次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(19歳、男性)は、幼い頃から忘れ物や遅刻が多く、落ち着いて授業を受けることが難しかった。学校からは精神科の受診を勧められていたが、受診することなく高校まで卒業した。卒業後は事務職として働きはじめたが、仕事上のトラブルで上司や同僚から叱責を受けたことをきっかけに、仕事を無断で休むことが多くなった。産業医から精神科外来を紹介され、両親とともに受診した。本人の診察と両親からの生育歴の聴取が行われ、注意欠如・多動性障害〈ADHD〉attention-deficit/hyperactivitydisorderと診断された。
A さんは予約した受診日を忘れてしまい、受診できないことが度々あった。A さんは、これまで忘れないための工夫を何もしてこなかったと外来看護師に話し た。 A さんへの対応で最も適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
予約した受診日を忘れて受診できないことが度々あり、これまで工夫を何もしてこなかったと話す患者への対応を問う。「今予約した次回の受診日をこの場で予定表に書き込みましょう」である。
この問題で問われていること
特性に合わせた、具体的で実行可能な対処を選べるか。
しくみから理解する
注意欠如・多動性障害では、①覚えておくこと(作業記憶)、②後で行う予定を思い出すこと(展望的記憶)が苦手になる。したがって、「覚えておく」ことに頼らず、外部の仕組みへ書き出すことが有効な対処になる。加えて、「後で書いておこう」と思っても、その「後」を忘れるため、その場で書き込むことが要点になる。看護師が一緒に、その場で予定表へ記入することは、①具体的で、②すぐに実行でき、③成功の体験になり、④以後、自分で続けられる方法を身につける出発点になる。
選択肢ごとの確認
「ご家族に予定を管理してもらいましょう」は適切でない。①19歳という年齢で、自分で管理する力を育てる機会を奪う、②家族に依存する構造を作る、③本人の自尊心を損なう、という問題がある。家族の協力は、本人が自分で対処する方法を身につけたうえで、必要な範囲で得るものになる。
「忘れてしまった理由を考えてみましょう」も適切でない。理由は既に明らかであり(特性による)、加えて、原因を考えさせることは、自責を強める。長年、「なぜできないのか」と問われ続けてきた可能性が高い。
「予定を忘れたことで生じる不利益を整理してみましょう」も適切でない。不利益は本人が最もよく分かっている。改めて整理させることは、失敗を再確認させ、自己評価をさらに下げる。必要なのは、反省ではなく、具体的な方法になる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①他者に任せる、②原因を考えさせる、③反省させる、の3つになる。この障害への支援の原則は、「意志と努力で補わせるのではなく、仕組みで補う」ことになる。「気をつけましょう」「忘れないようにしましょう」という助言は、本人が既に何度も試みて失敗してきたことであり、支援にならない。
理解を深める
注意欠如・多動性障害への具体的な対処を整理する。予定と時間の管理=①その場で書く(手帳、スマートフォンの予定表)、②アラームとリマインダーを設定する(複数回。前日と当日)、③予定を一元化する(複数の場所に書かない)、④見える場所に貼る(玄関、冷蔵庫)、⑤家族と共有する(管理を任せるのではなく、共有する)、⑥余裕を持った予定にする。物の管理=①置き場所を決める(鍵、財布、スマートフォン)、②持ち物を減らす、③帰宅時に必ず定位置へ置く習慣を作る、④紛失防止のタグ。仕事と課題=①一度に一つ、②手順を書き出す、③大きな課題を分割する、④締め切りを前倒しに設定する、⑤時間を計って作業する、⑥定期的に確認する機会を作る、⑦集中できる環境(音、視界、通知を減らす)。衝動性への対処=①一呼吸おく、②返信を保留する、③重要な決断は日を改める。生活=①睡眠を整える(睡眠の不足は症状を悪化させる)、②運動、③食事の時間。支援の姿勢=①本人ができない部分を仕組みで補う、②できたことを具体的に認める、③失敗しても責めない、④方法は一つずつ導入する(一度に多くを求めない)、⑤本人に合う方法を一緒に探す(人により合う方法は異なる)、⑥続けられているかを一緒に確認する。この患者は「これまで何も工夫してこなかった」と述べており、方法を知らなかっただけの可能性が高い。工夫の存在を知り、一つ実行できることが、大きな変化の始まりになる。
間違えやすい考え方
対応を問う型で、誤肢が他者に任せる・原因を考えさせる・反省させるものである。仕組みで補うという原則で切る。
5分で振り返る
①注意欠如・多動性障害では、覚えておくこと(作業記憶)と、後で行う予定を思い出すこと(展望的記憶)が苦手になる。②「覚えておく」ことに頼らず、外部の仕組みへ書き出す。③「後で書こう」と思うとその「後」を忘れるため、その場で書き込むことが要点。④その場で一緒に記入することは、具体的で、すぐ実行でき、成功の体験になる。⑤家族に管理を任せることは、自分で管理する力を育てる機会を奪い、依存の構造を作る。⑥理由を考えさせることと、不利益を整理させることは、自責を強め自己評価を下げる。必要なのは反省ではなく具体的な方法。⑦支援の原則=意志と努力で補わせるのではなく、仕組みで補う。⑧方法は一つずつ導入し、できたことを具体的に認める。
1分チェック
- 予約を忘れてしまうなら。→ その場で予定表に書き込む。
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