A さん(69 歳、女性)は、主治医、訪問看護師とともに、母(91 歳)を自宅で看 取った。死亡確認の直後、A さんは涙ぐみながら「母のためにもっとできることが あったのではないかと申し訳なく思います」と話した。 このときに訪問看護師が行うA さんへの対応で最も適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
自宅で母を看取った直後、「もっとできることがあったのではないかと申し訳なく思います」と涙ぐむ69歳女性への訪問看護師の対応を問う。母への思いを傾聴することである。
この問題で問われていること
死別の直後に、何を提供するかを判断できるか。
しくみから理解する
この言葉は、①後悔と罪責感、②深い悲しみ、③そして母への思いを、同時に含んでいる。死別の直後に必要なのは、解決でも助言でもなく、その思いを語れる場と、それを聴く人になる。傾聴することにより、①感情を表出できる、②一人ではないと感じられる、③自分がしてきたことを言葉にする中で、意味を見出せることがある。加えて、「もっとできたのでは」という思いは、多くの介護者が抱くものであり、その人の努力の裏返しでもある。
選択肢ごとの確認
遺族の会を紹介することは、有用な資源だが、この時点では早い。①死亡確認の直後であり、②まだ現実を受け止める過程の入口にある、③加えて、いま目の前にいる看護師が聴くことが、最初の支えになる。時期をみて紹介する。
遺品を整理することを勧めることも適切でない。遺品の整理は、悲嘆の作業の一部として、本人のペースで進めるものになる。急かされると、①喪失を認めることを強いられる、②大切な物との別れを早められる、と感じ、苦痛になる。
新たなことに取りかかるよう促すことも適切でない。悲しみを抱える時間を奪うことになる。「早く元気になるべき」という圧力は、悲嘆の過程を妨げる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①時期の早い紹介、②本人のペースを奪う勧め、③悲しみを打ち切る促し、の3つになる。死別の直後の関わりの原則は、①そばにいる、②聴く、③急かさない、④励まさない、⑤その人の悲しみ方を尊重する、⑥労をねぎらう、になる。「元気を出して」「時間が解決します」「もっと悪い人もいる」といった言葉は、慰めのつもりでも、相手の悲しみを否定することになる。
理解を深める
グリーフケアを整理する。悲嘆の反応=①感情=悲しみ、怒り、罪責感、不安、孤独、無力感、そして安堵(介護から解放されたことへの安堵と、それを感じた自分への罪悪感)、②身体=疲労、不眠、食欲不振、動悸、胸の締めつけ、③認知=信じられない、故人のことばかり考える、集中できない、故人の姿が見える・声が聞こえる(多くは正常な反応になる)、④行動=落ち着かない、故人の物を探す、故人がいた場所を訪れる、社会的な引きこもり。これらは、異常な出来事に対する正常な反応であり、多くは時間とともに和らぐ。看取りの直後の関わり=①お別れの時間を確保する(急かさない)、②家族が触れ、話しかけられるようにする、③エンゼルケア(家族が望めば一緒に行う。この時間が最初の悲嘆の作業になることがある)、④これまでの介護をねぎらう(「よくやってこられました」「〇〇さんは、ご自宅で過ごせて幸せだったと思います」)、⑤家族の言葉を聴く、⑥必要な手続きの説明(急がなくてよいことも伝える)、⑦訪問看護としての関わりの終わりを伝えつつ、その後の連絡先を示す。死別後の支援=①遺族への訪問と連絡(施設と事業所により方針は異なるが、その後の様子を知らせる機会があることが支えになる)、②遺族の会と、同じ経験を持つ人とのつながり、③専門的な支援が必要な場合の目安(強い抑うつが続く、日常生活が営めない、自傷の危険、6か月から1年を超えて強い症状が続く=遷延性悲嘆症)。予期悲嘆=死が訪れる前から始まる悲しみ。この時期に、①十分に関わり、②できることをやり、③思いを伝え合えた場合、死別後の悲嘆の経過が穏やかになりやすいことが知られている。したがって、終末期の関わりそのものが、グリーフケアの一部になる。看護師自身のケア=繰り返す看取りは、看護師にも影響を与える。一人で抱えず、振り返りの場を持つ。
間違えやすい考え方
対応を問う型で、誤肢が時期の早い紹介・ペースを奪う勧め・悲しみを打ち切る促しである。そばにいて聴くで切る。
5分で振り返る
①「もっとできたのでは」という言葉には、後悔と罪責感、深い悲しみ、そして故人への思いが含まれる。②死別の直後に必要なのは、解決でも助言でもなく、思いを語れる場と、聴く人になる。③この思いは多くの介護者が抱くものであり、その人の努力の裏返しでもある。④遺族の会は有用だが、死亡確認の直後には早い。時期をみて紹介する。⑤遺品の整理は、本人のペースで進めるもの。急かすと苦痛になる。⑥新たなことを促すことは、悲しみを抱える時間を奪う。⑦「元気を出して」「時間が解決します」は、悲しみを否定することになる。⑧予期悲嘆の時期に十分関われたことが、死別後の経過を穏やかにする。終末期の関わりそのものがグリーフケアの一部になる。
1分チェック
- 看取りの直後には。→ 思いを傾聴する(急かさない、励まさない)。
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