次の文を読み、問いに答えよ。A市に住むBさん(40歳、経産婦)は、妊娠20週0日である。夫(42歳、会社員)、長女のCちゃん(5歳)の3人暮らし。朝食を終えた午前8時、大規模災害が発生し、夫は倒壊した家屋に両下肢が挟まれ身動きがとれなくなった。一緒にいたBさんとCちゃんは無事だったが、慌てるBさんのそばでCちゃんは泣きながら座りこんでいた。午前10時、夫は救助隊に救出されたが、下肢の感覚はなくなっていた。病院に搬送された夫は、その日のうちに入院となった。
搬送直後の夫の血液検査データで、高値が予想されるのはどれか。2つ選べ。
公式正答:1・5
解説
倒壊した家屋に両下肢が2時間挟まれ、救出後に下肢の感覚がなくなっていた42歳男性について、搬送直後の血液検査で高値が予想されるものを2つ問う。カリウムとクレアチンキナーゼである。
この問題で問われていること
圧挫による筋の壊死が、血液に何をもたらすかを説明できるか。
しくみから理解する
長時間の圧迫により、筋が虚血に陥り壊死する(横紋筋融解)。救出により圧迫が解除されると、壊死した筋細胞の内容物が一気に全身の循環へ流れ込む。細胞内には、①カリウム、②ミオグロビン、③クレアチンキナーゼ、④リン、⑤乳酸が豊富に含まれるため、これらが血中で高値になる。とくに高カリウム血症は、致死的な不整脈(心室細動、心停止)を直ちに引き起こしうるため、最も警戒すべきものになる。クレアチンキナーゼは、筋の傷害の程度を示す指標として上昇する。
選択肢ごとの確認
カルシウムは低値になる。壊死した筋に、カルシウムが流入して沈着するためになる。加えて、高リン血症もカルシウムの低下に寄与する。したがって、低カルシウム血症になる。
ヘモグロビンは高値にならない。出血と、血管透過性の亢進による血漿の漏出があれば、脱水による濃縮で見かけ上上がることはあるが、この病態で「高値が予想される」ものではない。むしろ、出血があれば低下する。
総コレステロールも、この病態で高値になるものではない。
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混同しやすいポイント
細胞の中に何があるかを考えれば、すべて導ける。細胞内液に多いもの=カリウム、マグネシウム、リン、そしてタンパク(酵素を含む)。細胞外液に多いもの=ナトリウム、塩素、カルシウム、重炭酸。したがって、細胞が壊れれば、①カリウム、②リン、③酵素(クレアチンキナーゼ、乳酸脱水素酵素)、④ミオグロビンが血中へ出て、⑤カルシウムは壊死した筋へ移って低下する。誤肢は、この理屈から外れる。
理解を深める
クラッシュ症候群を整理する。別名=挫滅症候群。長時間の圧迫により筋が壊死し、圧迫の解除後に、その内容物が全身へ流れ込むことで生じる。震災で多く発生し、阪神・淡路大震災では多数の死亡例が報告された。病態と危険=①高カリウム血症=救出直後から致死的な不整脈を起こす。心電図でテント状T波、QRS幅の拡大、そして心室細動へ至る。②ミオグロビン尿による急性腎障害=ミオグロビンが尿細管を閉塞し、腎を障害する。尿は赤褐色(ミオグロビン尿)になる。③循環血漿量の減少=損傷した筋へ大量の水分が移動し、ショックに至る。④代謝性アシドーシス、⑤播種性血管内凝固症候群、⑥コンパートメント症候群。対応=①救出の前から輸液を開始する(可能であれば。圧迫解除の前に循環血漿量を確保しておくことが、その後の経過を大きく左右する)、②大量の輸液(生理食塩液。尿量を確保してミオグロビンを洗い流す)、③心電図の監視と、高カリウム血症への対応(グルコン酸カルシウム、インスリンとブドウ糖、重炭酸ナトリウム、陽イオン交換樹脂)、④尿量の維持(時間尿を確保する)、⑤血液浄化(血液透析。高カリウム血症と急性腎障害に対して)、⑥筋膜切開(コンパートメント症候群に対して)、⑦全身の管理。災害現場での注意=①救出された直後は元気に見えることがある(「歩けます」と言うこともある)。しかし、圧迫解除の後に急変するため、②2時間以上の圧迫があれば疑い、③現場から医療機関へ搬送し、④救出の前から輸液を始める、⑤搬送先へ、圧迫の部位と時間を必ず伝える。この「見た目は元気だが危険」という点が、クラッシュ症候群の最も重要な特徴になる。加えて、この事例では下肢の感覚が失われており、神経の障害も生じている。
間違えやすい考え方
検査値を問う型で、誤肢が低下するものと関係のないものである。細胞の中身が出るという一点で切る。
5分で振り返る
①長時間の圧迫で筋が壊死し(横紋筋融解)、圧迫の解除により細胞の内容物が一気に循環へ流れ込む。②細胞内に多いカリウム、リン、クレアチンキナーゼ、ミオグロビンが血中で高値になる。③カルシウムは壊死した筋へ流入して沈着するため低値になる。④高カリウム血症は、救出直後から致死的な不整脈(心室細動、心停止)を起こす。⑤ミオグロビンは尿細管を閉塞し急性腎障害を招く。尿は赤褐色になる。⑥対応=救出の前から輸液を開始する、大量の輸液で尿量を確保する、心電図の監視、高カリウム血症への対応、血液浄化。⑦救出直後は元気に見えることがあり、その後に急変する。2時間以上の圧迫があれば疑う。⑧搬送先へ、圧迫の部位と時間を必ず伝える。
1分チェック
- クラッシュ症候群では。→ カリウムとクレアチンキナーゼが高値(カルシウムは低値)。
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