次の文を読み、問いに答えよ。A市に住むBさん(40歳、経産婦)は、妊娠20週0日である。夫(42歳、会社員)、長女のCちゃん(5歳)の3人暮らし。朝食を終えた午前8時、大規模災害が発生し、夫は倒壊した家屋に両下肢が挟まれ身動きがとれなくなった。一緒にいたBさんとCちゃんは無事だったが、慌てるBさんのそばでCちゃんは泣きながら座りこんでいた。午前10時、夫は救助隊に救出されたが、下肢の感覚はなくなっていた。病院に搬送された夫は、その日のうちに入院となった。
被災当日にB さんはC ちゃんとともに避難所に入所した。被災後1日、B さん は巡回してきた看護師に「今妊娠20 週目ですが、おなかが張ることがあります」と 話した。 看護師が確認する項目で優先度が高いのはどれか。
公式正答:3
解説
被災の翌日、避難所で「今妊娠20週目ですが、おなかが張ることがあります」と話した40歳経産婦について、看護師が確認する項目で優先度が高いものを問う。性器出血の有無である。
この問題で問われていること
腹部の張りが何を示しうるかを判断できるか。
しくみから理解する
妊娠20週での腹部の張り(子宮収縮)は、切迫流産の徴候になりうる。日本では流産が妊娠22週未満、早産が22週以降37週未満と定められており、20週0日の時点で当てはまるのは切迫流産であって、切迫早産はまだ成立しない。加えて、災害という強いストレス、疲労、睡眠不足、脱水、そして寒さは、いずれも子宮収縮を誘発する。切迫流産と切迫早産では、腹部の張りとともに性器出血が現れることがあり、出血の有無は、緊急度を判断する最も重要な所見になる。したがって、これを最優先で確認する。加えて、破水の有無も併せて確認する。
選択肢ごとの確認
下肢の浮腫の程度も、避難所生活では確認すべき項目になる(長時間の同一姿勢、水分の制限、そして深部静脈血栓症の危険)。ただし、腹部の張りという訴えに対しては、優先度が下がる。
食事の摂取状況も、避難所では重要になる(栄養の偏り、鉄と葉酸の不足、そして体重)。ただし、この訴えへの対応としては優先されない。
排泄状況も確認すべき項目になる(トイレを控えることによる水分の制限、便秘、そして尿路感染)。ただし、同様に優先度が下がる。
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混同しやすいポイント
訴えに対して、「最も重い結果を招きうるもの」から確認する。腹部の張り→子宮収縮→切迫流産・早産→児の喪失、という流れを考えれば、性器出血の確認が最優先になる。誤肢は、いずれも避難所生活で確認すべき項目だが、この訴えへの応答としては優先度が下がる。加えて、確認の後は、①安静のとれる場所の確保、②医療機関への受診の調整、③水分と栄養、④保温、⑤休息、へつなぐ。
理解を深める
災害時の妊産婦への支援を整理する。危険=①流産と早産(ストレス、疲労、脱水、寒さ、感染、そして外傷)、②妊娠高血圧症候群(ストレス、塩分の多い食事、睡眠不足)、③深部静脈血栓症(妊娠自体が凝固しやすい状態にあり、加えて避難所での不動と水分の制限が重なる)、④感染(衛生の悪化、トイレの制限)、⑤栄養の偏り(保存食は炭水化物と塩分に偏り、タンパク質、鉄、葉酸、カルシウム、そしてビタミンが不足する)、⑥受診の中断(妊婦健康診査、そして分娩の予定の医療機関の被災)、⑦心理的な負担(自分と胎児の安全への不安、上の子の世話、そして家族の状況)。支援=①妊婦であることを周囲と支援者が把握できるようにする(マタニティマーク、そして避難所の名簿)、②横になれる場所と、プライバシーの確保、③トイレへの近さと、清潔なトイレ、④水分を控えないよう伝える、⑤栄養の補充(たんぱく質、鉄、葉酸)、⑥保温、⑦体を動かす機会(血栓の予防。足関節の運動、こまめに立つ)、⑧受診と、母子健康手帳の確認(手帳は、これまでの経過を伝える唯一の記録になることがある)、⑨分娩の場所の確保と情報、⑩授乳への支援(母乳育児の継続。ストレスによる一時的な分泌の低下があっても、頻回の授乳で回復すること、そして人工乳が必要な場合の衛生的な調乳の方法)、⑪上の子への配慮、⑫福祉避難所の利用。福祉避難所=高齢者、障害のある人、妊産婦、乳幼児、病弱者など、一般の避難所での生活が困難な人を受け入れる避難所になる。市町村が指定し、必要に応じて開設する。この事例のように、妊婦と幼い子どもがいる場合、移動が検討される。妊娠20週=流産(22週未満)と早産(22週以降)の境目に近い時期になる。この時期の児は、生存が極めて困難であり、切迫流産への対応は特に慎重を要する。
間違えやすい考え方
優先度を問う型で、誤肢が避難所生活で確認すべき別の項目である。最も重い結果を招きうるもので切る。
5分で振り返る
①妊娠20週の腹部の張り(子宮収縮)は、切迫流産の徴候になりうる。流産は妊娠22週未満、早産は22週以降37週未満なので、20週0日では切迫早産はまだ成立しない。②災害によるストレス、疲労、睡眠不足、脱水、寒さは、いずれも子宮収縮を誘発する。③性器出血の有無は緊急度を判断する最も重要な所見。破水の有無も併せて確認する。④下肢の浮腫、食事、排泄も避難所で確認すべき項目だが、この訴えへの応答としては優先度が下がる。⑤妊娠20週は、流産(22週未満)と早産(22週以降)の境目に近く、この時期の児は生存が極めて困難。⑥災害時の妊産婦の危険=流産と早産、妊娠高血圧症候群、深部静脈血栓症、感染、栄養の偏り、受診の中断、心理的負担。⑦支援=横になれる場所、トイレへの近さ、水分を控えないこと、栄養の補充、保温、体を動かす機会、母子健康手帳の確認。⑧福祉避難所は、一般の避難所での生活が困難な人を受け入れる。
1分チェック
- 妊娠20週で腹部が張るなら。→ まず性器出血の有無を確認する。
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