現在の日本の終末期医療において、患者の将来の自己決定能力の低下に備えて、 患者・家族と医療者が今後の治療・療養についての気がかりや価値観を定期的に話 し合って共有し、患者の意向に沿った医療を提供することが望ましいとされてい る。 この内容を示すのはどれか。
公式正答:3
解説
患者の将来の自己決定能力の低下に備えて、患者・家族と医療者が今後の治療・療養についての気がかりや価値観を定期的に話し合って共有し、患者の意向に沿った医療を提供することを示す語を問う。アドバンス・ケア・プランニングである。
この問題で問われていること
似た概念を、内容の違いで区別できるか。
しくみから理解する
アドバンス・ケア・プランニングは、将来の医療とケアについて、本人を中心に、家族等と医療・ケアチームが、繰り返し話し合う過程を指す。要点は、①一度で決めるものではなく、繰り返す、②文書に残すことより、話し合う過程そのものに意味がある、③本人の価値観と、大切にしていることを共有する、④本人が意思を表明できなくなったときに備え、代弁者を定めておく、⑤決めたことは変えてよい、になる。設問の記述は、この定義そのものになる。
選択肢ごとの確認
グリーフケアは、死別による悲嘆を経験する人への支援になる。死別の前(予期悲嘆)から、死別の後まで続く。将来の医療について話し合う過程ではない。
代理意思決定の支援は、本人が意思を表明できない場合に、家族等が本人に代わって(または本人の意思を推定して)決定することを支える関わりになる。アドバンス・ケア・プランニングは、そうなる前から準備しておく過程であり、時期と対象が異なる。
事前指示の支援は、本人が、将来の医療について、あらかじめ意思を文書等で示しておくことを支える関わりになる。①内容指示(何をしてほしいか、してほしくないか)と、②代理人指示(誰に決めてもらうか)がある。アドバンス・ケア・プランニングは、この文書の作成を含みうるが、それだけでなく、繰り返し話し合う過程全体を指すため、より広い概念になる。
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混同しやすいポイント
誤肢のうち、④が最も紛らわしい。「事前指示=文書として残す」、「アドバンス・ケア・プランニング=繰り返し話し合う過程」という違いを押さえる。事前指示だけを作っても、①作成時と状況が変われば意向も変わる、②文書の内容が、実際の場面で解釈できないことがある、③家族が知らなければ活かされない、という限界がある。だからこそ、話し合いの過程が重視されるようになった。
理解を深める
意思決定の支援を整理する。進め方=①元気なうちから始める(病状が悪化してから始めるのでは遅い)、②本人が何を大切にしているかを聴く(どう生きたいか、何が支えか、何を恐れているか、どこで過ごしたいか、誰にそばにいてほしいか)、③病状と見通しを、本人が受け止められる形で共有する、④選択肢と、それぞれの利益と負担を説明する、⑤代弁者を決める、⑥話し合った内容を記録し、関係者で共有する、⑦繰り返す(状態が変わったとき、生活が変わったとき、そして本人が望んだとき)、⑧決めたことは変えてよいと伝える。看護師の役割=①話し合いのきっかけを作る(日々の関わりの中で、本人が漏らす言葉を捉える)、②本人が話しやすい場と時間を整える、③本人の言葉を、そのまま医療チームへ伝える、④家族の思いも聴く(本人と家族の意向が異なることは多い)、⑤決断を迫らない(「決めなくてもよい」ことも伝える)、⑥選択肢を公平に示す、⑦記録する。難しさ=①話題を切り出しにくい(縁起でもない、と受け取られる不安)、②本人が知りたくない場合もある、③家族が「本人には知らせないでほしい」と望むことがある、④意向が揺れる、⑤時間がかかる。それでも、話し合いがあった場合、①本人の意向に沿った医療が提供されやすい、②家族の負担と後悔が減る、③医療者の迷いも減る、ことが示されている。人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン=①本人による意思決定を基本とする、②医療・ケアチームによる医学的妥当性の判断、③繰り返しの話し合い、④本人の意思が確認できない場合の手順(家族等による推定、それも困難なら最善の方針を話し合う)、⑤内容の文書化と共有、⑥積極的安楽死は対象としない。
間違えやすい考え方
概念を問う型で、誤肢が時期と対象の異なる支援である。繰り返し話し合う過程という点で切る。
5分で振り返る
①アドバンス・ケア・プランニングは、将来の医療とケアについて、本人を中心に、家族等と医療・ケアチームが繰り返し話し合う過程。②要点=一度で決めない、文書より過程に意味がある、価値観を共有する、代弁者を定める、決めたことは変えてよい。③グリーフケアは死別による悲嘆への支援。④代理意思決定の支援は、本人が意思を表明できない場合に家族等が決めることを支える関わり。⑤事前指示の支援は、あらかじめ意思を文書等で示すことを支える関わり(内容指示と代理人指示)。過程全体を指すアドバンス・ケア・プランニングより狭い。⑥事前指示だけでは、状況の変化、解釈の難しさ、家族が知らないという限界がある。⑦元気なうちから始め、状態が変わるたびに繰り返す。⑧話し合いがあると、本人の意向に沿った医療が提供され、家族の負担と後悔も減る。
1分チェック
- アドバンス・ケア・プランニングとは。→ 将来の医療について繰り返し話し合う過程。
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