脂質異常症 dyslipidemia の成人患者に対する食事指導の内容で正しいのはどれか。
公式正答:3
解説
脂質異常症の成人患者に対する食事指導の内容で正しいものを問う。高トリグリセリド血症では、アルコールを制限するである。
この問題で問われていること
脂質の型ごとに、指導の内容が異なることを理解しているか。
しくみから理解する
アルコールは、①肝でのトリグリセリドの合成を促進する、②リポタンパクリパーゼの働きを妨げ、血中からの除去を遅らせる、③酒とともに摂る食事のエネルギーが加わる、という理由から、トリグリセリドを上昇させる。したがって、高トリグリセリド血症では、アルコールの制限が指導の中心の一つになる。加えて、①糖質と果糖の制限(菓子、清涼飲料、果物の摂りすぎ)、②体重の管理、③有酸素運動、④魚(多価不飽和脂肪酸)の摂取が有効になる。
選択肢ごとの確認
不飽和脂肪酸の摂りすぎに注意する、という記述は適切でない。むしろ、飽和脂肪酸(肉の脂身、バター、乳製品、加工肉)を減らし、不飽和脂肪酸(魚、植物油、ナッツ)へ置き換えることが推奨される。とくに、魚に含まれる多価不飽和脂肪酸は、トリグリセリドを下げ、心血管疾患の危険を減らす。ただし、エネルギーとしては同じであるため、量そのものの摂りすぎには注意する。
コレステロールの摂取量を1日600mg未満とする、という記述も適切でない。高コレステロール血症では、1日200mg未満を目安とすることが推奨されている。600mgでは緩すぎる。なお、食事から摂るコレステロールが血中の値に与える影響には個人差が大きいことも分かっており、食事全体の質(飽和脂肪酸、食物繊維、そして体重)を整えることが、より重要になる。
高LDLコレステロール血症でトランス脂肪酸の摂取を促す、という記述も明確な誤りになる。トランス脂肪酸は、①低比重リポタンパクコレステロールを上げ、②高比重リポタンパクコレステロールを下げ、③心血管疾患の危険を高める。したがって、摂取を減らすことが推奨される。含まれるもの=一部のマーガリン、ショートニング、それらを用いた菓子と揚げ物になる。
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混同しやすいポイント
型ごとの指導を整理する。①高LDLコレステロール血症=飽和脂肪酸とトランス脂肪酸を減らす、コレステロールを1日200mg未満に、食物繊維を増やす(1日25g以上)、大豆製品、②高トリグリセリド血症=アルコールを制限、糖質と果糖を減らす、体重を減らす、魚を増やす、③低HDLコレステロール血症=有酸素運動、禁煙、体重の管理、トランス脂肪酸を減らす。共通=適正なエネルギー、減塩、野菜と海藻、そして禁煙と運動。誤肢は、①脂肪酸の種類、②数値、③トランス脂肪酸の扱いを、それぞれ誤っている。
理解を深める
脂質異常症を整理する。診断の基準(空腹時採血)=①低比重リポタンパクコレステロール140mg/dL以上=高LDLコレステロール血症(120〜139は境界域)、②高比重リポタンパクコレステロール40mg/dL未満=低HDLコレステロール血症、③トリグリセリド150mg/dL以上=高トリグリセリド血症(随時採血では175mg/dL以上)、④ノンHDLコレステロール170mg/dL以上。意義=脂質異常症そのものには症状がない。動脈硬化を進め、心筋梗塞と脳梗塞を起こすことが問題になる。したがって、治療の目標は「数値を下げること」ではなく、「心血管疾患を防ぐこと」になる。管理の目標値=患者ごとの危険度(年齢、性別、喫煙、血圧、糖尿病、既往)により異なる。とくに、既に冠動脈疾患がある場合(二次予防)は、より厳しい目標が設定される。治療=①生活習慣の改善(食事、運動、禁煙、体重、節酒)が基本。3〜6か月行い、効果を評価する、②薬物療法=スタチン(低比重リポタンパクコレステロールを下げる。第一選択。副作用として横紋筋融解症=筋肉痛、脱力、褐色尿に注意する)、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬、フィブラート系(トリグリセリドを下げる。スタチンとの併用で横紋筋融解症の危険が高まる)、多価不飽和脂肪酸製剤、陰イオン交換樹脂、そして注射薬。看護=①症状がないため、治療の必要性が実感されにくい。動脈硬化の進行と、その先にある病気を、具体的に伝える、②食事は、その人の生活と好みに即して、実行できる形へ、③一度に多くを求めない、④家族を含めて考える(食事は家族で共有するもの)、⑤外食と中食の選び方、⑥検査値を本人が把握できるようにする、⑦服薬の継続(症状がないため中断しやすい)、⑧副作用の説明(筋肉痛と脱力があれば連絡する)。
間違えやすい考え方
食事指導を問う型で、誤肢が脂肪酸の種類・数値・トランス脂肪酸を誤る。型ごとの指導で切る。
5分で振り返る
①アルコールは、肝でのトリグリセリドの合成を促し、血中からの除去を遅らせ、加えて食事のエネルギーも増やす。高トリグリセリド血症では制限が中心になる。②加えて、糖質と果糖の制限、体重の管理、有酸素運動、魚の摂取が有効。③飽和脂肪酸(肉の脂身、バター、加工肉)を減らし、不飽和脂肪酸(魚、植物油)へ置き換える。④高コレステロール血症では、コレステロールを1日200mg未満とする。600mgでは緩すぎる。⑤トランス脂肪酸は、低比重リポタンパクコレステロールを上げ、高比重リポタンパクコレステロールを下げ、心血管疾患の危険を高める。減らす。⑥診断=低比重リポタンパク140以上、高比重リポタンパク40未満、トリグリセリド150以上。⑦症状がないため治療が中断されやすい。動脈硬化の先にある病気を具体的に伝える。⑧スタチンでは、筋肉痛・脱力・褐色尿(横紋筋融解症)に注意する。
1分チェック
- 高トリグリセリド血症では。→ アルコールを制限する(糖質と果糖も)。
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