A さん(82 歳、女性)は、脳梗塞〈cerebral infarction〉の既往 があり、要介護2で、夫(85 歳)と2人暮らし。訪問看護師の訪問時、A さんは体温37.0 ℃、脈拍62/分、血圧100/50 mmHg、少し汗をかいており、唇の乾燥がみられた。訪問看護師は、翌日予定さ れている訪問介護の担当者とA さんの援助の方向性について共有することにした。 共有する内容で適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
体温37.0℃、脈拍62/分、血圧100/50mmHg、発汗があり、唇の乾燥がみられる82歳女性について、訪問介護の担当者と共有する内容を問う。水分を多めに摂取するよう促すことである。
この問題で問われていること
所見から何が起きているかを読み、他職種へ何を伝えるかを判断できるか。
しくみから理解する
この患者には、①発汗、②唇の乾燥、③やや低めの血圧(100/50mmHg)、という所見があり、脱水またはその危険がある状態と考えられる。高齢者は、①体内水分量が少ない、②渇きを感じにくい、③腎の濃縮力が低い、④トイレを気にして水分を控える、という理由で脱水になりやすい。訪問介護の担当者は、日々の生活の場面で長く関わるため、水分摂取を促す役割を担える。したがって、この点を共有することが適切になる。
選択肢ごとの確認
ポータブルトイレでの排泄に変更することは、この場面で共有する内容ではない。加えて、①トイレまで歩くことは活動の機会になる、②本人の意向を確認していない、③排泄の場を変えることは尊厳に関わる、という点からも、根拠なく変更するものではない。むしろ、水分を控える理由がトイレにある場合は、その障壁を減らす工夫(動線、手すり、夜間の照明)を考える。
頻繁に寝衣を交換することも、この場面の中心ではない。発汗があれば、汗を拭き、寝衣を替えることは必要だが、頻繁に行うことは、①体力を消耗させ、②体温を奪い、③本人の負担になる。必要に応じて行う。
入浴介助を中止することも、根拠がない。①発熱と呼べる体温ではなく(37.0℃)、②全身状態は保たれている。入浴は、清潔だけでなく、血行、安楽、そして生活の楽しみでもある。中止するのではなく、①水分を補う、②湯温と時間を調整する、③前後の状態を観察する、という形で継続を検討する。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①根拠のない変更、②負担を増やすもの、③根拠のない中止になる。多職種と共有する内容を選ぶときは、①いま何が起きているか(脱水の危険)、②その職種が何を担えるか(訪問介護は生活の場面で水分を促せる)、③具体的に実行できるか、の3点で判断する。加えて、共有する際は、①なぜ必要か、②どうすればよいか、③どうなったら知らせてほしいか、を明確に伝える。
理解を深める
在宅における脱水の予防を整理する。高齢者が脱水になりやすい理由=①体内水分量が少ない(若年者の約60%に対し約50%)、②渇きを感じにくい、③腎の濃縮力が低下、④食事量の減少により、食物からの水分も減る、⑤トイレを気にして控える(とくに夜間、そして失禁を恐れて)、⑥認知機能の低下により、飲むことを忘れる、⑦薬剤(利尿薬、下剤)、⑧発熱、下痢、嘔吐。徴候=①口唇と口腔粘膜の乾燥、②皮膚のツルゴールの低下、③舌の乾燥(最も鋭敏な所見の一つ)、④尿量の減少と濃縮(色が濃い)、⑤体重の減少、⑥脈拍の増加と血圧の低下、⑦起立性低血圧、⑧脇の下の乾燥、⑨活気の低下、微熱、そして意識の変容(高齢者では、脱水がせん妄と転倒の原因になる)。予防=①時間を決めて促す(起床時、食事、10時、15時、入浴の前後、就寝前)、②手の届く場所に置く、③飲みやすい形(とろみ、ゼリー、氷、経口補水液、そして本人の好みの飲み物)、④食事からの水分(汁物、果物、ゼリー)、⑤環境(室温、湿度、冷房)、⑥トイレの障壁を減らす、⑦記録(1日にどれだけ飲んだかを見える形に)、⑧家族と他職種で分担する。多職種との共有=①訪問介護=日々の生活の場面での促し、水分量の記録、変化の報告、②家族=同様、③介護支援専門員=計画への反映、④医師=薬剤の見直し、輸液の判断。伝え方=「脱水に注意してください」では動けない。「毎回の訪問時にコップ1杯を勧めてください」「飲んだ量を記録してください」「食事を半分以下しか食べていない、いつもよりぼんやりしている、といった変化があれば連絡してください」と、具体的に伝える。
間違えやすい考え方
共有する内容を問う型で、誤肢が根拠のない変更・負担・中止である。所見から脱水を読んで切る。
5分で振り返る
①発汗、唇の乾燥、やや低めの血圧は、脱水またはその危険を示す。②高齢者は、体内水分量が少なく、渇きを感じにくく、腎の濃縮力が低く、トイレを気にして控えるため脱水になりやすい。③訪問介護の担当者は、生活の場面で長く関わるため、水分を促す役割を担える。④ポータブルトイレへの変更は、活動の機会を減らし、本人の意向も確認していない。⑤頻繁な寝衣の交換は、体力を消耗させ体温を奪う。必要に応じて行う。⑥37.0℃は発熱と呼べず、全身状態も保たれている。入浴は中止せず、水分を補い、湯温と時間を調整して継続を検討する。⑦脱水の徴候=口唇と舌の乾燥、ツルゴールの低下、尿の減少と濃縮、体重減少、起立性低血圧、活気の低下、せん妄。⑧他職種へは「毎回コップ1杯を勧めてください」と具体的に伝える。
1分チェック
- 発汗と唇の乾燥があれば。→ 水分摂取を促すことを共有する。
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