A さん(34 歳、女性)は、気管支喘息〈bronchial asthma〉 で定期的に通院をしている。朝から喘息発作があり呼吸困難が生じたため、救急外来を受診した。 経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉95 %、動脈血液ガス分析(room air)で動脈血酸 素分圧〈PaO2〉90 Torr、動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉55 Torr、pH 7.30、HCO3 - 25 mEq/L であった。 A さんの状態で考えられるのはどれか。
公式正答:1
解説
気管支喘息の発作時に、動脈血酸素分圧90Torr、動脈血二酸化炭素分圧55Torr、pH7.30、重炭酸イオン25mEq/Lである患者の状態を問う。呼吸性アシドーシスである。
この問題で問われていること
血液ガスの値から、酸塩基平衡の異常を判定できるか。
しくみから理解する
判定の手順は、①pHを見る(7.35未満=アシドーシス、7.45を超える=アルカローシス)、②原因が呼吸か代謝かを見る(二酸化炭素分圧が動いていれば呼吸性、重炭酸イオンが動いていれば代謝性)、③代償の有無を見る、になる。この事例では、①pH7.30=アシドーシス、②二酸化炭素分圧55Torr(基準35〜45Torr)と上昇し、重炭酸イオン25mEq/L(基準22〜26mEq/L)は正常範囲、したがって原因は呼吸にあり、③慢性であれば腎の代償により重炭酸イオンがもっと上昇しているはずだが、そこに達していないため急性の変化と判断する。よって、呼吸性アシドーシスになる。
選択肢ごとの確認
呼吸性アルカローシスは、換気が過剰になり、二酸化炭素が排出されすぎた状態になる。pHは上昇し、二酸化炭素分圧は低下する。過換気症候群、疼痛、不安、発熱、そして初期の喘息発作でみられる。
代謝性アシドーシスは、酸が蓄積するか、重炭酸イオンが失われた状態になる。pHは低下し、重炭酸イオンも低下する。糖尿病性ケトアシドーシス、腎不全、乳酸アシドーシス、そして下痢でみられる。
代謝性アルカローシスは、酸が失われるか、重炭酸イオンが増えた状態になる。pHは上昇し、重炭酸イオンも上昇する。嘔吐、胃液の吸引、利尿薬、そして低カリウム血症でみられる。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
4つを、pHと、動いている値の組み合わせで判定する。①呼吸性アシドーシス=pH低下、二酸化炭素分圧上昇、②呼吸性アルカローシス=pH上昇、二酸化炭素分圧低下、③代謝性アシドーシス=pH低下、重炭酸イオン低下、④代謝性アルカローシス=pH上昇、重炭酸イオン上昇。判定の仕方=pHで酸性側かアルカリ性側かを決めたうえで、原因が呼吸か代謝かを見る。二酸化炭素分圧は酸として働くのでpHと逆方向に動いていれば呼吸性、重炭酸イオンは塩基として働くのでpHと同じ方向に動いていれば代謝性になる。呼吸性と代謝性で見る方向が逆になる点に注意する。
理解を深める
血液ガスと酸塩基平衡を整理する。基準値=①pH=7.35〜7.45、②動脈血酸素分圧=80〜100Torr、③動脈血二酸化炭素分圧=35〜45Torr、④重炭酸イオン=22〜26mEq/L、⑤ベースエクセス=マイナス2〜プラス2mEq/L、⑥酸素飽和度=95%以上。代償=一方の異常を、他方が補おうとする働き。①呼吸性の異常には、腎が重炭酸イオンを調節して代償する(時間を要する。数日)、②代謝性の異常には、肺が換気を調節して代償する(速い。数分から数時間)。急性か慢性かは、代償の有無ではなく、異常の程度に対して予測される代償量とどれだけ隔たっているかで判断する。急性の呼吸性アシドーシスでも緩衝により重炭酸イオンはわずかに上昇し、代謝性異常に対する換気の代償は数分から数時間で働くため、代償の有無そのものは慢性化の指標にならない。この事例では、二酸化炭素分圧が55Torrまで上昇しているのに重炭酸イオンが25mEq/Lと正常範囲にとどまっており、慢性であれば期待される腎の代償に達していないため、急性の変化と判断できる。喘息発作の経過と血液ガス=①軽症〜中等症=過換気により二酸化炭素分圧は低下し、呼吸性アルカローシスを示す、②重症化すると=気道の閉塞が進み、換気が保てなくなって二酸化炭素が貯留し、呼吸性アシドーシスへ転じる。したがって、喘息発作の患者で二酸化炭素分圧が正常化、さらに上昇してきたら、改善ではなく、極めて危険な状態(呼吸筋の疲労と、換気の破綻)を示す。この「値が正常に近づいたように見えて、実は悪化している」という点が、最も重要な臨床上の意味になる。加えて、この事例では酸素分圧90Torrと保たれており、酸素化より換気が問題になっていることが読み取れる。喘息発作の対応=①酸素、②短時間作用性ベータ2刺激薬の吸入(反復)、③副腎皮質ステロイドの全身投与、④重症例ではアドレナリンの皮下注射、アミノフィリン、そして人工呼吸。看護=①呼吸状態の継続した観察(呼吸数、呼吸音、努力呼吸、話せる長さ、姿勢、意識、酸素飽和度)、②安楽な体位(起坐位)、③不安への対応、④静脈路、⑤発作の誘因の把握と、再発の予防(吸入の手技、日々の管理薬の継続、誘因の除去)。
間違えやすい考え方
血液ガスの判定を問う型で、誤肢が他の3つの異常である。pHと、どの値が動いているかで切る。
5分で振り返る
①判定の手順=pHを見る→呼吸か代謝かを見る(二酸化炭素分圧か重炭酸イオンか)→代償の有無を見る。②この事例=pH7.30(アシドーシス)、二酸化炭素分圧55Torr(上昇)、重炭酸イオン25mEq/L(正常)=急性の呼吸性アシドーシス。③基準値=pH7.35〜7.45、酸素分圧80〜100Torr、二酸化炭素分圧35〜45Torr、重炭酸イオン22〜26mEq/L。④呼吸性の異常は腎が(数日かけて)、代謝性の異常は肺が(数分から数時間で)代償する。⑤喘息発作は、軽症から中等症では過換気により呼吸性アルカローシスを示し、重症化すると換気が保てず呼吸性アシドーシスへ転じる。⑥したがって、二酸化炭素分圧の正常化と上昇は、改善ではなく極めて危険な状態を示す。⑦この事例は酸素分圧が保たれており、酸素化より換気が問題になっている。
1分チェック
- pH低下+二酸化炭素分圧上昇は。→ 呼吸性アシドーシス。
この問題に対応する教材の確認中です。