校からは受診を勧められていたという経緯があり、この言葉はその点を責めることにもなる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①子どもを否定する、②原因を外へ帰する、③親を責める、の3つになる。家族への対応の原則は、①事実にもとづいて伝える、②責めない、③これまでの労をねぎらう、④これから何ができるかを一緒に考える、になる。加えて、「育て方のせいではない」と伝えることは、単なる慰めではなく、医学的な事実の説明になる点が重要になる。
理解を深める
発達障害のある人の家族への支援を整理する。親が抱えるもの=①罪責感(「育て方が悪かった」「もっと早く気づけば」)、②周囲からの非難(「しつけができていない」という目)、③孤立、④先の見えなさ、⑤きょうだいへの配慮、⑥経済的な負担、⑦本人との関係の難しさ、⑧自分自身も同様の特性を持つ場合の困難。支援=①事実の説明(脳の機能の特性であり、育て方によるものではない。ただし、関わり方によって本人の困難は軽くも重くもなる)、②これまでの努力を認める、③本人の特性を理解できるよう支える(何が難しく、何が得意か)、④具体的な関わり方を伝える(指示は一つずつ、短く、視覚的に。できたことを認める。叱責より肯定的な関わり)、⑤ペアレントトレーニング(親が、子どもへの関わり方を学ぶプログラム)、⑥家族会と、同じ経験を持つ親とのつながり、⑦制度と資源(発達障害者支援センター、相談支援事業所、精神障害者保健福祉手帳、障害福祉サービス、就労支援)、⑧きょうだいへの配慮。成人期に診断された場合=①長年の困難の理由が分かることで、本人と家族の両方が楽になることがある、②一方で、「もっと早く分かっていれば」という思いも生じる、③これまでの失敗の積み重ねによる自己評価の低下への支援が必要になる、④本人が自分の特性を理解し、対処の方法を身につけることが、支援の中心になる。発達障害者支援法=①発達障害の定義(自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するもの)、②早期発見と発達支援、③国と地方公共団体の責務、④発達障害者支援センターの設置、⑤教育、就労、地域生活の支援。
間違えやすい考え方
対応を問う型で、誤肢が子どもを否定・原因を外へ・親を責めるものである。事実にもとづいて罪責感に応えて切る。
5分で振り返る
①注意欠如・多動性障害は、脳の機能の偏りにもとづく発達の特性であり、育て方によって生じるものではない。遺伝的な要因の関与が大きい。②両親は長年「育て方が悪かったのでは」と抱えてきた可能性が高い。事実にもとづいて明確に伝えることが、罪責感を和らげる出発点になる。③「育てにくいお子さんでしたね」は、子どもを否定的に評価し、苦労を子どものせいに帰する。④「職場が原因」は事実として断定できず、幼い頃からの特性でもある。⑤「もっと早く気づけば」は両親を責め、罪責感を強める。⑥家族への支援=事実の説明、これまでの労をねぎらう、特性の理解、具体的な関わり方、ペアレントトレーニング、家族会、制度と資源。⑦成人期の診断は、長年の困難の理由が分かることで本人と家族が楽になることがある。
1分チェック
- 「育て方が悪かったのか」には。→ 「育て方が原因ではない」と事実にもとづいて伝える。
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