A さん(79 歳、男性)は、1人暮らし。要介護2の認定を受け、訪問看護を利用 することになった。初回の訪問時、A さんは敷いたままの布団の上に座っており 「便利だから生活に必要なものを手の届くところに置いているんだよ」と話した。 A さんの生活様式を尊重した訪問看護師のこのときの声かけで適切なのはどれ か。
公式正答:4
解説
敷いたままの布団の上に座り、「便利だから生活に必要なものを手の届くところに置いているんだよ」と話す79歳男性への、生活様式を尊重した声かけを問う。「必要なものを身近に置いているのですね」である。
この問題で問われていること
在宅における「生活の場」の意味を理解しているか。
しくみから理解する
在宅は、療養の場である前に、その人が長年築いてきた生活の場になる。ここでの物の配置と過ごし方には、その人なりの理由と工夫がある。「必要なものを身近に置いているのですね」という言葉は、①本人の説明をそのまま受け止め、②その工夫を認め、③これから話を聴こうとする姿勢を示す。初回の訪問という段階では、まず相手の生活を理解することが、関係を築く出発点になる。
選択肢ごとの確認
「外に出て気分転換しませんか」は、この場面での声かけとして適切でない。本人が話した内容に応えておらず、加えて、初回の訪問で、本人の生活を知る前に提案している。外出そのものは有用でありうるが、この時点ではない。
「昼間は布団をたたみましょう」も適切でない。生活様式を変えるよう求めるものであり、尊重にならない。加えて、布団を敷いたままにしていることには、①起き上がりと横になることが楽、②たたむ体力がない、③一人暮らしで誰にも見られない、といった理由がありうる。まずその理由を知る。
「介護保険でベッドの貸与を受けましょう」も適切でない。ベッドが有用な場合もあるが、①本人が求めていない、②理由を聴いていない、③初回の訪問で提案している、という3点で早い。加えて、床からの起き上がりができる人にベッドを入れると、かえって動きが減ることもある。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも「変えることを提案する」ものになる。訪問看護の初回で最も必要なのは、変えることではなく、知ることになる。①どのような生活を送ってきたか、②いま何を大切にしているか、③どこに困っているか、④何を望んでいるか。これらを知らずに提案すれば、①的外れになる、②受け入れられない、③関係が築けない、という結果を招く。
理解を深める
在宅看護の姿勢を整理する。病院との違い=①主役は療養者と家族であり、看護師は訪問する側になる、②その家の流儀があり、それに従う(靴を脱ぐ、勝手に物を動かさない、家族の生活時間を尊重する)、③医療の視点だけで判断しない(「危ない」「不衛生」と見える配置にも、本人の理由がある)、④限られた時間と資源の中で行う、⑤医師がその場にいない状況で判断することが多い、⑥生活の全体が見える。初回訪問で行うこと=①挨拶と自己紹介、②訪問看護の説明(何をする人か、いつ来るか、何を相談できるか、費用)、③本人と家族の話を聴く(生活歴、家族、これまでの経過、いまの困りごと、望むこと)、④身体の状態の確認、⑤住環境の把握(動線、段差、トイレ、浴室、寝る場所、火の元、そして暖房と冷房)、⑥服薬と医療機器、⑦緊急時の連絡方法、⑧次回の約束。関係を築く関わり=①相手の言葉をそのまま受け止める、②評価しない、③すぐに変えようとしない、④できていることを認める、⑤本人の選択を尊重する、⑥小さな約束を守る。生活様式の尊重と、安全の確保=この2つが対立することがある。①転倒の危険がある配置、②不衛生、③火の元、④薬の管理。この場合も、①いきなり変えさせない、②理由を聴く、③危険を具体的に伝える、④本人が受け入れられる代案を一緒に考える、⑤少しずつ、⑥それでも本人が変えないことを選ぶなら、その選択を尊重したうえで、危険を減らす工夫をする、という順で進める。在宅では、最終的に決めるのは本人になる。看護師の役割は、決めさせることではなく、判断に必要な情報を提供し、選べる状態を保つことになる。
間違えやすい考え方
声かけを問う型で、誤肢がすべて変えることを提案するものである。まず知るという初回の目的で切る。
5分で振り返る
①在宅は、療養の場である前に、その人が長年築いてきた生活の場になる。物の配置と過ごし方には、本人なりの理由と工夫がある。②「必要なものを身近に置いているのですね」は、本人の説明を受け止め、工夫を認め、話を聴く姿勢を示す。③初回の訪問で最も必要なのは、変えることではなく知ること。生活歴、大切にしていること、困りごと、望むことを聴く。④外出の提案、布団をたたむよう求めること、ベッドの提案は、いずれも理由を聴く前の提案になる。⑤布団を敷いたままにする理由=起き上がりが楽、たたむ体力がない、一人で誰にも見られない。⑥生活様式の尊重と安全の確保が対立する場合は、理由を聴き、危険を具体的に伝え、代案を一緒に考え、少しずつ進める。⑦最終的に決めるのは本人。看護師は、選べる状態を保つ。
1分チェック
- 生活様式を尊重するとは。→ 本人の説明をそのまま受け止めること。
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