成人患者の甲状腺全摘出術後における合併症とその症状との組合せで正しいのは どれか。
公式正答:4
解説
成人患者の甲状腺全摘出術後における合併症とその症状との組合せで正しいものを問う。低カルシウム血症とテタニーである。
この問題で問われていること
甲状腺の周囲にある構造から、合併症を導けるか。
しくみから理解する
甲状腺の背側には、上下左右に4つの副甲状腺が接している。甲状腺を全摘出する際、これらを損傷または誤って摘出すると、副甲状腺ホルモンが不足し、血中のカルシウムが低下する。低カルシウム血症では、神経と筋の興奮性が高まり、①口周囲と指先のしびれ、②テタニー(手足の筋の持続的な収縮。助産師手位)、③クボステック徴候(顔面神経の叩打による顔面筋の攣縮)、④トルソー徴候(血圧計のカフで上腕を圧迫すると手が助産師手位になる)、⑤重症では喉頭痙攣とけいれんが現れる。
選択肢ごとの確認
乳び漏と嘔気の組合せは誤りになる。乳び漏は、頸部の手術(とくに左側の頸部郭清)で胸管を損傷した際に生じる。ドレーンからの排液が、乳白色(乳び)になることが特徴になる。症状は嘔気ではない。
術後出血とドレーン排液の白濁の組合せも誤りになる。術後出血では、排液は血性になる。加えて、①頸部の腫脹、②呼吸困難(血腫が気管を圧迫する。頸部の手術で最も緊急性の高い合併症になる)、③嗄声、④ドレーンからの急な血性排液の増加が現れる。直ちに医師へ報告し、場合により、ベッドサイドで創を開放して血腫を除去する必要がある。
反回神経麻痺と口唇のしびれの組合せも誤りになる。反回神経は、声帯を動かす神経で、甲状腺の背側を走行するため、手術で損傷されやすい。症状は、①嗄声(片側の麻痺)、②誤嚥、③両側の麻痺では声門が閉じ、重篤な呼吸困難と窒息(緊急の気道確保を要する)になる。口唇のしびれは、低カルシウム血症の症状になる。
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混同しやすいポイント
甲状腺の周囲の構造から、合併症を導く。①背側に副甲状腺→低カルシウム血症(テタニー、口周囲と指先のしびれ)、②背側を反回神経が走行→嗄声、誤嚥、両側では窒息、③血流が豊富で、気管が近い→術後出血と血腫による気道の圧迫、④近くを胸管が走る(左側)→乳び漏、⑤甲状腺ホルモンの喪失→術後は補充が生涯必要、⑥バセドウ病の術後→甲状腺クリーゼ。誤肢は、いずれも症状を取り違えている。
理解を深める
甲状腺手術後の看護を整理する。観察=①呼吸(頸部の腫脹、呼吸困難、喘鳴、酸素飽和度。血腫による気道の圧迫は、術後数時間以内に急速に進行しうる。ベッドサイドに、創を開放するための器具を備えておく施設もある)、②ドレーン(量、性状、色。血性の増加、乳白色)、③嗄声と誤嚥(飲水時のむせ。発声を確認する)、④低カルシウム血症の症状(口周囲と指先のしびれ、テタニー、クボステック徴候、トルソー徴候。術後1〜3日に現れやすい。血清カルシウムを測定する)、⑤創部(腫脹、出血、感染)、⑥疼痛、⑦体位(頸部の安静。頸部を過度に動かさない。半座位で頸部の緊張を減らす)、⑧甲状腺クリーゼの徴候(発熱、頻脈、不穏、意識障害。バセドウ病の術後)。低カルシウム血症への対応=①症状の観察、②血清カルシウムの測定、③カルシウム製剤と活性型ビタミンD3の投与(重症ではグルコン酸カルシウムの静脈内投与)、④多くは一時的だが、永続することもある。術後の甲状腺ホルモンの補充=全摘出後は、甲状腺ホルモン製剤を生涯服用する。①自己判断で中止しない、②定期的に検査を受け、量を調整する、③不足の症状(倦怠感、寒がり、便秘、体重増加、徐脈、浮腫、皮膚の乾燥)と、過剰の症状(動悸、発汗、体重減少、いらだち、下痢、手指の振戦)を知っておく、④妊娠時は必要量が増えるため、医師に相談する。生活の指導=①創部のケアと、瘢痕への配慮(頸部は目立つ部位であり、外見への影響が心理的な負担になる。スカーフ、そして時間とともに目立たなくなることの説明)、②声の変化がある場合の対応(言語聴覚士との連携)、③服薬の継続、④定期的な受診。
間違えやすい考え方
組合せを問う型で、誤肢がすべて症状を取り違えている。周囲の構造から導いて切る。
5分で振り返る
①甲状腺の背側に4つの副甲状腺が接している。全摘出で損傷すると副甲状腺ホルモンが不足し、低カルシウム血症になる。②症状=口周囲と指先のしびれ、テタニー(助産師手位)、クボステック徴候、トルソー徴候、重症では喉頭痙攣とけいれん。術後1〜3日に現れやすい。③乳び漏は、胸管の損傷により排液が乳白色になる。④術後出血では排液が血性になり、頸部の腫脹と、血腫による気道の圧迫で呼吸困難をきたす。最も緊急性が高い。⑤反回神経麻痺の症状は嗄声と誤嚥。両側の麻痺では窒息する。口唇のしびれは低カルシウム血症の症状。⑥全摘出後は甲状腺ホルモンを生涯服用する。自己判断で中止しない。⑦不足の症状=倦怠感、寒がり、便秘、徐脈。過剰の症状=動悸、発汗、体重減少、振戦。
1分チェック
- 甲状腺全摘出後の低カルシウム血症は。→ テタニー(副甲状腺の損傷による)。
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