アルコールを多飲する人によくみられ、意識障害、眼球運動障害および歩行障害 を特徴とするのはどれか。
公式正答:3
解説
アルコールを多飲する人によくみられ、意識障害、眼球運動障害および歩行障害を特徴とするものを問う。ウェルニッケ脳症である。
この問題で問われていること
三徴から疾患を特定できるか。
しくみから理解する
ウェルニッケ脳症は、ビタミンB1(チアミン)の欠乏により生じる。三徴は、①意識障害(意識の混濁、無関心、見当識の障害)、②眼球運動障害(外眼筋の麻痺、複視、眼振)、③歩行障害(失調性歩行、体幹の失調)になる。ただし、三徴がそろうのは一部にとどまり、そろわなくても疑って治療を始めることが重要になる。アルコールを多飲する人では、①摂取の偏り、②消化管からの吸収の障害、③肝での利用の障害、により、ビタミンB1が欠乏しやすい。
選択肢ごとの確認
肝性脳症は、肝機能の低下によりアンモニアが処理されず、脳へ達して生じる。羽ばたき振戦、睡眠と覚醒のリズムの逆転、見当識の障害、そして昏睡が現れる。眼球運動障害は特徴ではない。
ペラグラは、ナイアシン(ニコチン酸)の欠乏により生じる。三徴は、皮膚炎、下痢、認知症になる。アルコール依存でも生じうるが、この事例の症状とは異なる。
クロイツフェルト・ヤコブ病は、異常なプリオンタンパクによる疾患になる。急速に進行する認知症、ミオクローヌス、そして視覚と小脳の症状が現れ、数か月から1年程度で死に至る。アルコールとは関係しない。
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混同しやすいポイント
アルコールに関連する神経の障害を整理する。①ウェルニッケ脳症=ビタミンB1欠乏。急性。三徴(意識障害、眼球運動障害、失調)、②コルサコフ症候群=ウェルニッケ脳症から移行する慢性の状態。前向性健忘、逆行性健忘、見当識の障害、そして作話、③アルコール性末梢神経障害=四肢のしびれと感覚の障害、④小脳の変性=歩行の失調、⑤アルコール性認知症、⑥離脱症状=振戦せん妄。誤肢は、①肝の障害、②別のビタミンの欠乏、③プリオン病になる。
理解を深める
ウェルニッケ脳症を整理する。原因=ビタミンB1の欠乏。①アルコール依存(最も多い)、②長期の嘔吐(妊娠悪阻)、③絶食と低栄養、④消化管の手術(胃切除、肥満に対する手術)、⑤経静脈栄養(ビタミンを含まない輸液の長期投与)、⑥血液透析、⑦悪性腫瘍と化学療法、⑧神経性やせ症。極めて重要な点=ブドウ糖を含む輸液を投与すると、ビタミンB1がその代謝に消費され、欠乏が急激に進んで、ウェルニッケ脳症を誘発または悪化させる。したがって、①欠乏が疑われる患者では、ブドウ糖の投与より先に、または同時にビタミンB1を投与する、②これは、意識障害の患者への輸液、妊娠悪阻への輸液、そしてアルコール依存の患者への補液の場面で、繰り返し問題になる。診断=臨床所見が中心になる。血中ビタミンB1の測定と、磁気共鳴画像(乳頭体と視床内側の病変)も用いられるが、結果を待たずに治療を開始する。治療=ビタミンB1の大量投与(静脈内または筋肉内)。早期に投与すれば、眼球運動障害は数時間から数日で改善しうる。一方、①治療が遅れると、②コルサコフ症候群へ移行し、③記憶の障害が不可逆に残る。したがって、「疑ったら直ちに投与する」ことが原則になる。コルサコフ症候群=①前向性健忘(新しいことを覚えられない)、②逆行性健忘、③見当識の障害、④作話(記憶の欠けを埋める)、⑤病識の欠如。回復は限定的で、多くは後遺症として残る。看護=①アルコール依存の患者では、常にこの疾患を念頭に置く、②意識、眼球運動、歩行を観察する、③輸液の際のビタミンB1の投与を確認する、④転倒の予防(失調がある)、⑤誤嚥の予防、⑥栄養状態の改善、⑦離脱症状の管理、⑧回復後の生活の支援(記憶の障害が残る場合、生活の場と支援の体制を検討する)、⑨家族への説明。
間違えやすい考え方
疾患を特定する型で、誤肢が肝の障害・別のビタミン欠乏・プリオン病である。三徴で切る。
5分で振り返る
①ウェルニッケ脳症は、ビタミンB1(チアミン)の欠乏による。②三徴=意識障害、眼球運動障害(外眼筋麻痺、複視、眼振)、歩行障害(失調)。三徴がそろわなくても疑って治療を始める。③アルコール多飲では、摂取の偏り、吸収の障害、肝での利用の障害により欠乏しやすい。④ブドウ糖を含む輸液は、ビタミンB1を消費して欠乏を急激に進め、発症を誘発する。ブドウ糖より先に、または同時にビタミンB1を投与する。⑤治療が遅れるとコルサコフ症候群へ移行し、記憶の障害が不可逆に残る。⑥コルサコフ症候群=前向性健忘、逆行性健忘、見当識障害、作話、病識の欠如。⑦肝性脳症はアンモニアによる(羽ばたき振戦)。ペラグラはナイアシン欠乏(皮膚炎、下痢、認知症)。⑧妊娠悪阻への輸液でも、ビタミンB1の補充を忘れない。
1分チェック
- 意識障害+眼球運動障害+歩行障害は。→ ウェルニッケ脳症(ビタミンB1欠乏)。
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