高齢者のうつ病〈depression〉の症状はどれか。
公式正答:4
解説
高齢者のうつ病の症状を問う。強い不安感である。
この問題で問われていること
認知症との違いを、症状から区別できるか。
しくみから理解する
高齢者のうつ病では、①抑うつ気分と興味の喪失に加え、②強い不安と焦燥(じっとしていられない、落ち着かない)、③心気的な訴え(身体の不調を繰り返し訴える。頭痛、めまい、しびれ、腹部の不快、そして「重い病気ではないか」という心配)、④妄想(貧困妄想、罪業妄想、心気妄想)、⑤意欲と集中力の低下による、認知機能が落ちたように見える状態(仮性認知症)、が特徴になる。若年者に比べ、抑うつ気分そのものより、不安と身体症状が前面に出やすい点が重要になる。
選択肢ごとの確認
意識障害は、うつ病の症状ではない。意識障害があれば、せん妄、脳血管疾患、代謝性の異常、感染、そして薬剤を疑う。せん妄とうつ病の区別は、①せん妄は急に始まり、日内変動が大きく、意識が混濁する、②うつ病は緩やかに始まり、意識は清明である、という点になる。
知能低下は、うつ病そのものの症状ではない。うつ病では、意欲と集中力の低下により、検査の成績が下がることがある(仮性認知症)が、知能そのものが低下しているのではない。治療により改善する点が、認知症と異なる。
歩行障害も、うつ病の症状ではない。動作が緩慢になることはあるが、歩行そのものの障害があれば、パーキンソン病、正常圧水頭症、脳血管疾患、そして頸椎の疾患を疑う。
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混同しやすいポイント
うつ病、認知症、せん妄の3つを区別する。①発症=うつ病は緩やか(週から月)、認知症は緩やか(月から年)、せん妄は急(時間から日)。②経過=うつ病は日内変動(朝が悪い)、認知症は緩やかに進行、せん妄は日内変動が大きく夜間に悪化。③意識=うつ病と認知症は清明、せん妄は混濁。④自覚=うつ病は苦痛を強く訴える(「できない」「分からない」と訴える)、認知症は自覚が乏しい(取り繕う)。⑤検査への態度=うつ病は「分かりません」と投げ出す、認知症は答えようとする。⑥治療=うつ病は治療で改善する。誤肢は、いずれも他の病態を示す症状になる。
理解を深める
高齢者のうつ病を整理する。背景=①喪失の重なり(健康、配偶者と友人との死別、仕事と役割、収入、自立)、②身体疾患(脳血管疾患、パーキンソン病、甲状腺機能低下症、悪性腫瘍、心疾患、慢性の疼痛)、③薬剤(副腎皮質ステロイド薬、降圧薬の一部、抗パーキンソン病薬、インターフェロン)、④孤立、⑤環境の変化(転居、施設への入所)。見逃されやすい理由=①「年のせい」「仕方ない」と受け取られる、②本人が抑うつを訴えず、身体の不調として訴える、③認知症と間違われる、④周囲も本人も、加齢による自然な変化と考える。危険=高齢者の自殺率は高く、うつ病はその最大の要因になる。とくに、①男性、②独居、③身体疾患と疼痛、④喪失の直後、⑤アルコールの問題がある場合に注意する。「死にたい」という言葉を、軽く扱わない。加えて、直接尋ねること(希死念慮の確認)は、自殺を誘発しない。むしろ、尋ねられることで語れるようになる。治療=①環境の調整と休息、②薬物療法(高齢者では少量から慎重に。副作用と相互作用に注意する)、③心理療法、④修正型電気けいれん療法(重症例、薬物に反応しない場合、そして食事がとれず生命に危険がある場合)、⑤身体疾患の治療。看護=①励まさない(「頑張って」は、既に精一杯の人をさらに追い詰める)、②決断を迫らない、③休息を保障する、④生活の基本(食事、睡眠、排泄、清潔)を支える、⑤安全(自殺の危険の評価と、環境の整備)、⑥そばにいる、⑦回復には時間がかかることを、本人と家族に伝える、⑧改善し始めた時期に注意する(意欲が回復し、行動できるようになった時期に、自殺の危険が高まることがある)、⑨家族への支援。
間違えやすい考え方
症状を問う型で、誤肢が他の病態を示す症状である。うつ病・認知症・せん妄の区別で切る。
5分で振り返る
①高齢者のうつ病では、抑うつ気分と興味の喪失に加え、強い不安と焦燥、心気的な訴え(身体の不調の繰り返し)、妄想(貧困、罪業、心気)、そして仮性認知症が特徴になる。②若年者に比べ、抑うつ気分より不安と身体症状が前面に出やすい。③意識障害はうつ病の症状ではない。あればせん妄、脳血管疾患、代謝性異常、感染、薬剤を疑う。④知能そのものは低下していない。意欲と集中力の低下により検査の成績が下がる(仮性認知症)が、治療で改善する。⑤歩行障害があれば、パーキンソン病、正常圧水頭症、脳血管疾患を疑う。⑥うつ病は緩やかに始まり意識は清明、せん妄は急に始まり意識が混濁する。⑦高齢者の自殺の最大の要因はうつ病。希死念慮を直接尋ねることは自殺を誘発しない。⑧改善し始めた時期に自殺の危険が高まることがある。
1分チェック
- 高齢者のうつ病では。→ 強い不安と焦燥、身体症状が前面に出る。
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