次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(78歳、男性)は、妻(70歳)と2人暮らしである。脳血管障害後遺症による右片麻痺があり、車椅子への移乗は部分介助、要介護2である。排泄はポータブルトイレを利用している。Aさんと妻はなるべく家で過ごしたいと考え、自宅での介護はすべて妻が行っている。長女(会社員)が県内に在住しているがAさんの介護はしていない。訪問看護を週1回利用するのみで、他のサービスは利用していない。最近、妻の腰痛が悪化し、妻から訪問看護師に「主治医から介護の負担を軽減するように言われました。でも夫は家から出たくないし、私も夫をどこかに預けるのは不安です。どうしたらよいでしょうか」と相談があった。
このときの訪問看護師が提案するA さんへのサービスで最も適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
妻の腰痛が悪化し、介護の負担を軽減するよう言われたが、夫は家から出たくないし、預けるのも不安だと相談した妻へ提案するサービスを問う。訪問介護である。
この問題で問われていること
本人と家族の意向を両方満たすサービスを選べるか。
しくみから理解する
この場面には、①妻の身体的な負担を減らす必要がある、②夫は家から出たくない、③妻も預けることに不安がある、という3つの条件がある。訪問介護は、自宅へ訪問して、身体介護(移乗、排泄、清潔、食事)と生活援助(調理、掃除、洗濯、買い物)を提供するため、①外へ出る必要がなく、②預けることにもならず、③妻が担っている介護を実際に肩代わりできる。したがって、3つの条件をすべて満たす。
選択肢ごとの確認
通所介護は、施設へ通うサービスになる。夫は家から出たくないと述べており、この時点では受け入れが難しい。将来的な選択肢にはなるが、いま提案するものではない。
短期入所生活介護も、施設へ宿泊するサービスになる。妻の休息としては有効だが、夫が外へ出たくないこと、妻も預けることに不安があることから、この時点では合わない。
訪問リハビリテーションは、自宅で機能の維持と向上を図るものになる。有用ではあるが、妻が担っている日々の介護(移乗、排泄)を直接肩代わりするものではないため、負担の軽減という目的には直接応えない。
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混同しやすいポイント
サービスを選ぶときは、①解決すべき課題(妻の身体的負担)、②本人の意向(家から出たくない)、③家族の意向(預けるのは不安)、の3つを照合する。誤肢のうち、①と③は外へ出るもの、④は目的が異なるものになる。加えて、この場面では、まず受け入れられるサービスから始め、関係ができてから他のサービスへ広げていくという段階的な進め方が重要になる。最初から本人が拒むサービスを勧めれば、サービスそのものへの拒否につながる。
理解を深める
在宅の介護負担を整理する。介護者の負担=①身体的(移乗、排泄、入浴の介助による腰痛。夜間の対応による睡眠不足)、②精神的(先の見えなさ、24時間の拘束、社会からの孤立、本人との関係の変化)、③社会的(仕事、外出、人づきあいの制限)、④経済的。この事例では、①妻が70歳と高齢である(老老介護)、②すべての介護を一人で担っている、③訪問看護の週1回以外にサービスを使っていない、④長女は介護に関わっていない、⑤既に腰痛が悪化している、という点が重なっており、介護の破綻が近い状態にある。介入の順序=①現状を具体的に把握する(1日の流れ、何が最も負担か、どの場面で腰に負担がかかるか、夜間の対応の有無、妻自身の健康と受診)、②妻の思いを聴く(「預けるのは不安」の背景に、罪責感、夫への思い、周囲の目、そして施設への不信があることが多い)、③受け入れられるものから始める(訪問系)、④介護技術の指導(腰に負担のかからない移乗の方法、福祉用具の活用)、⑤福祉用具(介護用ベッド、手すり、スライディングボード、リフト)、⑥住環境の調整、⑦長女を含めた家族の役割の調整、⑧妻自身の受診と休息、⑨介護支援専門員との連携(計画の見直し)、⑩将来に向けた話し合い(今後、状態が変わったときにどうするか)。移乗の介助=介護者の腰痛は、①前かがみの姿勢、②持ち上げる動作、③ひねる動作、により生じる。対策=①ベッドの高さを調整する、②本人に近づく、③足を広げて支持基底面を広くする、④膝を曲げて腰を落とす、⑤持ち上げず、水平に滑らせる、⑥福祉用具を使う、⑦本人の力を活かす、⑧無理をしない。
間違えやすい考え方
サービスを選ぶ型で、誤肢が外へ出るものと目的が異なるものである。本人と家族の意向の両方を満たすかで切る。
5分で振り返る
①この場面の3条件=妻の身体的負担を減らす、夫は家から出たくない、妻も預けることに不安がある。②訪問介護は、自宅で身体介護と生活援助を提供するため、外へ出る必要も預ける必要もなく、妻の介護を実際に肩代わりできる。③通所介護と短期入所は施設へ出るサービスで、この時点では受け入れが難しい。④訪問リハビリテーションは機能の維持と向上が目的で、日々の介護を肩代わりするものではない。⑤最初から本人が拒むサービスを勧めると、サービスそのものへの拒否につながる。受け入れられるものから始める。⑥この事例は、老老介護、一人で全介護、サービスの利用が乏しい、長女が関わらない、腰痛の悪化と、破綻が近い状態にある。⑦介護者の腰痛は、前かがみ・持ち上げる・ひねる動作で生じる。ベッドの高さ、本人に近づく、持ち上げず滑らせる、福祉用具の活用で防ぐ。
1分チェック
- 家から出たくない、預けるのも不安なら。→ 訪問介護(自宅で介護を肩代わりする)。
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