妊娠初期の感染で児に難聴が生じる可能性が高いのはどれか。
公式正答:2
解説
妊娠初期の感染で児に難聴が生じる可能性が高いものを問う。風疹である。
この問題で問われていること
母体の感染が胎児に及ぼす影響を、疾患ごとに区別できるか。
しくみから理解する
妊娠初期(とくに妊娠20週頃まで、なかでも12週未満)に母体が風疹に初感染すると、ウイルスが胎盤を通過して胎児に感染し、先天性風疹症候群を生じることがある。三徴は、①感音難聴、②白内障、③心疾患(動脈管開存症、肺動脈狭窄)になる。加えて、網膜症、小頭症、発達の遅れ、そして血小板減少と紫斑が現れることがある。感染の時期が早いほど、影響が重くなる。
選択肢ごとの確認
水痘は、①妊娠20週未満の感染で先天性水痘症候群(皮膚の瘢痕、四肢の低形成、眼と神経の異常)、②分娩前後の感染で新生児水痘(重症化しうる)を生じるが、難聴が主な症状ではない。
麻疹は、妊婦が罹患すると重症化しやすく、流産と早産の危険が高まるが、先天奇形との関連は明らかでない。
流行性耳下腺炎は、後天的な感染により難聴(ムンプス難聴。片側性で高度なことが多い)を生じることで知られるが、先天性の難聴の原因としては、風疹ほど問題にならない。妊娠初期の感染で流産の危険が高まるという報告はある。
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混同しやすいポイント
母体の感染と胎児への影響を、代表的なものでまとめる。①風疹=先天性風疹症候群(難聴、白内障、心疾患)、②サイトメガロウイルス=難聴、小頭症、精神運動発達の遅れ、肝脾腫、石灰化(先天性感染で最も多い)、③トキソプラズマ=水頭症、脈絡網膜炎、脳内石灰化、④梅毒=先天梅毒(骨と歯の異常、鼻炎、皮疹、難聴、そして遅発性の症状)、⑤ヒトパルボウイルスB19=胎児水腫、流産、⑥単純ヘルペスウイルス=分娩時の感染による新生児ヘルペス、⑦水痘=先天性水痘症候群、⑧B型肝炎とヒト免疫不全ウイルス、そしてヒトT細胞白血病ウイルス=母子感染。誤肢は、いずれも妊婦にとって問題になる感染症だが、難聴を主とする先天異常の原因としては風疹になる。
理解を深める
風疹と母子感染を整理する。風疹=①症状=発熱、発疹、リンパ節腫脹(とくに後頸部と耳介後部)。不顕性感染が15〜30%あり、感染に気づかないことがある。②感染経路=飛沫感染。③予防=ワクチン(麻疹風疹混合ワクチン。生ワクチンのため妊娠中は接種できず、接種後2か月は避妊する)。④日本の状況=定期接種の制度が変遷したため、とくに1962年4月2日から1979年4月1日生まれの男性で抗体保有率が低く、この世代への追加的対策(抗体検査と予防接種)が行われている。⑤妊婦健康診査で風疹抗体価を測定する。抗体価が低い場合、①妊娠中は接種できないため、周囲の人(夫、同居家族)の接種を勧める、②出産後に接種する。妊娠中の感染対策=①手洗いとうがい、②人混みを避ける、③生肉と加熱不十分な肉を避け、猫の糞と土に触れない(トキソプラズマ)、④加熱していない乳製品と食肉加工品を避ける(リステリア)、⑤小児との接触に注意する(サイトメガロウイルス。手洗い、食器と食べ物の共有を避ける、子どものおむつの処理の後の手洗い)、⑥性感染症の予防、⑦ワクチン(不活化ワクチンは接種できる。インフルエンザと百日咳を含むもの)。妊娠前の準備(プレコンセプションケア)=①風疹の抗体の確認と接種、②葉酸の摂取、③持病の管理と薬剤の確認、④禁煙と節酒、⑤体重の管理、⑥性感染症の検査、⑦歯科の受診。感染が判明した場合=①正確な情報を提供する(感染の時期、児への影響の可能性、検査の方法)、②不安に応える、③選択を迫らず、共に考える、④専門の医療機関へつなぐ。
間違えやすい考え方
感染と影響を問う型で、誤肢が別の影響を及ぼす感染症である。先天性風疹症候群の三徴で切る。
5分で振り返る
①妊娠初期(とくに12週未満)の風疹の初感染により、先天性風疹症候群を生じる。②三徴=感音難聴、白内障、心疾患(動脈管開存症、肺動脈狭窄)。加えて網膜症、小頭症、発達の遅れ、血小板減少。③感染の時期が早いほど影響が重い。④風疹は不顕性感染が15〜30%あり、気づかないことがある。⑤ワクチンは生ワクチンのため妊娠中は接種できない。接種後2か月は避妊する。抗体価が低ければ、周囲の接種を勧め、出産後に接種する。⑥水痘は先天性水痘症候群(皮膚の瘢痕、四肢の低形成)、サイトメガロウイルスは難聴と小頭症、トキソプラズマは水頭症と脈絡網膜炎を生じる。⑦妊娠中は、生肉と土(トキソプラズマ)、加熱していない乳製品(リステリア)、小児との接触(サイトメガロウイルス)に注意する。
1分チェック
- 妊娠初期の感染で難聴を生じるのは。→ 風疹(難聴・白内障・心疾患の三徴)。
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